投資家向けの未上場株式管理ツール「FUNDBOARD(ファンドボード)」を展開するケップルは3月15日、野村総合研究所と資本業務提携を締結したことを明らかにした。
提携を通じて野村総研の技術力や情報セキュリティ関連の知見を得ながら、同サービスの開発体制やセキュリティ強化を進めていく計画だ。ケップルでは2019年2月に野村総研から8000万円を調達。昨年12月に日本経済新聞社などから調達した2.7億円を合わせると、今回のラウンドの調達額は3.5億円となる。
ポートフォリオ機能が進化、新株予約権などにも対応
ケップルが運営するFUNDBOARDはVCや事業会社、個人投資家が投資先の情報を効率よく管理できるサービスだ。
これまでも紹介してきたように、従来であればエクセルやドロップボックスなど複数の場所に散らばっていた投資先に関する情報を、一箇所に集約できることが特徴。投資先の情報に紐づいて関連するメモやファイルが整理されるため、FUNDBOARDを見ればその会社に関する様々な情報へとすぐたどり着ける。
投資先に対して投資検討や決算作業に必要な資料の共有を依頼したり、提出状況を一覧で確認できる仕組みも搭載。情報管理やコミュニケーションの手間を減らすことに加え、投資情報の自動集計・グラフ化機能やポートフォリオ分析機能を通じて、投資パフォーマンスの可視化までサポートする。
ケップル代表取締役社長の神先孝裕氏によると、現在は特に担当者の多いVCや複数の部署が関わるような大企業・CVCからの引き合いが多いそう。直近では普通株式や優先株式に加え、以前から要望の多かったコンバーティブルノート(新株予約権付社債)やコンバーティブルエクイティ(新株予約権)、みなし優先株式の管理もできるようになった。
「これまで投資スキームごとに、投資管理一覧を作成しながら個別に管理をしていた。実際に話を聞いても複数のシートを使い分けているため手間がかかっていたり、そもそもきちんと管理できていなかったりするのが現状。ここに課題を感じている担当者も多い」(神先氏)
以前のFUNDBOARDでは「いつ、いくらの株価で、どのような条件で出資した」といったようにスポットの情報だけを残せる仕組みだったが、今回のアップデートで投資先ごとに創業からExitまで全ラウンドの資本政策を登録できる仕様に変わった。
「新株予約権や新株予約権社債も一つのラウンドとして登録でき、バリュエーションキャップや適格資金調達額などの情報も入力できる。新株予約権を株式に転換する際も、全ての投資情報に紐づけて管理することが可能だ。また調達額や時価総額の推移や現状を見ながら、パフォーマンスの高い企業をソートして分析する、といった使い方もできる」(神先氏)
たとえばファンドの決算業務時に投資先の資金調達の推移を記載する場合、FUNDBOARDを使えば投毎回エクセルで一覧表を作って整理する負担もなくなるという。
また同サービスに蓄積したデータはいつでもCSV形式で出力できるので、レポートの元データとしても使えるとのことだ。
野村総研と協業でセキュリティ面を強化
冒頭でも触れた通り、今回ケップルでは野村総研と協業して開発体制やセキュリティ面の強化を進める。
特にCVCも含めて大企業への導入を促進していく上では、セキュリティ対策は不可欠だ。これまでもケップルではSaaSモデルの共有クラウドプランに加えて、自社専用のクラウドサーバーに構築する専用クラウドプランを準備。セキュリティチェックシートへの対応なども行ってきてはいたが、ここに一層力を入れていくという。
日経との協業はイベントの開催やFUNDBOARDの機能拡充、コンテンツの制作や配信面など表側の連携が中心だったが、野村総研の場合はシステム周りなどプロダクトを支える裏側での連携がメインになるそう。ナレッジに加えて人的リソースの提供なども見据えているという。
「(野村総研は)大企業のシステム開発の実績が豊富で、そこに対する知見や技術力を持っている。今回同社と連携することで、情報システム周りを中心にFUNDBOARDの基盤をより強固なのにするべく、開発・運営体制の強化に取り組む。今まで以上に安心して使ってもらえるサービスを目指したい」(神先氏)
この領域ではFUNDBOARDに加えて先日紹介した「smartround」のようなサービスも出てきている。これらが広がることでスタートアップと投資家間の情報管理やコミュニケーションの手間が減り、両者がプロダクト作りや投資先の発掘・サポートなどにより多くの時間を使えるようになることを期待したい。