今日(米国時間10/3)、AmazonはVineプログラム〔後述〕以外で販売される商品に対するインセンティブ付きレビューを禁止することを発表した。これはCommunity Guidelinesの大きな変更に当たる。このアップデートは、商品の売り手ではなくAmazon自身が信頼できるレビュワーを選定し、レビューの過程におけるバイアスを取り除くために必要なコントロールを行えるようにすることが目的だという。
Amazonはこれまでも営利目的のレビューを禁止してきた。 実際、金を払って不当なレビューを掲載させていた会社を訴えたことがある。 また商品の売り手だけでなく金を受け取って捏造レビューを書いていた個人も訴えている。しかし、これまでは売り手が商品やサービスそのものを提供することと引き換えにレビューを書かせるのは可能だった。
ただしこの場合、レビュー内に売り手との間にそのような関係があることを明記することが必要だった。ユーザーは販売されるアイテムを無料で、または割引で得られる代償としてレビューを書くことがよくあった。
もちろん理論的には、売り手との間にこうしたアフィリエイト関係があっても公平な意見を投稿するのは可能だ。しかしインセンティブ付きレビューの実態はというと、評価対象の売り手側に圧倒的に有利なバイアスがかかっていた。
これにはいくつかの要素の組み合わせが影響している。まず売り手は批判的なことを書く確率が低いレビュワーを選んでアフィリエイトの申し出をすることができる。逆にレビュワー側では否定的なレビューを書けば今後はこうした有利な申し出を受けることがなそうだと知っている。
全体として、消費者はAmazon Vineの場合でもインセンティブ付きレビューにはバイアスがあると考え、信頼を置かなくなっている。これは単なる「感触」ではなく、700万件のレビューに対する最近の調査によれば、インセンティブ付きレビューの星の数はそうでないレビューをはっきり上回っていることが明らかになった(5つ星評価で、インセンティブ付きは4.74、インセンティブなしでは4.36だった)。
一見すると 0.38という星の数の差は小さいようにみえるが、そうではない。図のようにパーセンタイル(百分位)で表示すれば、54%という中位から一気に94%というトップクラスに順位を押し上げる効果がある。インセンティブ付きレビューは製品をカテゴリーのトップ評価に仲間入りさせる効果がある。
またこの調査によれば、インセンティブ付きレビュワーが1つ星の評価を付ける確率はそうでないレビュワーに比べて12分の1だった。 さらに批判的なレビューを投稿する確率も一般レビューの4分の1だった。
語句どおりの意味では、こうしたレビュワーはAmazonが禁止する金銭的報酬を受け取っていない。しかしインセンティブ付きレビューの存在はレビュー一般の信頼性を大きく損なっていた。インセンティブ付きレビューの参加者は平均232件を投稿していたが、同じアイテムに関して通常の購入者は平均31件のレビューしか書いていなかった。「報酬と引き換えではない」というものの、売り手側は大量の商品を無料ないし割引で配ったはずだ。
Amazonによれば、今後はAmazon Vineに参加している場合を除いて、一切のインセンティブ付きレビューが禁止される。Amazon Vineのインセンティブ付きレビューはこれまでの一般商品のインセンティブ付きレビューとは異なる。Vineプログラムは招待制であり、レビュワーはAmazonによって選定される。またAmazonの目的はまだ十分な数のレビューがついていない新製品や近く発売される製品に関して、信頼できるレビュワーから公平な意見を集めて顧客の参考にすることだ。
Vineのレビュワーに招待されるにははすでに多くのレビューを書き、「役に立った」というリアクションを何度も得ている必要がある。こうしたレビュワーは得意な製品カテゴリーを持っていることが多い。またVineでは売り手側はレビュワーに一切接触することができず、影響を与えることもできない。【略】
今回の変更はすべてのカテゴリーの製品に適用されるが、書籍は例外とされる。Amazonは批評家その他関係者への評価のための献本を従来から認めてきたと述べている。AmazonはVineを消費者にとってさらに有益なものにするアイディアを持っているとしているが、具体的な内容は明かしていない。
Amazonの広報担当者に取材したところによれば、今回の方針変更以前に投稿されたレビューについては、「誇張が著しいなど現在の方針に反すると認められる場合には遡及的に削除されることがある」という。平たくいえば、今後もバイアスがかかっていそうなAmazonのレビューを多数目にするのは避けられないということだ。
Amazonは「本日以降、ベンダーがレビュワーに対して割引を提供することにより評価を操作しようとしたことを発見した場合、法的措置に訴える」と述べている。
画像: Jaap Arriens/NurPhoto/Getty Images
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)