マーケットプレイスの作り方(7):クオリティー担保戦略

【編集部注】本稿は米国スタートアップやテクノロジー、ビジネスに関する話題を解説するPodcast「Off Topic」が投稿したnote記事の転載だ。前回までの記事はこちらから読める。

こんにちは、宮武(@tmiyatake1)です。普段は、LAにあるスタートアップでCOOをしています。今回も引き続き、Lenny Rachitsky(@lennysan)さんから許可を頂き、翻訳した「How to Kickstart and Scale a Marketplace Business」のパート7をお送りします。

本シリーズは、大きく3つのフェーズに分けて構成しています。

1) フェーズ1:ニワトリとタマゴ問題について
・マーケットプレイスを拘束・制限すること
・サプライ側かデマンド側、どちらにまず集中するべきか?
・初期サプライの伸ばし方
・エンドユーザーの伸ばし方

2) フェーズ2:マーケットプレイスのスケールの仕方
・サプライ側とデマンド側のどちらが伸び悩んでいるかをどう判断するべき?
・スケール時のグロース戦略
クオリティー担保戦略←今回
・学び・やり直すと何を変える?

3) フェーズ3:マーケットプレイスの進化させる方法
・「Managed(管理された)」マーケットプレイスへの進化する方法とは?
・新規事業の追加方法 ・新規事業の追加方法 ・新規事業の追加方法 ・新規事業の追加方法

クオリティー担保問題

マーケットプレイス事業の経営者のほとんどは、クオリティー担保を気にしている。スケールすると今までどおりのサービスレベルを提供することは、より難しくなり、重要になる。小さいミスを許してくれた初期ユーザー以外への提供、特例、新しいルールやプロセスをリアルタイムで作らなければいけない。

クオリティー担保のトップ101戦略チートシート

クオリティー担保戦略をまとめると以下のようになります。

  1. スタンダードとペナルティ
  2. サプライ側をマニュアルでオンボード
  3. レビュー
  4. 助成する
  5. 検索ランキングを利用して良いサプライをプロモーションする
  6. クオリティーの差別化
  7. カスタマーサービス
  8. クオリティーの初期シグナルを見つける
  9. オンボーディングのハードルを上げる
  10. お手本を見せる

クオリティー担保戦略1:スタンダードとペナルティ

3分の2の事例でのクオリティー担保のためにミニマムのサービスレベルのスタンダードを明確に定義すること。良いアクションに対してインセンティブを渡し、悪いアクションに対してペナルティを。

事例1:Eventbrite
どういうイベントが許可されるかコミュニティーガイドラインにて明確に記載した。そして悪い人を捕まえるためにスパム/詐欺対策チームと技術に投資した(Tamara Mendelsohn氏)。

事例2:Uber
初期からドライバーが4.4以下の評価になった時にアラートしていた。市場によっては4.0以下の評価の場合は補習学校を受けなければいけなかった(Andrew Chen氏)。

事例3:Lyft
体験のクオリティーコントロールのためにいくつか教育とペナルティを用意した。エンドユーザーとして、オークランドに住んでいてサンフランシスコに行きたく配車をお願いした時にドライバーがキャンセルするのは最悪の体験。それを防ぐためにドライバーへの教育と、ペナルティを実施した。キャンセルポリシーを提供することによってエンドユーザーの体験を維持しながらドライバーに明確にサービスの使い方を教えられた(Benjamin Lauzier氏)。

事例4:DoorDash
アメとムチを用意した。SLAを達成しなければよりお金をチャージした。より長期的によかったのは、レストランがいいオペレーションを回したら金銭的インセンティブを与えたこと。例えば、Dasherの待ち時間を減らせばコミッション率を下げる(Micah Moreau氏)。

事例5:Caviar
クオリティーのスタンダードは各ローカルチームのクオリティー感覚によって変わった。DallasとNYは違うクオリティーの考え方を持っているので、全国同一にスタンダード化する必要はなかった(Gokul Rajaram氏)。

事例6:Etsy
リスティングされている商品が利用契約の基づいていることをすごく気にしていたが、あまり明確に定期づけされていなかった。商品の「クオリティー」自体は商品ごと違うので、あまり見ていなかった(Dan McKinley氏)。

クオリティー担保戦略2:サプライ側をマニュアルでオンボード

2番目に使われたアプローチで約半分の事例が使ったのはサプライ側を1対1、授業形式、ハンズオンサポートなどマニュアルでオンボードしていた。

事例1:Lyft
初期はドライバー向けにオンボーディングの授業を設けていた。軽食を準備して、何十人のドライバー候補者が教育動画やチャットを実施していた(Benjamin Lauzier氏)。

事例2:Airbnb
新しいリスティングをオンボードする毎に、12項目のチェックリスト(例:写真数、タイトルの長さなど)を実施してクオリティーを標準化をした。リスティングされた後にローカルチームのメンバーがホストに各タッチポイントの教育を行う。例えば予約リクエストが来た時にアカウントマネジャーがホストにメールもしくは電話し、何が起こっていて、どういう風に予約を実際のブッキングにするかを説明。このグローバルなオペレーションは一つのデータチームが管理していて、国毎の進捗を比較して学びを共有していた。世界各国のホストとつながっていた為、直接フィードバックをもらえてAirbnbのプロセスやツールをすぐに改善できた(Georg Bauser氏)。

事例3:DoorDash
デリバリー体験はレストランのブランドに影響する。我々がデリバリー時間帯では各レストランのブランドを代表しているので、レストラン側が心配になる。その責任はかなり重い。レストラン側を安心させるためにかなりの泥臭いオペレーション仕事を一緒にやったりしている。マーチャントのオペレーション周りの専門チームを持ち、レストラン側のキッチンがどう影響を受けるか、ロジ周りの扱い方、オーダー管理を一緒に設計する。どうDasherがピックアップをするかからフローを一緒に作る(Micah Moreau氏)。

事例4:Instacart
我々のマーケットプレイスでクオリティーを示す1つの要因はプロダクトのリスティングデータだった。ほとんどの場合、エンドユーザーは商品の良い写真がなければその商品を買わない。そのためカタログ用に商品の高質画像データを取得するためにかなりフォーカスした。場合によっては自らお店に行って各商品を1つずつ買ってカタログ化していた。高いクオリティーのカタログがあるからこそユーザー体験をよく出来た(Max Mullen氏)。v

事例5:Caviar
食べ物のスタンダードはあまり変わらなかったが、オペレーション周りのスタンダードは上がったり下がったりしていた。実は意外と一番おいしいレストランの多くはオペレーション周りは長けていなかった。なのでレストランオーナーとオペレーション周りの改善を手伝った。それはユーザーがその2つの要素を1つにするから。クオリティー = おい味しい食べ物 + 良いオペレーション(Gokul Rajaram氏)。

事例6:Uber
初期は全ドライバーはUberの従業員がインタビューしていた。最初の20人はTravis自身がインタビューしていた。それと法的に自動車の検査が必要だったので、オフラインでの確認も行なっていた(Andrew Chen氏)。

クオリティー担保戦略3:レビュー

3分の1の事例はレビューシステムを導入してクオリティー担保/信頼度の向上をしていた。

事例1:GrubHub
サプライ側では評価、レビュー、カスタマーサービスの連絡回数を見ていた。低いレビューとクレームが多すぎたら社内のメンバーが話に行って場合によっては削除するケースもあった。これはCXチームが定性的にやっていた。一つの課題で別途解決法を見つけなければいけなかったのは新しいレストランで初期オーダーが悪く行ってしまうと平均レビューがかなり悪くなってしまうこと(Casey Winters氏)。

事例2:Airbnb
Airbnbではレビューと評価をかなり真剣に見ていた。初期ではレビューをもとにサプライ側とデマンド側の調査が出来た。ホストとゲストに電話してAirbnbについてのフィードバックをしてもらった。悪いレビュー、良いレビュー、レビューしなかった人と全員とつながるようにした。レビューをするようにお願いすることによってAirbnbエコシステムの成長を早められた。レビューが多いホストはレビューがないホストより予約される可能性が高い。レビューのフォーカスすることによっていろんな市場や文化から貴重な顧客フィードバックをもらえた。これでプロダクト、ローカライズ、翻訳、さらにオンボーディングをゲスト側とホスト側両方のために改善ができた(Georg Bauser氏)。

事例3:Zillow
各市場で違う戦略を設けてたが、一番大きかったのはユーザーレビュー。これは業界初だったので、かなり論争になることだった(Nate Moch氏)。

