サブスクのパスワードを友人と安全に共有するJamのニーズと合法性

Netflix 、HBO、Spotify、その上Disney +まで利用する余裕はないって? そこで登場したのが、認証情報を安全に保ちながらも、パスワードを友だちに教えることができるアプリのJamだ。合法性が疑わしいこのサービスは米国時間2月10日朝からプライベートベータを開始した。創業者のJohn Backus(ジョン・バッカス)氏は、TechCrunchの最初のインタビューで「Jamはユーザーにログインの詳細をローカルな暗号方式で保存させ、選んだサービスのパスワードにアクセスできる友人を追加し、自分のサブスクリプションに相乗り可能なサービスを友人たちにブロードキャストさせるものだ」と説明している。

Jamは、急速に伸びているウェイトリストにユーザー追加を始めたばかりだが、ユーザーがサービスにアクセスすると、無償で利用できるようにデザインされている。将来的には、Jamは友人同士がサブスクリプションのコストを分割できるようにすることでビジネスを生み出すことができるだろう。そこには明らかに需要がある。 Hubによる2000人以上の米国消費者への調査によれば、13〜24歳の80%以上が、誰かのオンラインテレビパスワードを教えたり利用したことがあるという。

「Jamの必要性は明白でした。元ガールフレンドのルームメイトが、私のアカウントを再利用していることを知りたくはありませんからね。誰もがパスワードを共有していますが、消費者が安全にそれを行う方法はありません。どうしてなのでしょうか?」 とバッカス氏は問いかける。「エンタープライズの世界において、チームパスワードマネージャーの機能には、複数のユーザーが同じアカウントに定期的にアクセスする必要があるという現実が反映されています。それなのに消費者は同様のシステムを持っていません。それはセキュリティとコーディネーションにとって悪いことなのです」

ありがたいことに、バッカス氏はセキュリティに関して素人ではない。スタンフォード大のコンピューターサイエンス中退組でThiel Fellowでもあるバッカス氏は、ID検証のスタートアップCognitoと、分散型クレジットスコアリングアプリBloomを創業した経験を持つ。「Bloomで暗号を扱い、Cognitoで機密データを扱ったことで、暗号をコアとする安全な製品を構築した経験が豊富なのです」

またバッカス氏は、Jamに保存されているものはすべてローカルで暗号化されているので、彼でさえそれを見ることはできず、たとえ会社がハッキングされても何も漏洩することはないと語った。1Passwordと同様のプロトコルを使用しており「プレーンテキストのログイン情報は決してサーバーに送信されず、ユーザーのマスターパスワードも送信されることはない」そして「公開鍵暗号方式を素直に使用している」と彼は言う。ただし、あなたの友人がアカウントをジャックしてあなたをロックアウトしようとする可能性があることは、常に意識しておく必要はある。そして、彼らのプロトコルは強化されるかもしれないが、Jam内でそれらが完璧に実装され、完全に安全かどうかは、TechCrunchは確認することができない。

パスワードの共有を促進することが合法であるかどうか、そしてNetflixやその仲間たちがJamを破壊するために弁護士の軍隊を派遣するかどうかは、まだわからない。私たちは、いくつかのストリーミングサービスに対してコメントを求めた。バッカス氏は、ユーザーが利用規約に違反することをJamが助けることについて、Twitter上で質問されたとき、次のように主張した「多くのウェブサイトが(様々なレベルの制約を課しながらも)アカウントを他のユーザーと共有することを許可しています。しかし多くのユーザーがこうした規則を知りません

とはいえ通常、共有が行われるのは、顧客自身のデバイス間または家庭内であり、ファミリープランの支払いも想定されている。Netflix、Hulu、CBS、Disney、Spotifyにコメントを求めたが、報道に向けたコメントは受け取れていない。だがSpotifyの利用規約では、他の人にパスワードを提供したり、他の人のユーザー名とパスワードを使用したりすることは明示的に禁止 されている。Netflixの利用規約は「アカウント所有者は、サービスへのアクセスに使用されるNetflix対応デバイスの管理を行うものとし、アカウントに関連付けられているパスワードや支払い方法の詳細を誰にも明かしてはならない」と強調している。

Jamが、オリジナルコンテンツクリエイターたちから盗みを働こうとしているのだとみなす者もいるだろう、しかしバッカス氏は「Jamは誰のポケットからもお金を奪おうとはしていません」と主張する。「Spotifyは(同じ屋根の下にいる人たちのためのファミリープランを)提供していますし、他の多くの企業も同様のバンドルプランを提供しています。ユーザーはこうしたプランを十分に活用していないと思いますし、(それを使いこなすのは)完全にフェアなゲームだと考えています」

10月にNetflixの最高製品責任者は、同社はパスワード共有をモニターしており、「消費者に優しいやり方で、限界を押し広げようとしています」と述べている。一方、Netflix、Disney、Amazon、Comcastおよび主要な映画スタジオを含むAlliance For Creativity and Entertainment(創作と娯楽のためのアライアンス)は、「不適切なパスワード共有や不適切な暗号化を含む不正アクセスを促進するもの」を含む「著作権侵害」に対処するためにメンバー同士が協力していくことを発表した

これは、Jamにとって高くつく法的トラブルにつながる可能性がある。「私が過去に創業したスタートアップが順調に進んだおかげで、ありがたいことにいまのところJamを自己資金でまかなえています」とバッカス氏は語った。しかし、訴訟が発生した場合やアプリが人気を博した場合には、外部の投資家を見つける必要があるだろう。「わずか5時間前にローンチしたところですが、今言えるのはサインアップの増加によりデータベース部分のアップグレードをすでに進めているということだけです」

バッカス氏はパスワード共有ブラウザーのような競合相手が課金を行うのではと想像しているが、最終的に、月々のサブスクリプションを通した収益化が目標ではない。その代わりに「Jamはユーザーがお金を節約する手助けをして収益を得ます。毎月終わりにその差を精算できるように、ユーザーが何を誰と共有しているかを追跡しやすいものにしたいのです」とバッカス氏は言う。「ユーザー間の貸し借りの自動決済と引き換えに少額の料金を請求したり、より効率的な共有設定を推奨することでユーザーが節約できた料金の一部を請求したりできる可能性があります」。将来的には、ネイティブモバイルアプリを構築する傍らで、人びとのネットワーク全体でアカウント管理を最適化するための推奨事項を提供するチャンスも見すえている。

「Jamは、これまでも異なる形で何度も現れてきた人びとのインターネット利用法の潮目に、完全に一致するタイミングでやってきたと思います」。特に若い人たちにとってそうだ、とバッカス氏は言う。Hubによれば、米国の全消費者の42%が他人のオンラインTVサービスのパスワードを使用しており、特に13〜24歳では69%がNetflixを他人のパスワードで利用しているという。「人気と排他性が、あいまいで時には存在しない場合もある合法利用規則と組み合わされると、それは契約者にとって友人や家族と楽しさを分かち合うことへの招待状となるのです」 と語るのはHubの主幹であり報告の共著者であるPeter Fondulas(ピーター・ホンジュラス)氏だ。「ウォールストリートはすでに、その不快感を顕にしていますが、それにもかかわらず、パスワード共有は、依然としてとても活発です」

そうした観点からは、Jamは性教育に喩えることができるだろう。パスワード共有に対してただ禁欲を求めてもその失敗は明らかだ。人びとは、少なくともそれを安全に行う方法を学ぶべきなのだ。

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(翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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