Sarcos Roboticsが遠隔操作可能な移動式マニピュレーションシステムのRE2を約124億円で買収すると発表

ユタ州に本拠を置くSarcos Robotics(サーコス・ロボティクス)が、同じロボット工学の会社であるRE2を買収する計画を、米国時間3月28日朝に発表した。買収額は1億ドル(約124億円)で、現金3000万ドル(約37億円)とSarcosの株式7000万ドル(約87億円)の混合で支払われる。同社によると、3000万ドルは手持ちの現金で支払うという。これは2021年、同社がSPACを通じて株式公開を決定したことから得たものであることは間違いない。

ピッツバーグに本社を置くRE2は、遠隔操作可能な移動式マニピュレーションシステムでよく知られているが、これは将来の親会社が得意とする分野の1つである。潜在的な余剰労働力になるにも関わらず、RE2の100人を超える従業員は移行期間中も引き続き在籍することになると、Sarcosは述べている。その中には、CEOのJorgen Pedersen(ヨルゲン・ペダーセン)氏も含まれており、同氏は合併後の新会社のCOOに就任する予定だ。

「RE2のチームは、Sarcosの一員となり、インテリジェントロボットシステムの開発と採用を加速させることを楽しみにしています」と、ペダーセン氏はリリースで述べている。「特に熟練労働者の不足が深刻化している現在、世界中でロボット技術は、複雑で時に危険な作業をともなう労働者の仕事のやり方を変えつつあります。両社が統合することによって、Sarcosはより幅広い顧客層に向けてさまざまなロボットソリューションを提供できるようになります」。

画像クレジット:RE2

現在、産業および防衛(つまり軍事)用途に特化しているSarcosの製品ラインナップは、今回の買収によって拡大することになる。その中には海中や水中での用途や、ロボット産業にとって大きく可能性が開かれている医療市場も含まれる。おそらく、買収完了後には提供する製品の統合が行われるだろうが、Sarcosは今回の移転により、エンジニアリング部門の人数が実質的に2倍になると言及している。

「今回の買収により、補完的かつ相加的な製品群を持つ革新的な企業がSarcosファミリーに加わり、顧客のニーズに対応したより幅広いソリューションを提供できるようになります」と、SarcosのKiva Allgood(キヴァ・オールグッド)CEOは述べている。「また、これによって私たちは、医療や海底など新しい産業へ向けた製品提供の拡大、ロボティクス専門家チームの深化、非構造化環境で使用するAIや機械学習技術の開発推進が可能になります」。

この買収は、第2四半期中に完了する予定だ。

画像クレジット:RE2

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

AIを使って道路補修が必要な箇所を特定するパイロット事業を米ユタ州で実施

朝、職場への通勤運転中に道路に穴があるのに気づいたり薄くなった車線を目にした場合、そうした欠損は誰かが地元の交通当局に苦情を申し立てて問題を指摘するまでなくならない。ユタ州拠点のスタートアップBlyncsy(ブリンクシー)は当局がそうした苦情に先回りして問題に対応するのをサポートしようとしている。

運動とデータインテリジェンスの会社である同社はPayverというAIを活用したテクノロジーを展開する。Payverは交通当局に、どの道路がメンテナンス作業や補修を必要としているか、最新情報を提供するためにクラウドソースのビデオデータを活用する。Blyncsyはこのサービスをコスト削減の価格で、そして長期契約なしで提供している。

ユタ州のDOT(運輸局)がPayverを試験する最初の機関で、6月1日からソルトレイクシティ地域で開始し、長さ計563kmの道路をカバーする。Blyncsyは数週間以内に他の州で実施するパイロット事業を発表する。

行政当局は通常、新しいテクノロジーを受け入れるのが遅い。米運輸省はスマートシティと高度な運輸オプションのための公的資金と民間資金に2億5000万ドル(約275億円)超を使ってきた一方で、そうした取り組みの大半は都市の公共交通をより地球に優しく効率的なものにすることに偏りがちだ。Blyncsyの創業者でCEOのMark Pittman(マーク・ピットマン)氏は、非効率的な道路メンテナンスは安全でないばかりでなく、より多くの二酸化炭素排出を引き起こすと主張する。

「Payverのインスピレーションは、ユタ州DOTのエグゼクティブディレクターが米国で最初に道路に関する状況をリアルタイムに把握する能力を持つという目標を立てた2017年に得ました。そしてその問題を解決するために取り組んできました」とピットマン氏はTechCrunchに語った。「一般の人が問題の把握に関わる必要がないよう、DOTは何が起きているのか、いつ起きるのかを自動的に知りたいのです。道路脇に瓦礫があったり停止標識がなくなっていたり、あるいはラインを引き直す必要があるとき、運輸局は人々が電話をかけて苦情をいうことなく、あるいは事故を起こすことなくどうやってその事実を把握するでしょうか」。

BlyncsyのPayverテクノロジーはあらゆるHD画像とビデオをNexarダッシュカメラなどさまざまなソースから集め、顧客に結果を提供するために機械ビジョン使ってデータセットを分析する。交通当局はそうした洞察をダッシュボードフォーマットで利用できるが、Payverは補修作業の優先順位を決めるメンテナンス管理ソフトウェアも統合している。

ユタ州DOTのパイロット事業では、Payverはまず自動車走行環境の基本要件である塗装ラインにフォーカスするが、舗装の穴、建設バレル、張り倒された標識、日々擦り減るものなどへと対象を拡大する。ユタ州DOTの交通・安全担当ディレクターRob Miles(ロブ・マイルス)氏によると、ユタ州DOTはこのパイロット事業に約9万ドル(約990万円)の予算を充てている。

「現在、我々は2年ごとに道路のLiDARスキャンを行っています。つまり常にデータ集めでそこら中を駆け回っていますが、すべての問題に対応できていません」とマイルス氏はTechCrunchに語った。「我々はまだ市民からの苦情で問題を把握しています。苦情ベースのシステムから、意見ではなく測定可能なデータに支えられたものへと移行できる異なるデータ収集システムを望んでいます」。

ピットマン氏は、横断歩道や安全な自転車レーンの場所に必要な補修の予測によるアクティブなモビリティフォームの最適化は、テクノロジーが高度になるにつれPayverにとって優先事項となると話した。テクノロジーの進化はモビリティにおける平等とインクルージョンをを維持するために重要だ。Payverはまた道路状況での人種的、そして社会経済的ギャップの仲立ちするのもサポートでき、これはDOTが平等なサービスを社会全体に届けるのをサポートする、とピットマン氏は話す。

「(米運輸長官の)Pete Buttigieg(ピート・ブティジェッジ)氏はこのほど、運輸がかつていかに構造的な人種差別とコミュニティの棚上げを助長したかについて語りました。我々が道路を作る方法は往々にして低収入世帯が高速道路近くに住むことをともなうものだからです」とピットマン氏は指摘した。

「道路のメンテナンスでも同じことが言えます。低収入の人々はさほど苦情を言わず、高収入の人は苦情を声にしがちです。しかし低収入のコミュニティの道路の穴の影響は壊れた車軸を意味します。これはその家族が生き残ることができるかどうかを決めることにもなります。高所得者が住むところではそうではありません」。

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:Blyncsyユタ道路

画像クレジット:Blyncsy

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi