【シリーズ連載その3】Android 6 “Marshmallow”とSEO。モバイル検索における”Click to Search”機能。

Android Marshmallowのシリーズ記事の第3弾(1記事目はこちら、2記事目はこちら)となります。今回がラストの記事となりますが、”Click to Search”に焦点を当てた内容となっています。(日本語では”タップして検索”と呼ばれており、Chrome>設定>プライバシーから設定することができます。)新たな検索を片手で行える機能であり、非常に重宝していますが、ユーザー行動にも影響を与えていると思います。誰もが使用している機能、とは言い難いと思いますが、SEO担当者として注目しておく必要はあるかと考えています。– SEO Japan

Android Marshmallowの新しい機能と可能性がモバイル検索に及ぼす影響を考察するシリーズ記事の3本目(最終回)となる今回の記事で、シンディー・クラム氏は、”Click to Search”機能について見解を述べている。

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*記事内のリンク先は、一部を除き全て英語となっています。

Android Marshmallowのリリースにより、Googleのクロールにおける技術がより洗練され、多様化している。音声やテキストベースの検索以上に、より状況に適し、より即時的な新しい入力方法が生まれ、検索のアクションは拡大を続けているのだ。

今記事は、モバイルSEOの戦略にインパクトを与える可能性のある、Android Marshmallowについてのシリーズ3作目となる記事である。1本目の記事では、プライベート・インデックス(日本語記事はこちら)にスポットライトを当て、2本目の記事では、販売者のデータとGoogle Nowのカードの関係(日本語記事はこちら)を考察した。

最終回となる3本目の記事では、Googleが新たに加えた、もう1つの変更点、”シングル・ジェスチャー”の検索アクションを取り上げていく。これは、Google Chrome内でワードやフレーズをロングタップをすれば、新しい検索を実行できる機能である。現時点では、このシングル・ジェスチャーの検索機能は、Androidのデバイスのみで提供されているが、Googleの新しいAndroid OSが掲げる目標とも大いに一致している。

Googleは、まだ、Android Chromeの機能に対するこの変更に関して、公式な発表を行っていない。また、資料も提供していないため、ここでは”Click to Search”(クリックして検索)と呼ぶことにする。Click to Searchは、Android Chromeのみで提供されている。Android Marshmallowの場合は、Mailなど(ただし、YouTube, Google+、Messenger、News、PlayStore、Calendarは今のところ対象外)、もともと搭載されているOSのアプリからClick to Searchを利用することもできる。

Click to Search Green Lantern

Click to Searchにより、Googleは、「掘り下げて調べる」スタイルの検索を可能としている。つまり、ユーザーが検索結果ページに戻ることなく、あるいは、アドレスバーを探して、新しいクエリを投げることなく、検索の実行を可能にしているのだ。

ユーザー体験においては、小さな改善だと思うかもしれないが、モバイルデバイスで新たにページを読み込む手間が省ける点、そして、なによりも、検索をするために新たに入力する手間を省ける点を忘れないでもらいたい。どちらも、モバイルデバイスで検索を行うユーザーにとっては、とても重要なポイントである。

Click To Searchの仕組み

ワードをタップして検索をスタートする機能は、このシリーズの1本目(日本語の記事はこちら)で言及した”スクリーン・クローリング”によって可能となる。「スクリーンのクロールが可能であれば、そのすべてを検索クエリの候補にしてしまおう」、というのがGoogleの考えだ。Googleは検索を始めた際のスクリーン上のコンテンツを基に、連鎖したクエリとNow on Tapの検索に対して、コンテキストの関連性を活用していることになる。

この機能は、モバイルデバイスにとって素晴らしい機能となっているが、キーボードに制限がある場合、あるいは、モバイルウォッチのようなウェアラブルの、キーボードを持たないあらゆるデバイスのユーザーにも重宝する機能だ。このようなデバイスでは、ユーザーはGoogle Nowで、入力や音声コマンドによる最初のクエリを実行する。続いて、Android製のウォッチなどのインターフェースで、Click to Searchを利用して、もともとのクエリに関するより詳細な情報を検索することになる。

