データ活用支援のDATAFLUCTが2.5億円の資金調達、マルチモーダルデータプラットフォーム開発を強化

画像や動画、音声、文書などの異なる様式のデータを統合的に処理する「マルチモーダルデータ」の活用サービスを提供するDATAFLUCT(データフラクト)は11月22日、日本政策金融公庫の融資により2億5000万円を資金調達したことを発表。今回の資金調達は、「新株予約権付融資制度」を活用した融資により実施した。同制度は、新たな事業に取り組み株式公開を目指すベンチャー企業を対象に、融資と同時に日本政策金融公庫が新株予約権を取得することで無担保で資金を供給するというもの。これによりDATAFLUCTの資本性および負債性資金の累計調達金額は6億9000万円となった。

DATAFLUCTは2019年の創業以来、「データを商いに」というビジョンのもと、社会課題の解決を軸に各業界に特化したデータサイエンスサービスを展開。11月時点で公開したサービス数は20を超える。スタートアップの活躍が期待されるESGやSDGsの視点からも新たな課題に取り組み、7月には「脱炭素」を事業機会に変えるアイデアとして、決済データから消費のカーボンフットプリントを可視化するサービスを公開し、事業化に向けた取り組みを進めている。

企業の9割以上の企業がDXに着手できていないという現状の中(経済産業省「DXレポート2(中間取りまとめ)」)、DATAFLUCTは多数の大手企業のDXを支援してきた。今回調達した資金は、マルチモーダルデータプラットフォームサービスを中心とした新規サービス開発および既存サービスの強化、マーケティング強化にあてられる。構造化・非構造化を問わず、あらゆる種類のデータをつなげて資産化し、ノーコード、エンドツーエンドで活用できる環境を提供する「マルチモーダルデータプラットフォーム構想」の実現に向け、新規サービスの投入および既存サービスの強化に順次取り組む予定。

11月下旬には、ノーコードのエンドツーエンド機械学習プラットフォーム(マルチクラウドAutoML)「DATAFLUCT cloud terminal.」をリニューアル。12月中旬には新規サービスとして、社内に散在するデータや外部のオープンデータの集約のほか、非構造化データの構造化などの前処理をAI技術で実行しカタログ化するデータレイク/データウェアハウス「AirLake」(エアーレイク)を提供開始する予定。データ活用支援のDATAFLUCTが2.5億円の資金調達、マルチモーダルデータプラットフォーム開発を強化

今後も、SCM(サプライチェーンマネジメント)のための需要予測プラットフォームサービスやノーコード対話型BIプラットフォームサービスを投入し、オールインワンでソリューションを提供するため事業の強化を目指す。これまでに分析の材料とされていなかったデータを利用したり、データ同士を新たに組み合わせられる環境を提供することで、これまでにない洞察を獲得できる「データの資産化」を推進するサービスを継続的に開発し、専門知識や技術の有無にかかわらず利用できるUI/UXの採用によってデータ活用人材の拡張を図りたいという。

街の「にぎわい」など任意エリアのKPIを可視化しSNSトレンドと組み合わせ変化要因を示唆する「clarea」提供開始

データサイエンスで企業と社会の課題を解決するDATAFLUCTは6月15日、エリアに関連するデータを活用し「にぎわい」などのエリアKPIを可視化・モニタリングし、SNSなどのトレンドを掛け合わせることでその変化の要因も示唆する「clarea」(クラリア)の提供開始を発表した。

現在、「魅力的な街づくり」は、生活者、街の運営を担う企業や自治体の双方にとって重要なテーマとなっている。そのため、ディベロッパーや鉄道会社、自治体などは、街の魅力を創出するためにエリアに対して独自のKPIを設定し、施設建設、テナント誘致・イベント開催、交通改善など様々なエリアマネジメント施策を展開している。

しかし、エリアマネジメントの領域においては、関連するデータの膨大さや煩雑さから、KPIの定量把握から施策の評価・検証まで、データ活用が進んでいないのが現状という。