クオリティー担保戦略4:助成する

約3分の1の事例はユーザー体験を助成してよりよい体験を提供していた。

事例1:Breather
1つの取引時間が低いため、悪い雰囲気の場所を提供できない。取引額が小さければより高い体験クオリティーを提供しなければ行かないので、一部は助成しなければいけない。我々の場合は部屋のクオリティーを上げるために良い机や防音の部屋を用意した。普通は会議室はゴミレベルのクオリティー。デザインを良くしてクオリティーを上げた。何か問題が起きた時は素早いカスタマーサービスと綺麗に掃除することで解決した(Julien Smith氏)。

事例2:Instacart
何があってもユーザーを満足させるようにした。例えばユーザーへ届いた商品が使えなかったり調理で重要な具材を受け取らなかった時には次のオーダーをすべて我々が負担していた(Max Mullen氏)。

事例3:Lyft
インセンティブを出来るだけ統一した。キャンセルの払い戻しは良い体験を作るために行動したユーザーへの報酬だった。ユーザーが高いクオリティーの取引を行うためにすべてのことをやっていて、その間に何か問題が起こった時は我々がそこのコストを負担した(Benjamin Lauzier氏)。

クオリティー担保戦略5:検索ランキングを利用して良いサプライをプロモーションする

かなり面白く、なお効果的なクオリティー担保の戦略は検索ランキングのアルゴリズム。上手く活用すれば低コストでかなり良い戦略となる。

事例1:Airbnb
Airbnbではマーケットプレイスの両側のクオリティーについて考えていた。ゲストがどうやって最高の滞在を体験できるリスティングを探せるか、ホスト側はどうやってホスト側がオファーしているものに満足するゲストを見つけられるかが重要だった。社内でかなり議論になったのは「値段で並び替え」の機能だった。長い間Airbnbでは値段での並び替え機能がなかった。それはクオリティーを低くしたから。当時は一番値段が高いリスティングや値段が低い物件は値段設定が間違っていて、期待値のギャップを及ぼした。サービスを何回も改善する中で値段設定が間違えている物件をどう見つけるかを考えた(Dan Hill氏)。

事例2:Rover
検索結果がビジネスのすべてをコントロールするものだった。検索結果自体がプロダクトだった。Roverが競合に勝った理由はより市場のことを理解していたから。データサイエンスに投資をして検索ランキングにサプライをどう盛り込むかを理解した。高いクオリティーのサプライはエンドユーザーのリピート率に繋がることがわかった。一例を挙げると、同じユーザーと何回も取引をしたサプライ側のスコアを上げて、検索結果で上に上げるようにした。常にサプライ側のクオリティースコアをアップデートしてた。これを上手く回せたおかげでよりサプライを獲得し、ユーザーからは高いLTVを取れた(David Rosenthal氏)。

事例3:Eventbrite
サプライ側のクオリティーを高くするために初期は簡単な検索アルゴリズムを活用した。一番チケットが売れているイベントをより高く検索結果で出すことだった(Tamara Mendelsohn氏)。

クオリティー担保戦略6:クオリティーの差別化

AngelList、Breather、Caviar、Lyftなどが利用した大まかな戦略はクオリティーを高めてそれを差別化要因にすること。そうするとクオリティーを上げる戦略とかではなく、サービスのあらゆる場所に高いクオリティーをどう盛り込むかが重要となる。

事例1:Lyft
クオリティーは我々の差別化ポイントだった。我々のマーケットプレイス事業で一番のクオリティーが問われるドライバーの身元調査を一番厳しくチェックする会社になりたかった。それは初期から意図的にやっていた(Benjamin Lauzier氏)。

事例2:Caviar
Caviarブランドはクオリティーと紐づいている。だから我々はレストランのサプライを何よりフォーカスした(Gokul Rajaram氏)。

事例3:AngelList
我々自身が承認したトップレベルの投資家とスタートアップしかサービスに招待しなかった(Babak Nivi氏)。

クオリティー担保戦略7:カスタマーサービス

クオリティー担保で効果的な戦略は何か問題が起きた時にいいカスタマーサービスを提供すること。ここはBreather、GrubHub、OpenTableがかなり投資をした。

