“電子トレカ”がスポーツチームの収益源になる「whooop!」発表、1500万円の資金調達も

ここ数ヶ月の間に、個人や団体(企業)が資金やファンを集めることのできるプラットフォームが急速に増えてきている。

たとえば先日TechCrunchでも紹介した「SPOTSALE(スポットセール)」や「BASE」の取り組みは、店舗がサービス上で“独自のコイン”を発行し、初期のファンや資金を調達できるというもの。ほかにもコミュニティが“コミュニティコイン”を発行して支援者を募る「fever」や、少し方向性は違えど、設定した特典と交換可能な“ポイント”を無料配布しファンと交流できる「MINT」のようなサービスもある。

もちろんクラウドファンディングもそうだし、プラットフォームではないけどICOも同じような目的で活用される仕組みだ。

そして今回紹介する「whooop!」もこれらに近く、スポーツチームやアスリートがファンから資金を調達できるプラットフォーム。ただしwhooop!の場合は独自のコインでも、ポイントでもなく“電子トレーディングカード”を用いている点が最大の特徴だ。

開発しているのは現役東大生を中心とした若いメンバーが集まるventus。同社は5月23日よりwhooop!の事前登録を開始するとともに、谷家衛氏や高野真氏を含む個人投資家などから、総額1500万円を調達したことを明かした。

電子トレカが変える、チームとファンの関係性

whooop!はスポーツチームやアスリートがオンライン上でトレーディングカード(以下トレカ)を発行することで、ファンとの関係性を深めたり資金を集めたりできるサービスだ。

トレカにハマったことがある人にはイメージがつきやすいと思うが、スポーツチームは複数枚の選手カードをランダムに集めてパックにしたものをファンに販売。ファンはチームから直接購入するほか、オークションやトレード機能を使ってファン同士で取引することもでき、カードを集めながらお気に入りのチームを支援する。

各チームごとに「ファンランキング」が導入されているほか、チームの運営方針に関する投票など、カード保有量に応じた「特典」も設定が可能。ランキングによって自らの“ファン度”をアピールでき、特典を使うことでより一層深くチームに携わることができる。

一方で収入に悩むスポーツチームにとっては、電子トレカが新たな収益源にもなりうる。whooop!ではカードを販売した際に販売額の90%がチームの収益となるほか(10%がwhooop!の取り分となる)、ファンの間でカードを売買した際にも取引手数料として2.5%がチームに支払われる仕組みだ(同じくwhooop!にも2.5%が支払われる)。

ここまで読んで「カードを売買できる以外はクラウドファンディングとあまり違わないのでは」と思う人もいるかもしれない。

この点についてventus代表取締役CEOの小林泰氏に聞いてみたところ、「(単発的になりやすいクラウドファンディングとは異なり)カードはシーズンやイベントごとに発行できるので、継続的な支援を受けやすいのが特徴。グッズなど物のリターンだけではなくチームに関わる体験をファンに提供でき、ファンの視点ではカードを保持しておけば支援したことを証明することもできる」のがウリだという。

各カードのサンプル画面。

whooop!では琉球アスティーダ(卓球)、宇都宮ブリッツェン(自転車)のほかプロサッカーチームや個人アスリートと連携し、βテストを行っていく計画。6月中を目処にこれらのチームに関してカードの購入、特典の獲得ができるようになる予定だという。

また連携チームを増やしながら、2018年夏頃にwhooop!の正式版をリリースする方針だ。

スポーツチームが継続的に収益をあげられる仕組みを

ventusは2017年11月の設立。代表の小林氏と取締役COOの梅澤優太氏を中心としたチームで、2人は現役の東大生だ。

ventusのメンバー。写真左から1人目が取締役COOの梅澤優太氏、3人目が代表取締役CEOの小林泰氏

小林氏は学部生時代にアイスホッケー部に所属。その傍ら、アイスホッケーを広めるために大学リーグの全試合を生中継するメディア「Tokyo IceHockey Channel」を立ち上げ、3年以上運営してきた。

「生中継をしていて感じたのが、本質的な価値は現場体験にあるということ。その価値をあげるためにはどうすればいいか、その体験に参加してお金を払ってくれる人を増やすにはどうすればいいかを考えたのがひとつのきっかけ。またメディアを運営する過程で自分たちでクラウドファンディングをやるなど、多くの人から支援してもらった。その支援を何らかの形で可視化して、蓄積できると面白いと思っていた」(小林氏)

一方の梅澤氏も3歳の頃からサッカーに打ち込んできたスポーツ好き。スポーツベンチャーでのインターンも経験し、スポーツ業界で事業をやることを考えていたところ小林氏と会ったという。

「スポーツだけに限った話ではないが、ただ1つのことに打ち込み勝負をしている人たちと、その人たちを支えたいと思う人が繋がれる場所を作りたいと考えていた」(梅澤氏)

もともと2人が考えていたのは、ちょっとしたベッティング要素やゲーム性を取り入れること。たとえばwhooop!でとあるチームのカードを購入する。そのチームを応援し続けた結果、チームの価値が上がれば自分の保有するカードの価値も高まるといった具合だ。

これによって何となくカードを購入したことをきっかけにそのチームを熱狂的に応援する人がでてくるかもしれないし、その結果チームにきちんと資金が入る仕組みになっていればファンもチームもハッピーだろう。「もともとスポーツにはトレカという文化があるため、ファンだけでなくスポーツチーム側にとってもわかりやすい」(梅澤氏)こともあり、電子トレカを活用したwhooop!のアイデアに固まったそうだ。

今後whooop!では中長期的に様々な種目、レベルのチームをプラットフォーム上に展開することで、スポーツファンが集まる「スポーツ横断型のコミュニティ」を形成を目指す。収入源をチケット代やスポンサー料、放映権料に依存しがちなプロスポーツチームやアスリートにとって「電子トレカが継続的に資金を得られる収入源のひとつになること」を目標に事業を成長させていきたいという。

投稿者:

TechCrunch Japan

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