この新しい検索方法により、ユーザーはAndroid Wearのデバイスからの検索をより行うようになる。単純に一つのWebサイトにとどまるのではなく、他のアプリやWebコンテンツにある詳細情報を検索することがてきるため、今滞在しているサイトやアプリの画面から去ることを厭わなくなるだろう。

テレパシーが使えないことを前提にすると、スマートウォッチにおける検索において、最も直感的な体験と言えるだろう。Android MarshmallowとNow on Tapのユーザーにとっては、このシングル・ジェスチャーの検索アクションは、Now on Tap検索を開始するためにホームボタンを長押しするアクションにとても似ているのだ。

このシングル・ジェスチャーの検索機能は、スマートフォンのあらゆる画面でのクロールを開始し、機能する。スクリーン上の(単一のワードだけではなく)テキストに関して、さらなる情報をもたらしてくれるのだ。この機能は、パブリック・インデックスとプライベート・インデックスから結果を引きぬくが、さらに、検索結果の下部にウェブサイト、および、アプリのアイコンを表示している。

Click To SearchがSEOにとって重要である理由

SEOに関しては、ハイライトしているワードに対する検索結果(Click to Searchの検索結果)は、Google.comで検索を始め、クエリを入力して表示された検索結果と同じとなっている。つまり、連鎖した検索結果でも、文脈を意識した検索結果でもない。現在、通常のGoogleの検索結果とClick to Searchの検索結果の違いは、表示方法にある。

Click to Searchの検索結果では、プレビューボックスに1つだけ表示される(追加のクリックがなければ)。また、その検索結果は、フィーチャード・リッチスニペット(Answer Box)、ナレッジグラフ、ロケーション・カード、定義など、Googleによってキュレートされた結果となることが多い。そのため、このClick to Searchでウェブサイトを上位にランクインさせることは、非常に難しい。

Click to Search DC Comics Example

ただし、必ずキュレートされたGoogleの結果が表示されるわけではない。Wikipediaのエントリや実際のウェブサイトが、トップに表示されることもある。画像、YouTubeの動画、そして、基本的に、通常のモバイル検索に表示されるあらゆるアイテム(スポンサー付きのリスティングとPPCの結果も含む)は、Click to Searchの検索の1位となる可能性がある。

SEOの担当者にとっては、このタイプの検索結果がモバイルユーザーの行動に与える影響を確認することが重要だろう。なぜなら、今まではユーザーを離脱させていたものが、この新しいインターフェースでは、ウェブサイト、アプリ、または、検索結果に直接導く可能性があるためだ。

下記の例は、Target.comの買い物ページからスタートしている”superhero”のClick to Searchである。”men’s graphic tee”や”men’s t-shirt”のような、Eコマースにおける重要なキーワードであるが、通常は、競合するウェブサイトやGoogle Shoppingの結果がトップに表示されるだろう。

Click to Search Superhero

この新しいタイプの検索は、SEOの担当者に多くの疑問をもたらすだろう。このような新しいインタラクティブな検索は、ページビューやサイト滞在時間を減らすのだろうか?あるいは、スマートウォッチなどの小さなデバイスでは便利だと認識されるまで、こうした機能はユーザーに無視されるのだろうか?同様に、ホームボタンを長押しして、Now on Tapにアクセスする方法は受け入れるのだろうか?それとも、無視されるのだろうか?

どちらも、クエリで1位にランク付けされる重要度を高めることに疑いの余地はないが、Googleはフィーチャード・リッチスニペットやGoogle PlayやPPC広告でこのスペースを埋めてしまう可能性がある。その場合、SEO担当者は、どのような対策を練ることができるのだろうか?Android MarshmallowとGoogle Now on Tapが進化し、この新しい検索のオプションが、どのように展開されていくのか、我々は注目する必要があるだろう。

次に考慮するべきポイントは、Googleが、いつ、このタイプの検索を画像で適用するかということだ。2本目の記事(日本語記事はこちら)で取り上げたように、画像の関連性へマシン・ラーニングを活用するのだろうか。恐らく、間もなく、ユーザーはサイト内、あるいは、アプリ内の画像をクリックして、別のアプリやウェブサイト上の同じような商品を見つけることが出来るようになると考えている。