事例1:OpenTable
カスタマーサポートにかなり投資をした。レストラン側ではダイレクト営業部隊だけではなかった。最初からカスタマーサービス組織を作った。レストラン側には電話サポートの番号を我々が提供したハードウェアに必ず記載するようにした。1社1社のレストランのどのサプライヤーよりそのレストランのレイアウトについて知っていた。全コンセント、パワーケーブル、電話線などを図面化した。レストランが紙からソフトウェアに移行する時も知っていて、いつまで移行しなければいけないかまでわかるようにした。各レストランのITスタッフになる必要があったので、そこにかなり投資をした。そしてクライアント管理の組織を作り、レストラン側がソフトウェアをフル活用できるようにした(Mike Xenakis氏)。

事例2:GrubHub
デマンド側ではユーザーのペルソナを作った。一人でオーダーする vs 他の人とオーダーする、計画されたオーダー vs 自発的にオーダーする2軸でペルソナを作った。一番大変だったペルソナは一人でオーダーして計画的にオーダーするペルソナだった。一番クレームをして、クーポンコードを利用していた。カスタマーサービスチームにはこのペルソナへの対応時間を限らせるようにした(Casey Winters氏)。

クオリティー担保戦略8:クオリティーの初期シグナルを見つける

この調査で一番面白かったのは新規サプライからのシグナリングによって長期クオリティーを予測すること。

事例1:TaskRabbit
成功していたTaskRabbitsに対してMBTI指標を受けてもらった結果、2つの性格タイプが良いサプライになると分かった。かなりサービス思考な人と、周りの人を喜ばせるのに満足する人たち。これを取り入れたオンボーディングのアンケートを作った(Brian Rothenberg氏)。

事例2:Rover
いいサプライになりえそうなシグナルを理解した。サプライのオンボーディングをするときにいくつか質問をするようになって、一番サプライ側の良さを表す質問は「夜になるとどこで犬は寝ている?」だった。それに対して「私のベッドで寝ている」と答えるといいサプライになると分かった。その人たちをより検索ランキングでブーストした。それと獣医師と仕事したことある人は良いサプライになるとわかった(David Rosenthal氏)。

クオリティー担保戦略9:オンボーディングのハードルを上げる

以上にサプライ側がいるときはTaskRabbitがやったように、オンボーディングのハードルを上げると良いかもしれない。

事例1:TaskRabbit
最終的には新規で入ってくるサプライ側に応募費用を払ってもらった(Brian Rothenberg氏)。

クオリティー担保戦略10:お手本を見せる

最後にEtsyが行った戦略。

事例1:Etsy
たまたま初期投資して見つけたアイデアが1つあった。Etsyで1つのテーマをベースに売手のコレクションをキュレーションできるTreasuryと言うツールを開発した。売手のTreasuryがEtsyのホームページでピックアップされたら売上/PV数がかなり上がるインセンティブとなった。EtsyチームはTreasuryの中の商品がすべて美しく写っているものしか選ばなかった。それについて少し教育をしたら売手側のクオリティーレベルがかなり上がって、そこでスタンダード化された(Nickey Skarstad氏)。

クオリティー担保調査の学び

  1. ほとんどのクオリティー課題はサプライ側にあった
、
  2. クオリティーの解決はない。常に問題になり、予期せぬことやユーザー期待値は常に変化するし、スケールするにあたり更に難しくなる。ほとんどの会社はクオリティー担保と改善のフルタイムのチームを採用した。

次回は最後の記事で、各マーケットプレイス事業がやり直すとしたら何をしていたかをご紹介します。

連載「マーケットプレイスの作り方」

マーケットプレイスの作り方(6):スケール時に効果的だった8つのグロース戦略

【編集部注】本稿は米国スタートアップやテクノロジー、ビジネスに関する話題を解説するPodcast「Off Topic」が投稿したnote記事の転載だ。前回までの記事はこちらから読める。

こんにちは、宮武(@tmiyatake1)です。普段は、LAにあるスタートアップでCOOをしています。今回も引き続き、Lenny Rachitsky(@lennysan)さんから許可を頂き、翻訳した「How to Kickstart and Scale a Marketplace Business」のパート6をお送りします。
本シリーズは、大きく3つのフェーズに分けて構成しています。

フェーズ1:ニワトリとタマゴ問題について
・マーケットプレイスを拘束・制限すること
・サプライ側かデマンド側、どちらにまず集中するべきか?
・初期サプライの伸ばし方
・エンドユーザーの伸ばし方

フェーズ2:マーケットプレイスのスケールの仕方
・サプライ側とデマンド側のどちらが伸び悩んでいるかをどう判断するべき?
スケール時のグロース戦略(←今回)
・クオリティー担保戦略
・学び・やり直すと何を変える?

