廃棄されてしまう食品(食品廃棄物等)などのうち、本来であれば安全に食べられるにも関わらず捨てられてしまうものをさす「フードロス(食品ロス)」。環境省の発表によると平成27年度には日本で実に約646万トンのフードロスがあったという。
この問題を解決するためのひとつのアプローチとして、飲食店や惣菜店などで余ってしまった料理とユーザーをマッチングする“フードシェアリング”サービス「TABETE」を開発しているのがコークッキングだ。
2018年4月のWeb版リリースから現在までで約4万人のユーザー、約200店舗が登録するTABETE。より使い勝手のいいプロダクトを目指し、コークッキングでは8月20日に同サービスのiOS版をリリースした。
TABETEは閉店時間や食品の入れ替え時間などの問題で、まだ安全に食べられる料理を廃棄せざるを得なくなってしまった飲食店と、その「食べ手」を繋ぐサービスだ。
たとえば急なキャンセルなどで食事が余ってしまった場合、飲食店は任意の価格と引取期限を設けて食事の情報をTABETEに掲載する。ユーザーはTABETE上からエリアを検索し、自宅の最寄り駅周辺などで気になる店舗をリサーチ。オンライン上で決済を行い、期限までに店舗に行けば食事を受け取れる。
ビジネスモデルは食事が売買された際の手数料で、販売代金の35%がTABETEの収益となる仕組みだ。
ユーザーにとってのメリットは割引価格でお得にテイクアウトできること。中食ではパン屋や弁当屋、外食では焼き鳥屋やイタリアンなど様々なジャンルの店舗が登録されていて、コークッキングCOOの篠田沙織氏によると「料理をするのは疲れたけど、コンビニやスーパーにも飽きてきた」という女性の利用が特に多いそう。ユーザーの7割を20〜40代の働く女性が占めるという。
一方の店舗側にとっても、せっかく準備した食事を捨てずに済むことはもちろん、従来は捨ててしまっていたものを売って売上の一部を回収でき、新しい顧客との接点を作るチャンスにもなり得る。
コークッキングCEOの川越一磨氏は新卒でサッポロライオンに入社するなど、飲食店での現場経験のある人物。日本の飲食店が抱えるフードロスを削減するサービスを考えていたところ、フードシェアリングの仕組みに行き着いた。
この仕組みは欧州などでは広く浸透していて、TABETEのアイデアもデンマーク発の「Too Good to Go」がヒントになったそうだ。
コークッキングでは8月にSocial Entrepreneur2投資事業有限責任組合、伊藤忠テクノソリューションズ、SFCフォーラムファンド、NOW、オプティマ・ベンチャーズ、222パートナーシップから数千万円の資金調達も実施。
セールスや開発など組織体制を強化し、今回のiOS版アプリを皮切りに今後はエリアの拡大なども含めてプロダクトの拡充を図っていくという。