スマートニュースの浜本階生氏が米国におけるメディア分極化への取り組みについて語る

6年前、SmartNews(スマートニュース)は大きな挑戦を始めた。2012年に日本でスタートしたニュース発見アプリが、最初の海外市場を米国に決めたのだ。Disrupt 2020では、共同ファウンダーのKaisei Hamamoto(浜本階生)氏が、SmartNewsをまったく異なる2つの市場にどうやって適応させたかについて語った。2019年にユニコーンの仲間入り(未訳記事)を果たした同社の最高執行責任者(COO)でチーフエンジニアである浜本氏は、会社として、特に米国で、メディア分極化にどう取り組んでいるかについても話した。

SmartNewsは、Disrupt期間中に米国バージョンアプリの主要な新機能をいくつか発表した。投票情報や地方および国政選挙の関連記事に特化したセクションがその1つだ。浜本氏は、SmartNewsのゴールは、アプリを「投票プロセスに参加するユーザーのワンストップソリューション」にすることだと語った。

メディア環境は同社が設立された2012年から大きく変わった。SmartNewsは米国で、多くのジャーナリストが遭遇しているのと同じ問題に取り組んでいる。特に政治関係での分極化の拡大、および収益化だ(SmartNewsは現在世界3000社以上のパブリッシングパートナーと収益分配している)。そしてもちろん、Apple News(アップルニュース)やGoogle News(グーグルニュース)など多くの新規参入ライバルがいる。

日本のスタートアップの多くが、海外進出といえばアジア市場を考えるのに対して、SmartNewsは米国進出を決断した。それは世界で最も影響力のあるメディア企業がこの国に集まっているからだ。エンジニアリング面でも、この国のAIと機械学習の人材プールも利用したかったと浜本氏は語った。

「米国は市場として魅力的であるだけでなく、SmartNewsの重要な開発センターだ」と同氏はいう。

日本版と米国版のSmartNewsは同じコードベースを共有しており、日米のオフィスは密に連絡をとって仕事をしている。同社の機械学習ベースアルゴリズムはニュースディスカバリーとパーソナルレコメンデーションの大部分を受け持っているが、パブリッシャーの仕分けはプラットフォームに加えられる前にSmartNewsのコンテンツチームが行っている。コンテンツ担当副社長のRich Jaroslovsky(リッチ・ヤロスロフスキー)氏は、Bloomberg News(ブルームバーグ・ニュース)やThe Wall Street Journal(ウォール・ストリート・ジャーナル)などの媒体で書いていたベテランジャーナリストだ。

AIベースのアルゴリズムは不快な画像を除去するような作業はできるが、「個々のパブリッシャーが、一定の基準を満たしているかどうかを評価する能力はない」と浜本氏はいう。「ジャーナリズムのエキスパートからなるチームの努力を生かし、ユーザーが毎日確実に信頼を持ってニュースを読めるために、できることなら何でもする」。

読者をフィルターバブルから飛び出させる

2つのバージョンのアプリは、コードベースだけでなくいくつかの機能も共有している。例えば、SmartNewsのCOVID-19(新型コロナウイルス)チャンネルは、パンデミックに関する最新情報を常に更新している。米国では、確認された症例数を郡または州別にビジュアル化したものや地域の閉鎖・再開命令に関する情報が含まれている。

アプリのユーザー体験について浜本氏は、日本の読者は1枚の画面に多くのニュースが表示されていることを好むので、日本版アプリでは表示する情報の密度を意図的に高くするレイアウトアルゴリズムを用いていると語った。しかし、テストの結果米国人はシンプルですっきりした余白の多いレイアウトを好むことがわかった。