フェーズ3:マーケットプレイスの進化させる方法
・「Managed(管理された)」マーケットプレイスへの進化する方法とは?
・新規事業の追加方法

大手マーケットプレイスがやっているグロース戦略

スケール段階にあるスタートアップへのグロース戦略は、初期と比較すると大分限られてくる。初期では、16の戦略がサプライ側とデマンド側であったのが、スケール段階で作用するのは8つだった。

以下は、戦略の一覧と何%の事例にとっては大きなグロース要因だったかを示している。

  1. 広告(70%)
  2. 地域拡大(65%)
  3. コンバージョン改善(50%)
  4. SEO(50%)
  5. ダイレクト営業(35%)
  6. リファラル(30%)
  7. ループ(25%)
  8. PR(17%)

そして、これが8つの戦略のうちどれでグロースしたか企業別に表したシートになる(サプライ側とデマンド側どちらとも含まれている)。

グロース戦略1:広告

スケール段階で最も使われていたグロース戦略は「広告」だった。初期では6社しか使わなかったのが、今だと17社中、12社が使っている。

事例1:Uber
最終的には50%は広告から、15%はリファラルから、35%は口コミからだった。初期は30%がリファラル、50%〜60%が口コミ、その他はPRなど(Andrew Chen氏)。

事例2:DoorDash
すべてのチャネルに投資し、常にテストと改善をし続けた。広告だとマージンの黒字化までどれぐらい時間がかかるか」を見て投資していた。各市場が違ったので、LTVベースでは投資しなかったのは、5年後の市場とユニットエコノミクスを予測するのは無理だから。考え方とすると、5ドルかけてユーザーを獲得すれば、何カ月後に5ドルの貢献利益を出せるのか?( Micah Moreau氏)。

事例3:Zillow
スケール時にはPRやSEO、モバイルへの投資をやり続けたが、広告にも投資をした。かなり遅く始めたと思うけど、かなりの成果が出たよ(Nate Moch氏)。

グロース戦略2:地域拡大

2つ目の使われてたスケール時のグロース戦略は「地域でのサービス拡大」。意外だったのが、BreatherとThumbtackは地域拡大がメインのグロース戦略には含まれてなかった。

事例1:Instacart
地域拡大が長年のグロース戦略の大きな基盤となっていた。市場のセレクションとローンチの仕方がうまくなっていくたびにグロース目標をより早く達成するようになった(Max Mullen氏)。

事例2:OpenTable
地域拡大は我々にとって一番のグロース戦略だった(Mike Xenakis氏)。

事例3:GrubHub
スケールするにあたり、サプライ側もデマンド側にとっても地域拡大はグロース戦略のトップ2か3に入っていた(Casey Winters氏)。

事例4:Rover
まずシアトルで小さく初めて、市場の動きを理解した。そこから一気に全国展開した。新しい地域へ入るときにはGoogle AdWordsを使った。社内では「Activated Markets」(勝手に伸び始めている市場)と言うコンセプトがあり、オーガニックなグロースを見ることで、次どこにいくかが決めやすかった。その他の市場は流動性が低い可能性が高かったので、見送っていたよ(David Rosenthal氏)。

グロース戦略3:コンバージョン改善

約半分の事例がユーザーフローの改善によるコンバージョン向上にてグロースした。逆に言い換えると、半分の会社が大きなグロース戦略ではなかったとも言えるだろう。

事例1:Zillow
コンバージョンやエンゲージメント改善はスケールするのと同時に重要になってきた。どれだけサイトに訪れるユーザーの家を購入する体験をアクティベートできるかにフォーカスした。家の購入は短い取引サイクルではないので、エンゲージメントがかなり重要だった。ユーザーをアクティベートさせ、メールや通知で再度エンゲージして、家を購入するための次のステップを踏むようにするのが大事。自分の家の価値を見るためにサイトへ再来訪するユーザーが多かったが、家の購入体験でエンゲージする方が重要だったね(Nate Moch氏)。

事例2:Airbnb
検索から予約までのコンバージョンを高めることにフォーカスしたので毎年コンスタントに伸びることができた(Lenny Rachitsky氏)。

事例3:Etsy
初期に存在した購入までの障壁を多く外したおかげでスケール時に伸び続けることができた(Nickey Skarstad氏)。

事例4:Uber
UberのボストンGMを務めていたMike Pao氏は、深夜帯のドライバーを集めるのに苦労していた。それに対して、ボストンの全ドライバーに夜に運転すれば2倍の報酬を渡すと約束したんだ(手続きは裏でマニュアル)。それが上手くいって、他の都市でも真似するようになり、本社でも正式に使われるようになった。そこから「サージプライシング制度」が生まれた(Andrew Chen氏)。

グロース戦略4:SEO

SEOも約半分の事例で重要なグロース戦略だった。特に、サービス開始から時間が経っている会社ほどより重要になった傾向がみえた。

事例1:OpenTable
SEOへ入り込むのは少し遅れたが、重要さを知ったときにかなりの投資をした。外部のエキスパートを呼んでSEOプログラムを作ってもらったんだ。数カ月後にSEOからのリファラルを3倍にし、新規ユーザー獲得への大きなソーシング元になった(Mike Xenakis氏)。

事例2:Zillow
SEOはもちろん私たちにとって重要なチャネル。PRやコンテンツを上手く使ってサイトへのトラフィックを作り、国内最大級の家のデータベースを作り上げた(Nate Moch氏)。

事例3:Etsy
後々GoogleがインデックスしたEtsyリスティングから新規ユーザーが来るようになった(Nickey Skarstad氏)。

グロース戦略5:ダイレクト営業

意外とダイレクト営業を中心にグロース戦略をした企業は少なかった。おそらく営業部隊をスケールするコストが他のチャネルと比較すると非効率だから。しかし、フードデリバリー系やBreatherとしては引き続き重要なグロースチャネルだった。

事例1:Caviar

「私達にとっては、サプライ側の獲得はダイレクト営業が間違えなく重要だった!(Gokul Rajaram氏)。

グロース戦略6:リファーラル(口コミ)

5社ほどサプライ側とデマンド側でリファラルプログラムが引き続き重要なグロース戦略だった。

事例1:Uber
現時点だと15%の新規ユーザーはリファラルから来て、35%は口コミから来ている(Andrew Chen氏)。

事例2:Airbnb
現時点だと約10%〜15%の新規サプライはリファラルから来ている(Lenny Rachitsky氏)。

事例3:DoorDash
Dasher獲得にとってリファラルは大きかった。エンドユーザー側でも効果的だったが、Dasher獲得と比較するとそこまでだった(Micah Moreau氏)。

グロース戦略7:ループ

ループは4社(Eventbrite、GrubHub、OpenTable、Uber)にとって重要な戦略だったと話している。

事例1:Uber
初期は高級車の運転手とエンドユーザーだったので、サプライとデマンドの被りがなかった。2015年にR2Dファネル(Riders to Drivers)を作り、エンドユーザーから運転手へコンバージョンさせるスキームを作ったよ(Andrew Chen氏)。

事例2:OpenTable
スケールするにあたって、レストランのサイト制作がユーザー獲得戦略で最も効率的で、効果的だった。さらにロード時間、アニメーションなどサイトのクオリティーを上げることによってよりグロースできた(Mike Xenakis氏)。

グロース戦略8:PR

PRは3社(Etsy、TaskRabbit、Zillow)にとってスケールした時にも重要なグロース戦略だった。

事例1:Etsy
面白いコンセプトと変わったアイテムのリスティングはブロガーなどにとっては使いやすいネタだったね(Nickey Skarstad氏)。

その他

グロースについて1:Instacart
ユーザーからのフィードバックに耳を傾けて、ユーザーからのクレームからプロダクトを改善していった。ストック切れの商品の代替品をレコメンドする時の体験をより出来るケースがあった。そのときにプロダクトへかなり投資した。それをやったおかげでプロダクトの初期体験の満足度を上げられて、それが後々グロースへつながった(Max Mullen氏)。

グロースについて2:Thumbtack
初期のグロース戦略の多くは、スケール段階ではまったく機能しなくなった(Sander Daniels氏)。

グロースについて3:Caviar
一発で解決できる特効薬は残念ながらなかった。単純にいろいろな施策を試し続けたという話(Gokul Rajaram氏)。

次回はマーケットプレイスのクオリティー担保についてご紹介します、お楽しみに!