もし、こうした画像検索が可能となれば、その検索結果は、プライベート・インデックスの情報に応じて、優先順位がつけられる可能性がある。ユーザーが過去に見たことのある、もしくは、大勢のユーザーがプライベート・インデックスに保存している、という理由で、特定のアイテムが上位にランク付けされるのかもしれない。画像のClick to Searchは、各種の検索を大幅に複雑化し、また、モバイルSEOの一部の領域を劇的に変えるポテンシャルを持っている。

その一方で、ユーザーに大きなプライバシーの懸念を突きつける可能性もある(例えば、赤の他人が、路上で撮影した私の写真を投稿し、画像認識検索を用いて、私の個人情報を手に入れることは出来てしまうのか?それは勘弁してもらいたい)。しかし、Eコマースにおいては、論理的に考えて、画像認識による商品のマッチングが行われるようになるのは、当然の流れだろう。

これに加えて、この新しいタイプの検索のアクションをどのようにレポートするのかも不明だ。マーケターが、このような検索を、どのようにレポートすることが出来るのか、また、功績を何に認めればよいのか、まったく分からない。Googleアナリティクスのプラットフォームやレポートプラットフォームもまた、こうした変更に適応しなければならないだろう。望ましくないユーザー体験を提供しているウェブサイト、そして、適切な情報に欠けるウェブサイトは、多くのトラフィックを失ってしまうように思える。

ユーザーがあなたのサイトから”離脱したキーワード”(ユーザーがClick to Searchで検索したキーワード)を、Googleアナリティクスで分析できるようになってほしいものだ。Click to Searchのアクションは、Googleが非公開扱いするリファラーのデータの一部ではなく、サイト上のユーザー行動である。従って、アナリティクスに含まれるべきと考えるが、 どれだけ有用だとしても、キーワード関連のレポートは、実現する確率が低い気もしている。

まとめ

モバイル検索は、Googleにとって変化を起こすきっかけを作ったように私には思える。Googleは、様々な方法で、ユーザーがクエリを入力する必要のないブラウザとOSの開発を行っている。

Google Now、Now on Tap、Android Marshmallow、Chromeに加わった画像認識、マシンラーニング、Click to Search、プライベート・インデックスは、アプリとウェブの境界線をぼやけさせているが、プライベートとパブリック、スポンサー付きとオーガニック、そして、コンテンツとクエリの境界線もまた曖昧にしている。

こうした機能の全ては、間違いなく、ユーザー体験を改善し、より直感的な操作を実現しているが、マーケターとSEOの担当者にとっては、より複雑で、より面倒な取り組みが求められることになる。Googleが次に何を加えるのか、誰もが楽しみにしているが、資料の提供、追跡機能の追加、そして、クロスアカウントのユーザー体験への注力もGoogleには求めたい。何を隠そう、モバイルオーディエンスを受け入れる点に関しては、私達もGoogleと同じぐらい重視しているのだ。

この記事の中で述べられている意見はゲストライターの意見であり、必ずしもSearch Engine Landを代表しているわけではない。

この記事は、Search Engine Landに掲載された「Android 6 “Marshmallow” & SEO Series: Click To Search With Google Mobile」を翻訳した内容です。

非常にマニアック(?)な機能であり、現時点では大きなインパクトを与える機能でもないでしょう。しかし、こうしたGoogleによる新しい機能が普及すればユーザー行動に大きな影響を与えることもあり、結果としてWebサイトの内容やSEO戦略にも影響を与えることもあります。ユーザーに焦点を当てることは何よりも重要ですが、Googleの新機能によってユーザー行動が大きく変化する場合もあるでしょう。新たな機能やサービスがユーザーにどのような影響を与えるか、日々考えることの重要性を改めて確認できたかと感じています。– SEO Japan

投稿者:

SEO Japan

002年開設、アイオイクスによる日本初のSEOポータル。SEOに関する最新情報記事を多数配信。SEOサービスはもちろん、高機能LPOツール&コンサルティング、次世代SEOに欠かせないインフォグラフィックを活用したコンテンツマーケティング等も提供。 SEOブログながら、ウェブマーケ全般。アドテク、ソーシャル、スタートアップ、インフォグラフィック等。