そこで、データサイエンスで企業と社会の課題を解決することを目指すDATAFLUCTは、ビッグデータをもとに、エリア独自のKPIや施策の効果、課題を可視化し、街づくりに関わる企業や自治体がデータドリブンな意思決定をするためのツールとしてclareaを開発した。同サービスは、都市のサステナビリティをテーマに同社が開発を進めるサービス群『DATAFLUCT smartcity series.』(データフラクト スマートシティシリーズ)の1つとしている。

また同サービスは、デジタルガレージが運営するアクセラレータープログラム「Open Network Lab Resi-Tech」を通し、ディベロッパー複数社との共創で開発を進めているという。現場担当者のニーズを基に、「15分単位での細やかな時系列比較が可能な人流分析」「人流の変化に影響を与えた要因の推定」など、施策を細かに分析する機能も搭載した。

clareaは、主な機能として人流分析・回遊分析・インサイト分析を搭載しており、ダッシュボード上の操作で、エリアマネジメント施策の評価・検証が可能だ。単一のデータによる分析ではなく、複数のデータを掛け合わせることで「いつ、どこに、どのような人が、なぜ増えたのか」という要因分析までカバーし、データドリブンな意思決定をサポートする。

エリアのにぎわいを把握するのに役立つデータは、人流データ(GPS)、IoTデータ(カメラなど)、購買データ、SNSデータ・POIデータなど多数あるものの、それらを自社で収集・蓄積することは難しく、異なる形式のデータを組み合わせて分析するには高度な技術が必要という。そこでclareaでは、データ分析サービスを幅広く展開するDATAFLUCTの知見をもとに、データ活用に関する知識のない場合でも直感的に操作でき、必要な情報を得られるようデザインしているという。

また、にぎわいの重要要素である人流・回遊の状況をマップに表示し、グラフを用いた時系列比較(エリア・時間帯)が可能。変化が気になるポイントについて、SNSデータを活用したインサイト分析機能により、人流の増減をSNSのトレンドワードと紐付け「なぜ人流が変化したのか」要因の推定や、施策の名称を指定して「その施策がどの程度/どのような文脈で話題になったか」を表示する「イベントの効果推定」が可能としている。

今後DATAFLUCTでは、自社データのインポート機能や社内共有機能、エリア内の決済情報の時系列分析など、エリアマネジメント施策のクオリティをさらに向上させる機能の追加を予定しているという。にぎわい以外のエリアに関する他のテーマもカバーし、観光・防犯/防災・モビリティ・サステナビリティ・エネルギーなど多面的にエリアのKPIを可視化するサービスとしての展開も計画しているそうだ。

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カテゴリー:人工知能・AI
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「多くの企業は、データを会社の中で腐らせてしまっています」。そう話すのは、データサイエンスビジネスを展開するDATAFLUCT(データフラクト)CEOの久米村隼人氏だ。同社は2021年4月20日、東京大学エッジキャピタルパートナーズよりシリーズAで3億円の資金調達を行ったと発表した。

埋もれているデータに「価値」を与える

DATAFLUCTは、企業がもつデータを最大限に活用するためのさまざまなサービスを提供している。企業に「埋もれているデータ」と、同社が保有する外部データや機械学習アルゴリズムを組み合わせることで、新しいインサイトを創造する。

同社が提供するサービスの1つは、大型スーパーの新規出店候補地を探すサポートだ。これは、クライアントであるスーパーの過去の出店履歴や売上データなどを取得し、立地条件を当てはめるという手法をとる。例えば、駅からの距離・フロアの面積・周辺エリアの人流・近隣にある学校や企業など、200から300ポイントにおよぶデータをAIに学習させる。これにより「○○の条件下では売上は○○」といった推測を行い、新規出店の場所を決定していく。

