Firefly Aerospace(ファイヤーフライ・エアロスペース)は、Aerojet Rocketdyne(エアロ・ロケットダイン)と手を組むことになった。これは、小規模な新規参入の宇宙スタートアップが経験豊富な伝統的ヘビー級企業と提携するという理想的なかたちだ。Firefly2013年に設立され、小型衛星用の打ち上げ機Alpha(アルファ)を市場に送り出すために、これまでに216万ドル(約2億3500万円)を調達している。
同社は、決定的な意味を持つ最初の打ち上げを、来年の2月から3月の間に予定し準備を進めていると、同社の創設者でCEOのTom Markusic(トム・マルクシック)博士は、今年ワシントンD.C.で開催された国際宇宙会議で発表。同社の成長に関する近況と、FireflyとAerojetとの新しい提携話について語った。
マルクシック氏は、Aerojetのスペースビジネス部門上級副社長であるJim Maser(ジム・メイザー)氏と同席し、AerojetがFireflyに、Beta(ベータ)というわかりやすい名称の次世代打ち上げ機にエンジンを供給すること、その本格的な開発はアルファの打ち上げ後に始まること、そして定期的な商用サービスを開始することを説明してくれた。
ベータは中型の打ち上げ機で、アルファに比べて積載容量が大きく最大積載重量は8.5トンとなる。アルファはFireflyの最初のロケットで、1トンの衛星を軌道に打ち上げることができる。「Fireflyはそのサイズを需要はあるが供給が足りていないスイートスポットに特定した」とマルクシック氏は話していた。
その中間領域は、あまり活用されていない部分でもある。その比較的大きなペイロードを軌道に載せるには大きなエンジンが必要になるからだ。彼らはその解決策を探し回り、AerojetのAR-1エンジンを見つけた。推力50万ポンド(2200キロニュートン)という完璧なソリューションだった。
マルクシック氏とメイザー氏は、一般論として、この業界に参入したばかりのスタートアップや若い企業は、Aerojetのような老舗企業にとって最重要パートナーになると力説していた。Aerojetは1942年に設立され以来、ロケットおよびミサイル業界で貢献してきた。
「早く動くことも、失敗することもオーケーですが、他者の失敗や、自分自身の失敗を繰り返したくはありません」とマルクシック氏は、経験豊富な企業と提携する利点を述べた。「この提携はエンジン供給の合意に留まらず、より広範囲な恩恵をFireflyにもたらす」とマルクシック氏は話している。
「Aerojetは、宇宙空間のための素晴らしい推進装置を揃えています。例えばXR-5です」とマルクシック氏。「これは5kw(キロワット)のホールスラスターで、私たちのOTV(軌道間輸送機)にも、地球と月との間での大規模なミッションに使用する高度なOTVにも使えます。さらに彼らは、他のステージでも利用できる、飛行実績のある提案中の化学スラスターも数多く保有しています」。
Fireflyは、軌道間輸送機を使って、より高度な打ち上げ能力を提供することを計画している。その野心は、打ち上げ機を超えて宇宙空間での製造にまでおよんでいる。それは同社にとって大変に魅力的な事業だマルクシック氏は言う。なぜなら、打ち上げコストを削減する究極の方法は打ち上げコストの必要性を丸ごとなくすことだからだ。Fireflyの最終目標は、その方法を問わずたくさんの商用人工衛星を軌道に載せることだ。そこには山ほどのチャンスがある。しかし現在のところ、同社の最大のチャレンジは目の前にあるもっとも重要なゴールに集中することだとマルクシック氏。
「我が社と同じように宇宙を目指す企業は、少なくとも100社はあります」と彼は言う。「今は、その夢を語る大勢の人たちの中に私たちも紛れています。私は、この会社を通じて、そうした空論家の集団から一刻も早く抜け出て、実際に宇宙で宇宙船を飛ばしているエリート集団に加われるよう精力を傾けています」。
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(翻訳:金井哲夫)