世界的なパンデミックが発生したとき、Medium(ミディアム)でプロダクト部門を担当していたRussell d’Sa(ラッセル・ダサ)氏は、全員が自宅で仕事をしているため、企業カルチャーがインパクトを受け、社員間の交流にも大きな影響を与えていることに早くから気づいていた。
「なくなったのは、同僚同士の会話や、金曜日の夜に飲むこと、一緒にコーヒーを淹れて飲むことなどでした」とTechCrunchに彼は語った。「職場で友人になるということは、最終的にどのようにコラボレーションするかを下支えします」。
2020年、Clubhouse(クラブハウス)がアルファ版で公開されたとき「すべてを変える新しい参加型メディア」として話題になったが、ダサ氏は仕事仲間のためにもそのようなものを求めていたという。
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彼は、ClubhouseアプリがAgora(声網)を利用していることを知り、自分のアイデアを実現するためのデスクトップアプリの開発を始めた。ダサ氏がこのアプリをリリースすると、すぐに1300社がウェイティングリストに登録した。同氏は最終的にこのアプリを棚上げにしたが、企業は「この新しい環境では何でも試してみたい」と考えていることがわかった。
実際、ある大手ソーシャルメディア企業からは、傘下の1000人規模の企業でそのアプリを使ってみないかと持ちかけられたが、Agoraのセキュリティが心配だったという。ダサ氏は代替手段を検討し始めたが、多くは会議に特化したもので、ネイティブモバイルに対応する柔軟性を備えていなかった。
そこで生まれたのがLiveKitだ。共同設立者のDavid Zhao(デビッド・ザオ)氏を含むダサ氏のチームは、WebRTCと呼ばれるリアルタイムのオーディオ・ビデオ体験をアプリケーションで構築しスケーリングするための、無料でオープンソースのインフラを開発した。
7月にこのツールをリリースした同社は、米国時間12月13日、Redpoint Venturesと、Justin Kan(ジャスティン・カン)氏、Robin Chan(ロビン・チャン)氏、Elad Gil(エラッド・ギル)氏などの個人投資家からの支援を得てシードラウンド700万ドル(約7億9000万円)を調達したと発表した。
公開からわずか5カ月の間に、同社のツールはGitHubでトレンドを生み出し、ゼロから始まって約2000スターを獲得したとダサ氏は述べている。また、メタバースの話題が増えている中で、製品の市場適合性も証明された。
「新型コロナは私たちの世界を、オンラインで生活し、ネット上で結婚式を挙げるような世界に変えました」と彼は語る。「私たちはすでにメタバースの中で生活しており、それは2年以上前から続いています」。
同氏は、会議通話は未来のものではなく、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)によってより現実のように感じるものになると考えている。しかし、課題は、インターネット上でいかにすばやくデータを移動させ、カメラやマイク、3Dオブジェクトに対応したインフラを持つかということだ。
LiveKitによるライブオーディオ・ビデオ体験の初期のユースケースはイベント会場のカメラだったが、あるドローン会社もこの技術を使っている。LiveKitを利用したプロジェクトが100件を超えるなど、採用が進むにつれ、ダサ氏は、ベンチャーキャピタルの支援を受けてチームの規模を拡大することを決意した。立ち上げ当初は3人だったチームが今では15人に増えたという。
現在、同社は収益を上げていないが、分析、遠隔測定、スパムや不正使用の監視、音声転写、翻訳、音声や顔の機能など、基本的な機能以外にも提供されるサービス、新しいツールが登場すれば収益を上げることができるだろう。
目下、LiveKitチームは、ツールの信頼性と柔軟性を高め、デベロッパーや彼らが構築するユースケースへのアクセシビリティを改善するための技術開発に注力していきたいと考えている。
「目標は、ネットワークの状態が悪くても動作する方法を見つけることです」とダサ氏はいう。「当社は大小さまざまな企業と話をしていますが、最大手の企業は、100万人規模のイベントをすべてインタラクティブに行うための大規模なスケールを求めています」。
画像クレジット:NurPhoto / Contributor / Getty Images
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(文:Christine Hall、翻訳:Aya Nakazato)