壁を登る点検ロボを手がけるNZと米の2社が資金調達

ニュージーランドのクライストチャーチを拠点とするInvert Roboticsのロボティクスチームが、点検用のロボットを商品化した。このロボットはトレッドについている小さな吸盤と特殊な薬品を使って文字通り壁を登ることができるように作られている。

一方、クライストチャーチから遠く離れたピッツバーグのGecko Roboticsも同じ課題に取り組んでいて、強力なマグネットを使った点検ロボを手がけている。

両社とも最近新たに資金調達し、InvertはFinistere VenturesYamaha Motor Ventures & Laboratory Silicon Valleyなどを含む投資家から880万ドルを調達した。一方のGecko Roboticsも、米国証券取引委員会に提出された書類によると、昨年6月に始まった資金調達が900万ドルで間もなくクローズする。

食品に特化した投資ファンドFinistere Venturesにとって、壁を登るロボットのメリットは言うまでもなくサプライチェーンの問題を検査するのに使えることだ、と同社の共同創業者でパートナーのArama Kukutai氏は説明する。

「食品や飲料を安全で病原体のない環境で保管して輸送できるようにすることから、農業薬品を含む容器やプラントでの破滅的な失敗を回避することまで、グローバルの食品サプライチェーンにとってInvert Roboticsの価値は紛れもなくものすごいものだ。そして、応用の可能性はほぼ無限だ」とKukutai氏は声明で述べた。

投資家や2社の起業家によると、食品、化学、航空産業におけるプラントの点検は危険であり、細心の注意が必要で、企業が重要な機能の質をいかに確保するかという点でオートメーションはその改善に大きく寄与する。

「産業サービスのテクノロジーにおいては事実上、何十年もの間イノベーションがなかった」とFounders FundのパートナーTrae Stephens氏はTechCrunchに対し語った。「Geckoのロボットは、重要なパーフォーマンスデータを集めたり、起こりうる致命的アクシデントを防いだりするのに施設を閉鎖しなければならない時間を大幅に減らす。彼らがつくっているものに対する需要は莫大だ」。

Geckoはロボットが表面にくっついていられるよう強力なマグネットを使用する一方で、Invert Roboticsはロボットが壁をのぼれるよう強力な吸盤を活用している。

「プランジャー(吸引式下水掃除棒)は表面にぴたりとくっつき、表面から離すのはかなり困難だ」と最高業務責任者のNeil Fletcher氏は語る。「我々はそのコンセプトを取り入れ、真空状態をなくすことなく表面をスライドできるようにした。真空の維持と、ユニットがスライドできるだけの空気を真空状態に送り込むという絶妙なバランスを取りつつ、摩擦を減らすために特殊な薬品で吸盤をコーティングしている」。

農業と化学の分野におけるテストマーケットは10億ドル規模だとFletcher氏は語る。そして同社はすでにDow ChemicalBASFといった企業と協業していて、設備が使用に適しているかといった点検にロボットを活用している。

ヤマハはこうした種類のロボティックスシステムの開発に戦略的関心を寄せていて、シリコンバレー発の同社の最先端技術・投資の部門が出資した。

「作業の効率と安全性の向上を改善するための高度なロボットの開発をサポートするというヤマハの長期的ビジョンの一環として、我々の投資委員会にはInvert Roboticsのテクノロジーとバリュープロポジションにポジティブな印象を受けた」とYamaha Motor Venturesのオーストラリアとニュージーランドでパートナーを務めるCraig Boshier氏は話した。「重要なこととして、異なる環境や産業でのロボティックテクノロジーの応用は専属チームによってサポートされるということが挙げられる。適切な資金注入でもってInvert Roboticsはグローバルマーケット拡大で成功を収める」。

ピッツバーグのGecko Roboticsも似たような野望を抱えていて、投資家にはMark Cuban氏、Founders Fund、The Westly Group、Justin Kan氏、Y Combinatorが含まれる。

2012年以来、同社はボイラーの壁をスキャンするための超音波トランデューサーと高解像度カメラを使ったテクノロジーの開発に取り組んでいる。

何十億ドルという需要や、救命につながる可能性のある応用法を考えた時、投資家がこうしたマーケットに関わろうとするのはなんら不思議ではない。

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(翻訳:Mizoguchi)