現在モバイルノートPCで採用されている最新モバイルCPUというと、Intelの「第10世代Coreプロセッサー」、AMDの「Ryzen Mobile 4000」がある。基本的な特徴についてはすでに掲載してある記事の通りだが、実際の処理性能が気になる方は多いはずだ。
ノートPCの場合、同一スペックのCPUでも、メーカーが設定したTDP(Thermal Design Power。熱設計電力)値や、冷却性能でパフォーマンスが若干異なってしまう。そこで、IntelとAMDのCPUをボディデザインで採用している日本HPのノートPC「HP ENVY x360 15」を借り受け、ベンチマークを実施してみた。
日本HPは、CPUにIntel 第10世代Coreプロセッサー(Ice Lake)を採用した「HP ENVY x360 15(インテル)」と、第3世代Ryzen Mobileを採用する「HP ENVY x360 15(AMD)」を用意している。それぞれ10点タッチ、4096段階の筆圧感知対応の15型フルHD液晶IPSパネルや、タブレット形状にもできる360度回転ギミック、Wi-Fi6などのスペックを備えている最新モデルになる。
「HP ENVY x360 15(インテル)パフォーマンスモデル」(15-ed0026TU)のCPUは、4コア/8スレッド、ベース稼働クロック1.30GHz、最大稼働クロック3.9GHzの「Core i7-1065G7」。また512GB Optane SSD、16GBメモリー(DDR4-3200)などを搭載している。直販価格は税別13万9800円だ。
- 「HP ENVY x360 15(インテル)パフォーマンスモデル」(15-ed0026TU)
- Core i7-1065G7(Ice Lake)搭載。 4コア/8スレッド、ベース稼働クロック1.30GHz、最大稼働クロック3.9GHz
- 直販価格は税別13万9800円
もう一方の「HP ENVY x360 15(AMD)パフォーマンスモデル」(15-ee0020AU)は、8コア/8スレッド、ベース稼働クロック2.0GHz、最大稼働クロック4.1GHzの「Ryzen 7 4700U」を採用。その他の仕様はIntelモデルと同様で、直販価格は税別12万9800円だ。
- 「HP ENVY x360 15(AMD)パフォーマンスモデル」(15-ee0020AU)
- Ryzen 7 4700U搭載。8コア/8スレッド、ベース稼働クロック2.0GHz、最大稼働クロック4.1GHz
- 直販価格は税別12万9800円
物理4コアと、8コアの差や、ベース稼働クロックに700MHzの開きがあるが、最大稼働クロックは近い位置にある。しかも同価格帯になっている2機種で、CPUやiGPU(Integrated GPU。内蔵GPU)の処理能力を見ていこう。
Adobe製品を使ったテストでは、実稼働クロックの差が顕著に出る結果に
「Adobe Photoshop Lightroom」を使ったRAW現像や、「Adobe Premiere Pro」での4K動画編集、編集動画の書き出しなどといったCPUが重要な処理をいくつか行ったところ、Ryzen 7 4700U搭載のHP ENVY x360 15(AMD)パフォーマンスモデルが高速に処理を完了した。
Ryzen 7 4700Uが物理8コアを採用している点に加えて、シングル、マルチコア動作時ともに実稼働クロックが3GHz台と高いことがポイントといえる。
実際、オールコアに高い負荷をかけ、処理時間に大きく影響する「Adobe Premiere Pro」を使った4K動画の書き出し(4K→フルHD解像度、約13分40秒、ソフトウェア処理)に要した時間は、Intel Core i7-1065G7搭載のHP ENVY x360 15(インテル)パフォーマンスモデルが、28分12秒必要としたところ、Ryzen 7 4700U搭載のHP ENVY x360 15(AMD)は24分4秒で完了している。
フリーエンコードソフトウェア「HandBrake」で、約5分間の4K MP4動画をフルHD解像度(プリセット:Vimeo YouTube HQ 1080p60)のエンコードを試したところ、同様の状況となった。
H.265で出力すると、Ryzen 7 4700Uは10分26秒で出力が完了し、Intel Core i7-1065G7よりも11分程度高速だった。
Core i7-1065G7の最大稼働クロックは3.9GHzだが、あくまでもシングル負荷時の数値で、動画エンコードなどのすべてのコアに負荷がかかる際の実稼働クロックは1GHz台だったため、この差はやむを得ないところだ。
CGレンダリング系ベンチマーク「CINEBENCH R20」でシングルコアのCPU処理能力を見る
また、CGレンダリング系ベンチマーク「CINEBENCH R20」で、シングルコアのCPU処理能力(スコア)を見てみた。HP ENVY x360 15搭載のCore i7-1065G7は、ベンチマーク実行中に3.34GHz前後の稼働クロックになり、スコアは「398 pts」を記録した。3.72GHz~4GHz前後まで稼働クロックを伸ばしたRyzen 7 4700Uは「464 pts」のスコアを記録。デスクトップ向けと同じく、モバイル向けプロセッサーも、IntelとAMDのコアあたりの性能差はほぼないといえるようになっている。
冷却ファン非搭載でも運用できる第10世代Coreプロセッサー、冷却機構はマストだがクリエイティブ作業もこなせる第3世代Ryzen Mobile
最新ライトゲームをiGPUで楽しめる第3世代Ryzen Mobile
AMD Ryzen Mobileが内蔵するGPU「AMD Radeon Graphics」は、高パフォーマンスが特徴とされる。そこで実際のゲーム環境での動作を見るため、新たなeスポーツタイトルとして注目を集めるライトFPSゲームの「VALORANT」や、マイクラ好きにオススメなハックアンドスラッシュ&ダンジョンクローラーRPG「Minecraft Dungeons」を試してみた。
すると、Ryzen 7 4700UのiGPU「AMD Radeon Graphics(Vega 7)」では、「VALORANT」で平均フレームレート179.4fpsを叩き出し、「Minecraft Dungeons」でも30fpsオーバーの平均フレームレートになった。
IntelのモバイルCPU(Ice Lake)のうち、Core i7-1065G7が内蔵する最上位iGPU「Intel Iris Plus Graphics(64ユニット)」では、「VALORANT」は平均98.5fpsとゲームプレイを軽快に楽しめるフレームレートだった。ノートPCでカジュアルゲームを満喫するなら、第3世代Ryzen Mobileに注目といえるだろう。