トランプ政権との激しい交渉の末、中国の通信機器大手ZTEが罰金10億ドルを支払うことに合意した。Wilbur Ross米商務長官が今朝(6月7日)発表した。この罰金は、イランと北朝鮮への通信機器の販売を禁止する米国の制裁に違反したとして、調査を経て課せられた。Ross長官はCNBCの朝の番組Squawk Boxでコメントしている。
ZTEにとってかなり堪える脅しだった。昨年の米国政府との話し合いでは、罰金11億9000万ドルを支払うこと、米国の規則に沿うよう社員を入れ替えることを受け入れていた。その後、トランプ政権は違反への制裁をさらに拡大し、米国の企業に対し、ZTEが販売する商品に必須の部品をZTEに7年間販売することを禁じた。この決定は、制裁前の段階で約7万5000人の従業員を抱え、企業価値200億ドルのZTEを破綻させるものだった。
この制裁によりZTEはもう終わりかと思われたが、ドナルド・トランプ大統領は5月13日に救済策を提案したようだ。この日、トランプ大統領は商務省にZTEが“速やかに事業再開できる方策”を検討するよう命じるつもりだとツイートした。トランプ大統領は気まぐれの決断をすることで知られているが、この方向転換はDC関係者をかなり驚かせた。というのも国家安全当局は声を大にしてどのようなZTE救済策にも反対していたからだ。
10億ドルの罰金に加え、ZTEは抱えていた共産党リーダーを社外に出すなど、社員の入れ替えを行った。また、ZTEは、今後の違反に使われることになる4億ドルの保証金を出すことも了承したとされている。そして米国の監視チームがZTEと共同でコンプライアンスが適正かどうかも行う。
ZTEが今後どうなるか、というのは見えていない。米国と中国は過去数カ月にわたり関税、市場開放、2国間の赤字など貿易問題で行ったり来たりの交渉を展開している。米国は、今回のZTEへの罰金は法律に基づいた措置で、現在進行形の貿易に関する交渉には含まれていないという姿勢だ。
しかしながら消息筋によると、中国政府はZTEの件を少しでも有利に交渉できるよう、クアルコムのNXPセミコンダクターズの買収を意図的に妨げてきた。この買収案件を認めないのは世界で中国だけで、これにより買収はこの数週間進んでいない。これは、中国が米国と交渉するうえで重要な役割を果たした。
加えて、トランプ大統領は北朝鮮の指導者、金正恩と会談するために来週シンガポールへ赴く。中国の北朝鮮への影響力は、会談の成否に影響する。これは中国にとって、ZTE問題をめぐってトランプ政権と交渉するうえでさらに大きな材料だった。
ともあれ、トランプ政権はいま議会から大きな反発を受けている。両政党ともZTEの事業再開に反対だからだ。上院の野党リーダー、Chuck Schmer(民主党、NY州選出)は公の場で「議会の両党は今回の取り決めを阻止するために協力すべきだ」と述べた。上院議員Marco Rubio(共和党、フロリダ州選出)は取り決めを阻止しようと議会に提案書を出した。しかしZTEをめぐる両国間の交渉はほぼ最終段階となり、これらの議員のコメントは単に発言しただけで終わるのか、それとも議会の“大多数”が大統領の決断を覆す用意が本当にできているのか、今後明らかになる。
この件についてはこれまでも分析や詳しい情報を報じてきたが、状況は流動的で、新たな情報が入り次第アップデートする。
Image Credits: LLUIS GENE / Staff / Getty Images
[原文へ]
(翻訳:Mizoguchi)