しかし異なるのはアプリのユーザーインターフェースだけではない。2016年、米国と日本の開発チームメンバーは3週間をかけて、ジョージア州、テネシー州、ミシシッピ州、オクラホマ州、テキサス州など米国の13州を訪れ、Craigslist(クレイグスリスト)の投稿やレストランやカフェで知り合った人たちと話した。SmartNewsの幹部がこれを実施することを決めたのは、日本チームの米国出張先のほとんどがニューヨークとサンフランシスコのベイエリアだけだったことに気づいたからだった。

「東海岸と西海岸に行っただけでは、真のアメリカを感じられないことがわかった」。

浜本氏は2016年の出張で持ち帰った最大の成果を「概して我々は、人を自分たちの側と反対側の2つだけに分類し、反対側を敵と考える傾向にあるが、現実の世界はそう単純ではない」と知ったことだったと語った。

米国メディアにおける政治的分極化に取り組むために、2019年にSmartNewsは「News from All Sides(あらゆる立場からのニュース)」を立ち上げた。1つの話題に関するさまざまな出版物の記事を「most conservative(最も保守的)」から「most liberal(最もリベラル)」までスライダーを動かして表示できる。米国版アプリはローカルニュースにも力を入れている。ユーザーの位置に基づいて、郡や時には都市の報道機関から特定の情報を提供する。

SmartNewsの基本理念は、「人の言葉に耳を傾ける意識を持ち、簡単にラベル付けしないことが社会の分断化の解決につながる」という信念だと浜本氏は付け加えた。

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タグ:SmartNews Disrupt 2020

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スマニュー米国版に選挙、新型コロナ、天気の新機能が登場

米国時間9月16日に開催されたTechCrunch Disrupt 2020で、スマートニュースはニュース発見アプリ「SmartNews」の米国バージョンに主要な新機能を追加することを発表した。選挙や新型コロナウイルス、天気などの最新情報が入手しやすくなる。

大統領選挙および今年行われるその他の選挙に注目した機能がいくつか加わる。SmartNewsは過去2年間ローカルニュースを充実させてきたが、このほど地方選挙や法案への投票の専用セクションを追加したほか、選挙登録や投票に関する情報も提供する。

SmartNewsの共同創業者でCOO(最高執行責任者)の浜本階生氏はDisruptのセッションで、アプリの新しい選挙機能の目標は、情報を探している有権者の「ワンストップ・ソリューション」になることだと語った。

2つ目の新機能は新型コロナウイルスの感染蔓延に特化したもので、感染者数の郡別表示、地域の閉鎖、再開、その他パンデミックに関するポリシー、ワクチン、薬品開発の状況、さまざまな情報源のニュース記事のタイムラインなどを見られる。

新型コロナウイルス用ワクチン・薬品ニューストラッカー

もう1つのニュース機能が「hyper localized」(ピンポイント)降雨予報だ。多くの州の人々が山火事やハリケーンなどの異常気象現象に立ち向かう中、SmartNewsの雨雲レーダーは特許取得済みのレーダーマップを使って、近隣に特化した降雨時刻や降雨量などを表示する。

雨雲レーダー機能

2012年に日本で設立されたスマートニュースは、2014年に米国バージョンを公開し、世界3000種類の提携報道機関の記事を配信している。ニュースの選別は主に機械学習ベースのアルゴリズムで行っているが、開発チームにはベテランのジャーナリストも参加して新機能を開発している。米国では、拡大するメディア分極化の緩和に力を入れており、ソーシャルメディアで起こりがちな「フィルターバブル」問題(未訳記事)から読者を脱出させようとしている。

米国大統領選挙向けのNews From All Sides機能

昨年SmartNewsは「News From All Sides」(未訳記事)という新機能を米国で公開した。1つの話題に関するさまざまな政治的立場の記事をスライダーを使ってユーザーが選べる機能だ。別の視点からも見たいが、オンライン検索に圧倒されがちな読者のために作られた「New From All Sides」(あらゆる立場からのニュース)は2020年大統領選挙にも導入され、ジョー・バイデン氏とドナルド・トランプ氏に関するさまざまな記事を読める。

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