画像クレジット:DATAFLUCT

久米村氏は「もちろん、実際に出店してみないことには正確な売上げはわかりません。例えば、周辺に橋があると人の流れが大きく変わったり、ライバル店の商圏に影響されたりなど、科学できない部分はある。でも私達が大切にしているのは、『ダメな選択肢を削る』ということです。仮に毎月100件の物件を検討するときに、そもそも商機がないところをあらかじめ除外できるサービスは、企業にとって非常に大きいインパクトをもたらします」という。

同社の事業領域は、不動産にとどとどまらない。メディア企業向けに「さまざまな媒体での広告出稿の効果」をクリック1つでビジュアル化するツール。食品メーカー向けに「油を変える最適なタイミング」を示すツール。物流会社向けには「最も効率よく配送を完了できる道順」を示すツールなど、多岐にわたる業界にDXソリューションを提供している。

同時多発的にプロダクトをローンチ

しかし「データを活用したDXソリューション」は、DATAFLUCTが展開する事業のほんの一部にすぎない。同社は創業から約18カ月間でモビリティ、スマートシティ、EdTech、スマートグリッド関連など13プロダクト(SaaS)を矢継ぎ早にローンチ。これは、同社が各ユニットに独立採算制を採用するスタートアップスタジオだからこそ実現した。一方で「JAXA認定ベンチャー」としての顔も持ち、衛星データ解析を活用したSDGs事業を意欲的に行う。久米村氏自身も「うちは常識から逸脱していることが多すぎて、VCにも理解されにくい」と苦笑いだ。

それにしても「なぜさまざまな業界に同時に参入する必要があるのか?」と思われる読者がいるかもしれない。久米村氏はこう説明する。「私達のサービスは、そもそも社会課題を解決するという出発点から始まっています。例えば、食品廃棄ロス問題を解決したいとすると、生産者(農家)、製造業、卸売、スーパーなど、サプライチェーン上のすべての課題を解決する必要がある。私達は、これらをデータで統合することで解決に導きたいと考えています。例えば、衛星データを活用した野菜の収穫支援から、店舗での需要予測アルゴリズム、ダイナミックプライシングの導入まで、包括的にデータを活用することでサプライチェーンの効率化を実現したい。そのために、これまで同時多発的にプロダクトをローンチし、全領域を攻めてきました」。

データ活用を通じて社会の変革を目指す

DATAFLUCTのCEOである久米村氏は、これまでベネッセコーポレーション、リクルートマーケティングパートナーズ、日本経済新聞社などを渡り歩き、データ分析を活用した新規事業開発を主にてがけてきた。「私自身、DXコンサルで約70業界に携わり、立ち上げた新規事業は30を超えます。物流のことを聞かれてもおおよそわかるし、ヘルスケアのことを聞かれてもおおよそわかる。顧客が言ったことに対して、すぐに打ち返せるパワーが強みだと思っています」。

独立のきっかけは、同氏が会社員時代に持っていた不満だった。「ハッキリいうと、コンサル会社に金を払いすぎていると思ったのです。彼らの働きを見て『自分だったらもっとうまくできるのではないか』と」。それでも独立後は、新型コロナウイルスの影響により、リアル店舗を対象とした初期のプロダクトから一時撤退を余儀なくされた。しかし、データ活用のニーズを持つ多様な業種の企業から声がかかり、DXソリューションの提供へとピボットしていくうちに事業が軌道に乗った。

今回調達した3億円の主な使途は人材採用だ。久米村氏は「2年後の上場を目指しています。でも2年だとできることは少ない。お金稼ぎはできるかもしれないが、社会の変革はできない。5年先、10年先にはじめてDATAFLUCTの価値がでてくるのかな、と考えています」と話す。

「21世紀の石油」ともいわれるデータ。もし今後、多くの企業が社内に眠ったままだったデータの価値を掘り起こすことができるようになれば、DATAFLUCTが目指す社会課題の解決も夢物語ではなくなるだろう。

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