連載「マーケットプレイスの作り方」

マーケットプレイスの作り方(5):サプライとデマンド、どちらが伸び悩んでいるかをどう判断するべきか?

【編集部注】本稿は米国スタートアップやテクノロジー、ビジネスに関する話題を解説するPodcast「Off Topic」が投稿したnote記事の転載だ。前回までの記事はこちらから読める。

こんにちは、宮武(@tmiyatake1)です。普段は、LAにあるスタートアップでCOOをしています。今回も引き続き、Lenny Rachitsky(@lennysan)さんから許可を頂き、翻訳した「How to Kickstart and Scale a Marketplace Business」のパート5をお送りします。

本シリーズは、大きく3つのフェーズに分けての構成になります。

1) フェーズ1:ニワトリとタマゴ問題について
・マーケットプレイスを拘束・制限すること
・サプライ側かデマンド側、どちらにまず集中するべきか?
・初期サプライの伸ばし方
・エンドユーザーの伸ばし方

2) フェーズ2:マーケットプレイスのスケールの仕方
・サプライ側とデマンド側のどちらが伸び悩んでいるかをどう判断するべき?(←今回)
・スケール時のグロース戦略
・クオリティー担保戦略
・学び・やり直すと何を変える?

3) フェーズ3:マーケットプレイスの進化させる方法
・「Managed」(管理された)マーケットプレイスへの進化する方法とは?
・新規事業の追加方法 ・新規事業の追加方法

PMFに達成後によくある問題

今回は、PMFを達成したマーケットプレイス企業(2段階目)からよく寄せられる質問に答えたいと思う。

  • サプライ側とデマンド側のどちらが伸び悩んでいるかをどう判断するべき?
  • グロース戦略をどうアクセルを踏んでスケールさせられるか?
  • クオリティー担保をどう保つか?
  • やり直せるなら何か違うことをやるべきか?

成長すると初期のグロース戦略が効率悪くなる。その際にサプライ側かデマンド側のどちらにフォーカスするかを再度検討する必要がある。2段階目の全体像の図のチートシートが以下になる。今回、は最初のステップとしてフォーカスする側を決める判断軸についての説明と事例紹介。

「スケール」のタイミングとわかるサインは以下だ。

  • PMFを達成していること(初期地域・カテゴリーで高いリテンションの数字と成長率があること)
  • 新しい市場もしくはカテゴリーでローンチする強い仮説を持っていること
  • 強い競合が現れた時

サプライ側で拘束されることが多かったのは、スケールすると変わってくる

フェーズ1で話した初期成長では80%の会社がサプライ側にフォーカスしていたのが、スケールすると市場やカテゴリーによって大分変わる事例が出てきている。

ここで話しているサプライ側とデマンド側の「拘束」とは、そのサプライもしくはデマンドが一番の取引数へ繋がる要因のこと。

大きな割合の事例は常にサプライ側が足りてない

40%の事例は初期でサプライ側にフォーカスしていて、スケールしてもサプライ側が足りてなかった。こういう企業にとってはサプライサイド獲得に掛けたROIがデマンド側を獲得するためのROIを遥かに上回っていた。

事例1:Uber
サプライ側が常に足りてなかったため、サプライとデマンドのアンバランスについてあまり考えてなかった。この結果、需要に応じてリアルタイムで料金を変動する『サージプライシング』が生まれた。最終的に一つの市場でマックス20%〜30%以下の配車がサージされるように目標設定した。それ以上だとサプライ側が足りてないと判断して、これがベンチマークとなった。常にユーザー体験から考えていた時にはどのレベルのサージがあればユーザーがアプリを嫌ってしまう?と考えていた(Andrew Chen氏)

事例2:OpenTable
我々はサプライ側に引き続きフォーカスすることをわかっていた。市場の何店舗と何パーセントのレストランを取れたのかをグラフ化して、そのグラフの上にユーザー数と合計予約数に比べてのOpenTableで取れた予約率を記載した。どの市場も似ていたので、先ほど話したKPIの実績次第で市場への投資を判断していた。一つの市場のレストランシェアを勝ち取れると成長率は線形成長ではなく、指数関数的成長だった(Mike Xenakis氏)

