スウェーデンがアサンジ被告の暴行事件捜査を再開

スウェーデンの検察当局は、Wikileaks創設者のJulian Assange(ジュリアン・アサンジ)被告が2010年に起こした女性暴行事件の捜査を再開した。

当局は今日、アサンジ被告に対し欧州逮捕状を発行すると発表し、ウプサラ地方裁判所に令状を申請した。事件はエンヒューピングで起こったとされている。

スウェーデン検察当局は以前にもこの暴行事件を捜査しようと試みたが、アサンジ被告が2012年にロンドンにあるエクアドル大使館に逃げ込んだ後に逮捕状を取り下げていた。

アサンジ被告による別のスウェーデン人女性に対する2件目の暴行事件の捜査は時効の関係で再開されない。

Wikileaks創設者はエクアドルが政治亡命保護を却下した後、ロンドンにあるエクアドル大使館で先月逮捕された。その後アサンジ被告はすぐに、2012年に保釈条件を破ったとして有罪となった。サウスウォーク・クラウン裁判所の裁判官は今月はじめにアサンジ被告に禁錮50週を言い渡した。そして被告はいま、英国のベルマーシュ刑務所で服役している。

スウェーデンの次席検事Eva-Marie Persson氏は米国時間5月13日、欧州逮捕状とすでに米国が要請している身柄引き渡しをどのように扱うかは英国当局が決めると話した。

この判断は英国の裁判所次第となり、犯人引き渡しの要請で対立がある場合は内務大臣のSajid Javid氏がアサンジ被告をどこに送るか最終的に決めることが考えられる。

先月、英国の警察に身柄を拘束されるやいなや、Wikileaks創設者は米国からの要請でも再逮捕された。米国は、密告者チェルシー・マニングによる軍機密情報のWikileaksへの漏洩に関係する機密コンピューターへのハッキングの容疑でアサンジ被告の送還を模索している。

「アサンジ容疑者が米国に送還されることになるかもしれない手続きが英国で進められている事は認識している。欧州逮捕状と、米国からの送還要請が対立するようなことになれば、英国当局が優先順位に基づいて決定する。どうなるかは予想できない。しかしながら、私の考えではスウェーデンでの事件は英国において同時に進められる」とPersson氏は声明文で述べた。

捜査の再開については、Persson氏は「状況が変わった」と述べるにとどめた。

「ジュリアン・アサンジがエクアドル大使館から出てきたために、この事件をめぐる状況は変わった。これにより事件の捜査を前に進めるという見解だ」。

Persson氏はまた、アサンジ被告が釈放されるまで25週間服役しなければならないことを英国当局が伝えてきたことも明らかにした。

アサンジ被告に対する捜査再開は「かなりの捜査が行われることになる」ことを意味するとPersson氏は付け加えた。これは、アサンジ被告が英国の刑務所にいる間にスウェーデン検察当局が尋問する可能性を示唆している。しかしそのためにはアサンジ被告が面会に協力することに同意しなければならないだろうとの見解もPersson氏は示した。

「私の考えでは、容疑者との面会が必要だ。欧州逮捕状に基づき、英国で服役しているアサンジ被告に面会を申し込むことが必要不可欠になるだろう。しかしながらそうした面会は被告の同意が必要だ」とPersson氏は述べた。

Wikileaksの編集責任者であるKristinn Hrafnsson氏はスウェーデンが暴行事件の捜査を再開することについて声明を出し、その中でスウェーデンが「かなりの政治的圧力を受けて動いていて、そしてこの事件はこれまでずっと誤って扱われてきたと主張している。

Hrafnsson氏はまた、アサンジ被告がエクアドル大使館に逃げ込んで7年間も籠城していたにもかかわらず、捜査回避を模索したことを否定した。そして新たな捜査は「ジュリアンが身の潔白を証明するチャンスだ」とも述べた。

保釈条件違反の判決に先立ち、アサンジ被告は英国の法廷で読み上げられた声明の中で「私が行ってきた行為の中で私から無礼な振る舞いを受けたと感じる人に率直に」謝罪し、逃亡しようと決断したことを悔いているとも述べた。

「アサンジは常に進んでスウェーデン当局の質問に答えていた。また6年間にわたり繰り返し質問に答えるよう言われていた。アサンジがスウェーデンの取り調べを回避したというメディアが展開する主張は嘘だ」とHrafnsson氏は書いていて、アサンジが英国で服役中にスウェーデン当局の面会を断るという選択はしないことをほのめかしている。

先月、英国の議員70人で構成する超党派グループは内務大臣宛に、検察が送還を要求するであろう(今、実際に要求している)スウェーデンにアサンジ被告を送ることを認める「擁護行動」を求める書簡を提出した。

書簡では内務大臣に「性的暴力の被害者の側に立ち、アサンジの事件が適切に捜査される」こと、そして原告のために「適正な手続き」がその後に続くことを要求している。

議員たちはまた、この暴行事件の時効が2020年8月であることも指摘した。これは、この事件を裁判に持ち込むために残された時間が少ないことを意味し、それゆえに米国からの送還要請よりもスウェーデン検察に優先順位が与えられるべきと主張している。

アサンジ被告は米国への送還に抵抗している。送還手続きは何カ月もかかるという見方がある一方で、Guardianによるとアサンジ被告は5月2日にあった裁判所での審問でビデオリンクを介して米国への送還には同意しないと語った。

イメージクレジット: Jack Taylor / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

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TechCrunch Japan

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