「2016年はVR(仮想現実)の年だという多くの宣言を目にしたものだが、それ以降仮想現実に対するまともな言葉は聞かされていない」と、The Economist誌が酷評したのは昨夏のことである。なにしろ2016年はVR関連のハードウェアとソフトウェアの合計販売額の予想が、51億ドルから36億ドルに減少し、実際には18億ドルという厳しいものになったのだ。いや、まあホリディシーズンが一度不調だったからと言って、そんなに悲観しなくても。2017年になればきっと ――
{0}{1/}{/0}おっとこんな記事が:“Shock Stat: In 2017, VR Headset Shipments For Most Top Brands Went DOWN Compared To 2016.” (衝撃の数字:2017年には多くのトップブランドのヘッドセット出荷が2016年に比べて減少した)。VRヘッドセットの出荷数は急速に増加するだろうと、多くの予想がずっと出されていたのに。最近では業界の動向と共に、煽り記事も出されるようになっている。でもそれは…Oculus Goが発表される前の話じゃないかって?まあ…Goが一番売れたのは、最初の数週間で25万台を売ったときのようだが、それでも同じ月の初めに出た同価格帯のNintendo Switchに比べれば、その数はわずかなものだったし、私がこれを書いている時点では、Amazonの“Video Games > Accessories”ベストセラーリストのトップ20からも遠ざかってしまっている。
とはいえ、これらはひどい数字ではない。ソニーのプレイステーションVRは、約300万台も売れたのだ!…つまり、これはPlayStationの所有者のほぼ4%に相当していることになる。しかし、VRとARは、次のささやかなニッチ(Next Little Niche)ではなく、次の目玉(Next Big Thing)になる筈だったのではなかっただろうか?そしてそれは、直線的にではなく、指数関数的に普及すると考えられていたのではなかっただろうか?
もちろんARは、AppleのARKit、GoogleのARCore、FacebookのAR Studioなどのおかげで誰の手にも届くようになっている。だがあなたは (a) Pokémon GOではなく、(b)家具も関係しないような、有名で成功したARスマートフォンアプリの名前をすぐに挙げることができるだろうか!?
もし私が誰かに向けて非難の指を向けているとするならば、それは自分自身に向けているものだ。私は現時点で、VR/ARがもっと進んでいることを期待しすぎていた。私たちはVRでしかプレイすることのできないヒットゲームに出会ったと思ったし、23ヶ月前にリリースされたPokémon GOが、全く新しいAR世界の先触れだと考えた。やがてそれらがお互いに関係を始め重なり始めるだろうと思ったのだ。長期的には、そう思っておけば良いのかもしれない。だが、短期的には ――
私は今週サンタクララで開催されたAugmented World Expoに参加したのだが、そこで私が理解したことは、業界が実質的に消費者向けAR/VR分野からは(少なくとも今は)手を引いたということだ。誰もが現在AR/VRを仕事の場所に持ち込もうとしている。しかし、複雑な情報をハンズフリーのやり方でアクセスする必要がある仕事が、いったいどれ位あるというのだろうか?VR会議で解決できて、ビデオ会議では解決できない問題はいくつあるのだろう?確かに、それは既に存在しており、その技術は本当に素晴らしいかもしれない。しかし、少なくとも今は、それは「次のささやかなニッチ」の話なのだ。
私は本当に目の覚めるようなものを見た。そのことで、私はつつましいQRコードが複合現実(MR)の極致を実現することができることを確信できるようになったのだ:
とはいえこれはとても素晴らしい工夫だ:「混合現実バックパック」は要するに着用可能なQRコードである。予測:これまで厳しい批判の対象だった(機械に対して以外は目立たないように隠されていた)QRコードが、現実世界とARを結ぶ架け橋の事実上の標準となるだろう。
…しかし、2つの世界の架け橋が用意されても、もし誰もがどちらか片方の世界にしか関心を持たないとしたら、その架け橋はどんな役割を果たすことができるだろう。
「でもゲームがある!」と叫ぶかもしれない。「没入型のストーリーテリングがある!」と。まあ確かに。私もそれについても非常に期待しているのだ…結局のところ私は空き時間はずっと小説家として過ごしているのだから。そしてそれは、現在業界内の明るい話題だ 「ロケーションベースVR」すなわち「VRアーケード」(VR体験機器が設置された遊戯施設)の数は増えていて、それは最近のPunchdrunkのSleep No Moreや、Meow WolfのHouse of Eternal Return、そしてThe Latitudeといった没入型の劇場の増加と歩調を合わせているように思える。
…しかし、私がこれまでに見たVR/MR没入型ストーリーテリングは皆、格好いいのは最長でも15分程で、誇大宣伝とバズワードがまとわりつき、そして基本的に荒削りなストーリー以上のものを伝えることはできていない。「ストーリーテリングではなくて、ストーリーリビング(物語の中を生きる)なんですよ」と、数ヶ月前に行ったイベントで、熱心なIndustrial Light&Magicの担当者が語ってくれた。もちろんそれはよい言い方だ ―― しかし私がこれまでに見たVRによる「ストーリーリビング」は皆、私が10代の頃に見たDungeons & Dragonsの宣伝よりも遥かに洗練されていないものばかりだった。
もちろん、現在新しいテクノロジーの黎明期にいることは承知している。それはまだ高価で、まだハードウェア集約型である。今でも私たちは、最高の使い方と、人間の物理的な場所とのやりとり、そしてストーリーテリングのための全く新しい文法を探している最中なのだ。しかし、OculusがKickstarterで立ち上げられたのはおよそ6年前であり、私はそれ以来とても多くのVR/AR/MRのデモを見てきた。そしてそのたびに、「このテクノロジーにはとても大きな可能性が秘められている」と帰り道に思うのだ。
しかし、次の目玉(Next Big Thing)になるためには、どこかの時点でその「可能性」を現実のものにし始めなければならないのだ。おそらくMagic Leapがそれをやってくれるだろう(いや冗談を言っているのではない。少なくとも半分は)。しかし、もしそうでなければ、がっかりするような真実は、いくら安価な新しいスタンドアロンハードウェアが手に入ろうと、そしてすべての努力がソフトウェアとデザインとストーリーテリングに注がれようと、私は2年前にいた場所から少しもその実現に近付いていると思えないだろうということだ。誰か私が間違っていると言って欲しい。
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(翻訳:sako)