事例3:DoorDash
我々のグロース要因を見ると、4つの要素があった:セレクション、デリバリー、クオリティー、安さ。全部サプライ側の要因だった。そのためいつもサプライ側が足りてなかった。デマンド側が足りてないと感じた時は数回あったが、かなりレアケースだった。一つの市場のでローンチした時は特定の地域で1日のデリバリー数の目標を設けてた。そこの地域が目標達成すると「卒業」する。目標を早く達成できない市場はすぐにDasherやレストランが離脱する傾向だった(Micah Moreau氏)

常にデマンド側が足りてない会社は3社のみ

事例1:Rover
我々の場合はデマンドが足りなかった。サプライ側で問題がはなかった。犬好きで、家で働いていて、$50稼ぎたい人たちはいっぱいいて、そうするとRoverに来てくれる。デマンド側はAirbnbと同じく、他人を信頼させるユーザー行動を変えなければいけなかった(David Rosenthal氏)

事例2:TaskRabbit
TaskRabbitは一切サプライ側の獲得で困らなかった。何千人とサービスプロバイダーがウェイトリストにいたが、デマンド側で苦労した( Brian Rothenberg氏)

事例3:AngelList
シンジケートの方にピボットした時はLP獲得するのが大変だった(Babak Nivi氏)

サプライとデマンドのどちら側ともアンバランスを経験した会社が多数

40%の事例は地域やカテゴリー毎にアンバランスがあった。これを解決するために自社モデルやどちら側が足りてないかを見つけるツールを開発していた。

事例1:GrubHub
どの地域がサプライが足りてないかわかるために、一つの市場でレストランのカバレッジを出すモデルを作った。モデル内容とすると二つのKPIをトラッキングした。

  1. 市場の何%のレストランはGrubHub対応していて、何%は対応してないか
  2. 平均GrubHubレストランのオーダー数

1つに地域での平均GrubHubレストランのオーダー数がその地域平均よりも圧倒的に高ければその地域のサプライ獲得にフォーカスした(Casey Winters氏)

事例2:Thumbtack
どのKPIが一番ユーザー満足度(NPS)を予測できるかを探してたら、「Hire Rate(採用率)」が相関していた。大体ユーザーはProを探す時に最低3つの検索結果が出ると満足していた。サービスとして60%の検索結果が3つ以上の結果が出ていればうまくいっていると判断し、その以下はサプライ側が足りてないと判断した(Sander Daniels氏)

事例3:Airbnb
最初にサプライ側かデマンド側が足りてないのを判断するために稼働率を見た。ある%を超えていればサプライ側が足りてないと判断した。その後は稼働率と予約率を見るモデルを作ったんだ。そこで変曲点が起きた際の稼働率を見た。最近だと計量経済学モデルを使って、サプライ側かデマンド側を一つを増やすとどれだけ売上が上がるか計算するモデル(Lenny Rachitsky氏)
ちなみにAmazonがエコノミストを採用するのは、上記のような計量経済学モデルが必要になるから。テック企業のエコノミストの役割や採用の話は、ポッドキャストの第9話「スタートアップの新しい役職と職業」の回でもご紹介しました。

事例4:Zillow
ローンリクエストに対しての見積数、1ユーザーあたりのローンリクエスト数、レートの競争力、地域ごとのコンタクト率など、マーケットプレイスの状態を図るKPIを見ていた。どこかが低ければサプライを増やすかデマンドの調整をしていた(Nate Moch氏)

事例5:Instacart
ゴールはサプライとデマンドのバランスに投資すること。常にどちらにも投資してた。見ていた一つのKPIはAvailability(可用性)。高ければユーザーが即時デリバリーを頼めるので、可用性が高くしてすぐにサービスのバリューをユーザーに感じてもらうようにした( Max Mullen
次はマーケットプレイスのスケールとアクセル方法についてご紹介します、次回も楽しみにしてください!

Written by Lenny Rachitsky (@lennysan) | Translated by Tetsuro (@tmiyatake1) | Edited by Miki (@mikirepo)

連載「マーケットプレイスの作り方」