体外受精治療の支払いを予測しやすくする英GaiaがAtomico主導のシリーズAで約23億円調達

Gaiaの創業者兼CEOナダー・アルサリム氏(画像クレジット:Gaia)

Gaia(ガイア)は、パーソナライズされた保険や支払いプランなどの製品を使って、体外受精(IVF)による不妊治療のプロセス全体の「リスク軽減」を目指すスタートアップだ。赤ちゃんのためのBNPL(後払い決済)に近いが、少し異なる。

このたび同社は、ロンドンのAtomico(アトミコ)がリードするシリーズAラウンドで2000万ドル(約23億円)の資金を調達した。これまでの投資家には、Kindred Capital、Seedcamp、米国のClocktower Technology Venturesが含まれる。これにより、Gaiaの累計調達額は2300万ドル(約26億5000万円)に達した。AtomicoのパートナーであるSasha Astafyeva(サーシャ・アスタフィエバ)氏は、Gaiaの取締役会に参加する。

保険や支払いプランだけでなく、Gaiaは、臨床データセットに基づいて、適切な治療を提供できるクリニックに加えて、カップルが必要と思われるサイクル数を予測する予測技術を持っているという。

Gaiaの創業者兼CEOであるNader AlSalim(ナダー・アルサリム)氏は、声明でこう述べている。「今日の不妊治療モデルは壊れています。なぜなら、不妊治療を受けたい人と、それを受ける余裕のある人との間の格差がかつてないほど大きくなっているからです。不妊治療を受けようとする人の4人に3人は、経済的な負担が大きすぎるという理由で治療を開始しません。英国と米国では、IVFを必要とする人の7人に1人しかアクセスできない状況で、肉体的にも精神的にも負担の大きい治療へのアクセス、体験、支払い方法を見直す必要があります」。

同氏によると、Gaiaのモデルでは、同社の予測技術の対象となるサイクルで生児が生まれなかった人は、治療費を低く抑えることができるという。そして、出産した人は、治療サイクル全体の費用を月々の支払いに分散させることで、全体の費用計画を立てやすくなる。

アスタフィエバ氏はこう付け加えた。「精子率の低下や晩産化など、さまざまな要因が不妊治療サービスへの需要を高めています。不妊治療に取り組む人が増えている中、経済的な理由だけで治療を断念している多くの家族を支援する上で、Gaiaのサービスは重要な役割を果たすことができるでしょう」。

今回の投資は、Atomicoのコンシューマーパートナーであるアスタフィエバ氏が、Felix Capitalからパートナーとして参加して以来、主導する2回目の投資となる(最初の投資は、LightspeedとのZappのシリーズA)。

Gaiaは、アルサリム氏が妻と一緒に自ら体外受精を利用したことで、治療にかかる費用がいかに予測不可能であるかを実感したのがきっかけとなり、2019年に設立された。

彼はこう語った。「最初の子どもを妊娠するための道のりで、IVFのサイクルを5回、2つの国にまたがる3つのクリニックで行い、5万ポンド(約7800万円)を費やしました。私たちの場合、幸運にも子供を授かることができましたが、ほとんどの人はそこにたどり着くことすらできません。そして、痛みは精神的、肉体的なものだけでなく、経済的なものでもあることに気づきました」。

同氏は、今日、15%の人が不妊治療を必要としているにもかかわらず、2%以下の人しか不妊治療を受けられていないという全体像を指摘している。「当社が解決しようとしている問題は、人々に明瞭な情報と可視性を提供し、経済的な不安を感じることなく安心して治療を受けられるようにすることです。そしてそれ以上に重要なのは、十分なサービスを受けていない人々のために市場を開拓したいということです」。

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

豪Fertilisが体外受精胚培養の自動化に向け約2億円調達

Fertilis共同創業者のジェレミー・トンプソン教授(画像クレジット:Fertilis)

体外受精(IVF)を患者と臨床医にとってよりストレスの少ないものに、そしてIVFをより成功させようと世界の多くの企業が取り組んでいるが、アデレード拠点のスタートアップFertilis(ファーティリス)はその輪に加わった最新の企業だ。

創業2年のFertilisは、超小型医療機器を使って細胞培養を自動化する技術で投資家から支持を取り付けた。香港の大物Li Ka-shing(李嘉誠)氏のベンチャーキャピタルで、Facebook(フェイスブック)やSpotify(スポティファイ)の初期投資家でもあるHorizons Venturesはこのほど、Fertilisの275万豪ドル(約2億円)のシードラウンドをリードした。他の投資家は明らかにされていない。

英国の国民保健サービスによると、2019年に出産に至った体外受精治療の割合は、35歳以下の女性でわずか32%だった。患者の年齢や精子・卵子の質といった要因が、成功率に影響を与える可能性がある。

胚の選別の改善に取り組むスタートアップが相次いでいる。例えば、TechCrunchが取り上げたイスラエル拠点のEmbryonics(エンブリオニックス)がある。生殖生物学者のJeremy Thompson(ジェレミー・トンプソン)氏と連続起業家のMartin Gauvin(マーティン・ゴービン)氏が創業したFertilisは、胚の培養という別の角度からこの問題に取り組んでいる。

体外受精のクリニックは「非常に忙しい場所」であり、専門家は「やらなければならないことすべてについて訓練を受けている」とトンプソン氏はTechCrunchのインタビューで語った。標準的な体外受精のプロセスでは、胚の発育に合わせてシャーレの中で細胞をさまざまな環境に移し替えていく。しかし、採卵からシャーレをラボに運び、胚を生殖器官に入れるまで「うまくいかないことがいろいろある」と同氏は指摘した。

「胚が臨床医に取り出されるたびに、環境は悪影響を受けるのです」とトンプソン氏はいう。「患者の希望や夢は文字通り、臨床医の一挙手一投足にあります」。

Fertilisのソリューションは、特許取得済みの3Dプリントのクレードルに各胚を入れることで、体外受精のプロセスを標準化し、自動化することだ。髪の毛ほどの幅のこの装置により「より人体に近い環境」で細胞を培養することができる、とトンプソン氏はいう。このクレードルはシャーレの上に置かれるため、臨床医は胚を直接扱う必要がない。

生殖技術に関する規制という点で、同社はユニークな立場にある。人間ではなく細胞に作用する医療機器を製造しているため、直面する規制は「一部の国ではもっと簡単なもの」だとゴービン氏は話す。同社は現在、FDA(米食品医薬品局)の承認を申請中だ。

Fertilisが調達した新しい資金は、継続的な科学的開発を支える。2022年後半には、カリフォルニア州の不妊治療クリニックと共同で臨床試験を開始する予定だ。また、欧州やアジアのパートナーとも話を進めており、今後数カ月以内に契約を締結する見込みだ。2023年までには、最初の市販製品を発売することを目指している。

技術的には、Fertilisの粒子サイズの装置は、他の種類の細胞の培養にも使用することができる。受精はスタート地点にすぎない。

「Fertilisの技術は、診断や治療から特定の細胞培養製品の製造に至るまで、幅広いヘルスケア用途に変革的な影響を与えると確信しています」と、Horizons Venturesのオーストラリアを拠点とする投資家Chris Liu(クリス・リュウ)氏は述べた。

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi