個人がスキルを売り買いする「ココナラ」にPRO認定制度、ビジネスユース強化に向けて舵取り

個人の働き方が多様になるにつれ、近年クラウドソーシングやスキルシェア系のCtoCサービスが盛り上がっている。最近TechCrunch Japanで紹介したところでは、Zehitomoなど「応募課金モデル」と呼ばれる新しいマネタイズモデルを採用したサービスも生まれている。

“スキルのフリマ”というキャッチフレーズでサービスを展開するココナラも、スキルをもつ個人の働き方を多様化させるサービスの1つだ。

ココナラは、個人が自分の知識やスキルを販売できるCtoC型のECサービスサイト。同サービスはもともと500円均一でスキルを販売できるサービスとして始まったが、現在はランク制を導入し、そのランクに応じて定められた上限価格の範囲内(最高で20万円)でユーザーが価格を決めるというシステムに変更している。一方、ココナラは手数料としてその販売価格の25%を受け取る。

ココナラでは、ロゴやアイコンの作成、Webページの制作などクラウドソーシングでもおなじみのスキルが売り買いされているほか、ユニークなものとしては”占い”なんていうのもある。以前は占いサービスが売上高の大半をしめるという時期もあったそうだが、現在はデザイン系のスキル販売が急激に増えているという。

ココナラ広報担当によれば、同サービスの登録ユーザーは現在70万人で、出店されたスキルの数は17万件だという。累積の成約件数は150万件だ。

また、同社は2016年8月より法律相談というスキルの販売に特化した「ココナラ法律相談」も提供している。同サービスの弁護士登録数やサービス売上高は非公開ということだが、2018年1月時点で売上高は前年同月比で17倍に成長。有料広告掲載弁護士1名あたりへの問い合わせ数も月あたり10件程度となっているという。

そんなココナラは2月5日、おもにビジネス利用などで高いスキルを求めるユーザーに対応した「PRO認定制度」をリリースすると発表した。同サービスは2月下旬より開始する。

PRO認定制度とは、すでにサービス提供の実績が豊富にあり、かつユーザーからのレビュー評価も高い出品者に対してココナラが“お墨付き”を与える制度だ。PRO認定を受けた出品者のページには「PRO」と書かれたラベルが表示され、高品質を求めるビジネスユースのユーザーから注目されやすくなる。同社はPRO認定者に限定した検索機能も設置する予定のため、出品サービスの露出度アップも期待できる。

これに似たようなシステムとして、クラウドソーシングの「ランサーズ」には認定ランサー制度があるし、「クラウドワークス」にもプロクラウドワーカー制度がある。価格も範囲内でユーザーが自由に設定でき、ビジネスユースの強化を狙ったPRO認定制度も始めるとなると、ココナラと他のクラウドソーシング系サービスとの違いが薄くなり寂しい気もする。でも、それだけビジネスの場でもクラウドソーシングを利用する例が増えているということなのだろう。

ちなみに、ココナラは2017年10月に発表したリリースのなかで、「過去3決算期の収益(売上高)に基づく成長率が1252.39%を記録した」と発表している。スタートアップの成長が単純計算できる訳でもないが、単純計算で言うと1年あたりの年間収益成長率は約400%ということだ。前回TechCrunch Japanが取材を行った2016年7月時点における月次の流通高は8000万円だった。ココナラが受け取る手数料はスキル販売価格の25%なので、手数料収入は単月で2000万円。もし、これが過去1年間で4倍になっていたとすれば、2017年7月ごろの単月収益は8000万円となるのだろうか。

ココナラは2012年1月の創業。今回のPRO制度導入に加え、同社は2月中旬よりビデオチャット機能(ベータ版)の導入も発表している。これまで出品者と購入者のやりとりはテキストチャットに限られていたが、これにより英会話や楽器の個人レッスンなど、対面で提供するスキルの販売が可能になる。

「500円のスキル売買」から「相談のゲートウェイ」に——ココナラが8月下旬にも法律相談サービス開始

ココナラ代表取締役の南章行氏

ココナラ代表取締役の南章行氏

500円でユーザー同士が経験や知識を売買できるCtoC型のサービスECサイトとして、2012年にスタートした「ココナラ」。サービスを手がけるココナラ(2014年にウェルセルフより社名変更)が、2015年11月にジャフコ、ニッセイ・キャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、VOYAGE VENTURESらから総額5億4000万円の資金調達を実施した同社が、「2018年上場」の目標を掲げてサービスを拡大する。その第1弾となるのは弁護士に無料・非公開で相談ができるマッチングサイト「ココナラ法律相談」。8月下旬のローンチを目指してティザーサイトを公開。サービスに登録する弁護士の募集を開始した。

まずはココナラのこれまでについて紹介しよう。このサービスがローンチした2012年当時といえば、まだ今どきのCtoCだのシェアリングエコノミーだのという波が日本に押し寄せていない時期。一方米国を見てみると、5ドルでユーザー同士がスキルやサービスを売買できる「Fiverr」が2010年にローンチしており、ココナラはいわばそのクローン的なサービスの1つという印象が強かった。ココナラ代表取締役の南章行氏は、当初から“その先”の展開を見据えていたと語る。「2016年に入るまではマーケティングも行わず、会社の目指す姿もあまり発信せずにここまで来た。だが大型な調達を行い、2018年に上場すると打ち出し、プレゼンスを取って行くフェーズになった」(南氏)

ココナラの現在の出品数は8万件。カテゴリーの上位3位は占い・鑑定、心の悩み・健康、似顔絵・イラストだが、これ以外にも幅広いスキルが売買されている。また、過去4年間、約10%の月次流通高成長率を維持。7月は月次流通高8000万円超を達成する見込みだという。当初500円均一だった売買額も、おひねり機能やランク制度の導入などを経て上限金額を上げていった(現在500〜5万円で設定可能)ことも流通高の向上に寄与した。

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また特徴的なのが継続課金率。一度購入したユーザーの課金率は最初の数カ月で10数パーセント〜20%程度に落ち込むものの、以後、ほぼ継続して課金を続ける。また出品者がブログやソーシャルメディアで告知することで、口コミでそのファンが流入するということが起こっているそうだ。

「ココナラのメインユーザーはざっくり言うとPCで来訪する男性ビジネスマンと、スマホで来訪してプライベートな相談をする女性。案件ベースで言えば占いなどが多いが、どんなことでも『相談するならココナラ』と考えてもらえる立ち位置を取れている。ユーザーごとの購入カテゴリーを見ても、3〜5カテゴリーと複数にわたるケースが6割以上。もちろん継続課金率自体を上げていく施策は必要だ」(南氏)

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「500円のスキル売買」から「相談のゲートウェイ」に

そんなココナラがこれから目指すのは「相談のゲートウェイ」。無料のQ&Aサービスや一般的なクラウドソーシングでは解決できないような重要性・緊急性・個別性の高い相談の依頼者(購入者)と、固有のスキルを持っているが集客に向けた広告費を負担したくない、できない出品者、さまざまなジャンルで存在するそんな依頼者と出品者を結ぶための入り口になるという。

具体的にはどういうことか? これまで占いやデザインなどの低単価・高頻度の案件が発生する業界についてはトランザクション単位で課金する手数料モデルでビジネスを展開してきたが、今後は高単価・低頻度の案件が発生する業界にも参入。こちらは広告モデルで出品者から課金するのだという。その第1弾が冒頭で触れたココナラ法律相談だ。

このサービスは、ユーザーが遺産相続なり男女のトラブルなりの相談を投稿すると、最大5人の弁護士が回答をくれるというもの。相談は無料で、他のユーザーに相談内容が見えることはない。そして相談の結果、訴訟などを行う場合、ユーザーは最適な回答をくれた弁護士に連絡をして、直接依頼ができる。

このサービスで弁護士にかかる費用は月額3〜6万円程度になる予定。無料版のサービスも用意するが、有料版ではプロカメラマンによる撮影などで弁護士紹介ページを拡充するほか、得意領域の登録機能などで露出を強化する。なお早期本日から一定期間までは無料でサービスを提供する。2018年8月までに弁護士2500人の登録(うち有料1000人)を目指す。

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実は法科大学院の設立などを背景に、2000年以降弁護士の数は大幅に増加し、その結果弁護士所得は減少傾向にある。そのため若手弁護士を中心にウェブでの集客は進んでいるという。そこにいち早く目を付けたのは弁護士ドットコムが運営するQ&Aサイト型の「弁護士ドットコム」。また最近では弁護士トークの運営するチャットアプリ型の「弁護士トーク」なども登場している。

ココナラでは法律相談の運用を踏まえて、2017年以降新カテゴリーでのサービス展開を狙う。また2018年にはサービスEC領域のM&Aや海外進出なども進める計画だという。