Spotifyが買収したPodzの技術を活用した新たなポッドキャスト発見機能をテスト導入

Spotify(スポティファイ)は2021年夏、ポッドキャストへの投資を加速させるため、ポッドキャスト発見プラットフォームであるPodz(ポッズ)を、証券取引委員会の提出書類によると約4940万ドル(約61億円)で買収した。現在、Spotifyは、ユーザーが気に入るかもしれない新しいPodcastを見つけるのを助けるために、このスタートアップの技術を活用した機能をテストしていることを、同社は認めた。

Podzはもともと「初のオーディオニュースフィード」と呼ぶもので、ポッドキャスト発見の問題を解決しようと試みていた。つまり、これは、TikTok(ティックトック)のようなソーシャルアプリで普及している形式と同様に、さまざまな番組からの60秒のオーディオクリップを、縦方向のフィードでスクロールしてユーザーに見せるものだった。同社の技術が興味深いのは、フィード用のクリップを独自に制作するために、ポッドキャストの制作者に頼らないことだ。代わりに、10万時間分の音声を学習させた機械学習モデルを使って、紹介するクリップを自動的に選択するのだ。

当時、Spotifyはこの買収を、アプリ上でより優れた、よりパーソナライズされたポッドキャスト発見体験を構築し、拡大するための手段であると宣伝していた。今回のテストでは、そのような機能がどのようなものかを初めて見ることができる。

プロダクトデザイナーであり、テクノロジーのアーリーアダプターでもあるChris Messina(クリス・メッシーナ)氏は、Twitter(ツイッター)アカウント@SleepwellCapによって初めて明らかになったこの機能のテストについてツイートし、動画を投稿した。ここで、新しい体験が実際に行われている様子を見ることができる。

専用の「Podcasts」ボタンをクリックすると、垂直方向のフィードに移動し、オーディオクリップを再生しながら番組のカバーアートを見ることができる。また、音声クリップは聞きながら文字起こしされ、クリップ内の単語が強調表示される。再生ボタンで番組を続けて聴くことができ、さらに「+」ボタンでアプリの「Your Episodes(あなたのエピソード)」リストにエピソードを追加することができる。

これはあくまでテストであることを考えると、この機能は一般公開前に変更される可能性があることに注意する必要がある。また、この機能は、Spotifyが、このようなオプションをユーザーがどのように利用するかを理解し、今後の製品開発に役立てるためのものである可能性もある。つまり、あなたのSpotifyアプリで、すぐに同じようにオーディオクリップの縦型フィードが見られるという保証はない。

Spotifyは、この体験を通じてPodzの技術をテストしていることを確認したが、発売日や計画については明言しなかった(Podzが機械学習で動いていることを考えると、Spotifyはローンチ前にもっとデータを集めてサービスを改善したいのかもしれない)。

「Spotifyでは、ユーザー体験を向上させるために、日常的に多くのテストを行っています」と、広報担当者は述べた。「これらのテストの中には、私たちの幅広いユーザー体験への道を開くことになるものもあれば、重要な学習としてのみ機能するものもあります。現時点では、これ以上お伝えすることはありません」。

Podzは、人々が好きそうなPodcastをもっと見つけられるようにするための新しい方法を構築しているいくつかのスタートアップの1つだった。多くのPodcastは30分以上あり、番組の内容やホストの個性をすばやく簡単に把握することが難しく、この新しい番組の発見という課題を克服するのは困難だった。

Podzの解決策は機械学習技術に頼ることだったが、他のスタートアップも異なるアイデアを追求している。例えば、Kayak(カヤック)の共同創業者であるPaul English(ポール・イングリッシュ)氏の新スタートアップであるMoonbeam(ムーンビーム)は、TikTokにヒントを得たアプリで、機械学習技術をブレンドした人間による編集キュレーションに依存している。垂直方向のフィード形式は、ポッドキャストに隣接するアプリでも使われている。たとえば番組というより音声ストーリーに近い99秒の音声クリップを提供するRacket(ラケット)や、Facebook(フェイスブック)のSoundbites(サウンドバイト)でも使われている。

画像クレジット:Bryce Durbin

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(文:Sarah Perez、翻訳:Yuta Kaminishi)

Spotifyがポッドキャスト発見プラットフォーム「Podz」を買収

ポッドキャストが大流行しているが、聴きたいポッドキャストを見つけ出すのは難しいものだ。Spotify(スポティファイ)は6月17日、ポッドキャスト発掘にかかる問題を解決しようとしているスタートアップであるPodz(ポッズ)の買収を発表した。

「Spotifyでは、我々は世界で最高の(そして最もパーソナライズされた)ポッドキャストディスカバリーのエクスペリエンスの構築と展開に投資しています」と同社は述べた。「Podzのテクノロジーは発見を促進し、リスナーに正しいコンテンツを正しいときに届け、そしてこの部門の成長を世界中で加速させるためのSpotifyの集中的な取り組みを補い、発展させます」。

ポッドキャストは通常30分ほどの長さであり、リスナーは新しい番組をブラウズするのは難しい。ポッドキャストのエピソードを視聴するのは、新しいアーティストの曲を試すほどに簡単ではないのだ。そのため、Podzはユーザーにさまざまな番組の60秒のクリップを提示する「初のオーディオニュースフィード」と呼ぶものを開発した。ポッドキャスト配信者は往々にして、自身のソーシャルメディアアカウントでの宣伝に使うクリップを制作するためにHeadlinerのようなアプリを活用する。Podzはそれと同じアイデアを踏襲している。しかしポッドキャスト配信者が番組をどのように宣伝するかを手作業で行うのに代わって、Podzは機械学習モデルを使ってクリップを選ぶ。この機械学習モデルは、ジャーナリストやオーディオエディターの監修のもとに10万時間超のオーディオを使って訓練されている。

画像クレジット:Podz

Spotifyに買収される前、PodzはプレシードラウンドでM13、Canaan Partners、Charge Ventures、Humbitionなどから250万ドル(約2億7560万円)を調達した。Katie Couric(ケイティ・クーリック)氏、Paris Hilton(パリス・ヒルトン)氏といったセレブも投資した。

「平均的なポッドキャストリスナーは7つのポッドキャストを購読していますが、Podzでは30近いポッドキャストをフォローしています」とM13のゼネラルパートナーLatif Peracha(ラティフ・ペラチャ)氏は2021年2月に電子メールでTechCrunchに語った。「初期のサインを受け、チームがこの分野で変革的なプロダクトを構築できると我々は楽観的にとらえています」。

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買収は、ポッドキャスティングマーケット、概してオーディオエンターテインメントを独占しようというSpotifyの野心を示すものだ。ちょうど6月16日に同社はClubhouseのライバルとなるライブオーディオ「Greenroom」をデビューさせた。ポッドキャストサブスクからの収益の促進という点では、SpotifyとAppleは互角だ。4月にAppleはポッドキャストサブスクへの進出を発表している。そしてその翌週、Spotifyは2月に予告していたサブスクプラットフォームの展開を開始した。Appleは初年度にポッドキャスト売上の30%を徴収すると述べたが、この割合は2年目に15%に下がる見込みだ。一方、Spotifyのプログラムは2023年までクリエイターから手数料を徴収せず、その後は5%となる。

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ポッドキャストクリエイターはサブスク売り上げの30%の徴収より5%に降参した方が利益が大きいと即決できるが、リスナーは最高のユーザーエクスペリエンスを提供するアプリに群がるだろう。そしてポッドキャスト発見へのSpotifyの投資が報われるのなら、ポッドキャスティング分野で長らく優位性を維持してきたAppleにとっては由々しき事態となる。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:SpotifyポッドキャストPodz買収機械学習

画像クレジット:Spotify

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Nariko Mizoguchi

長いポッドキャストを60秒のパーソナライズされた「音声ニュースフィード」に変えるPodz

PodzはM13、ジャーナリストのKatie Couric(ケイティ・クーリック)氏、Paris Hilton(パリス・ヒルトン)氏などの投資家から支援を受けて、ポッドキャストの発見という問題を解決しようとしている最新のスタートアップだ。

米国では1億人がポッドキャストを聞いていますが、勢いを増しているとはいえ、オーディオが日常生活の一部になるようなクロスオーバー行動はまだ見られません」とCEOのDoug Imbruce(ダグ・インブルース)氏は述べている。「それは、ポッドキャストを発見して消費するという体験が古いからだと考えています。まさに、1997年にウェブブラウジングしたような感覚です」。

インブルース氏の名前は長年のTechCrunch読者には馴染みがあるかもしれない。彼は以前、2010年のTechCrunch Disruptでスタートアップ戦線を制したQwikiのCEO(Cloudflareが次点の1つだった)であり、同スタートアップは数年後にYahooに買収された

同氏も認めているように、Qwikiはオンラインメディア消費を再構築するという彼の期待には決して応えられなかったが、その「機械で作成されたメディア」のビジョンは、彼がPodzによって切り拓いていきたいと思っている未来の「一端」を垣間見せてくれたという。

このスタートアップが解決しようとしている問題は非常に単純だ。ポッドキャストは多くの場合、30分または60分以上の口語音声で構成されているため、それらを聞くするのは難しく、新しいものを発見したとしても、それは通常、口コミでの推薦や不便な検索ツールを介して行われている。

Headlinerのようなツールは、ポッドキャスターがソーシャルメディア上の短いクリップでコンテンツを宣伝することを簡単にするが、Podzはその作成プロセスを自動化し、それらのクリップをリスニング体験の中心にする。

画像クレジット:Podz

Podzモバイルアプリでは、ユーザーは60秒のポッドキャストクリップで構成された、同社が「初の音声ニュースフィード」と呼ぶものを視聴することができる。これらのクリップは、各ポッドキャストの最高の瞬間をハイライトするように設計されており、現在ユーザーが購読しているポッドキャストよりもはるかに幅広いタイトルを簡単に試せるようになっている。それぞれのクリップは独立しているが、より深く掘り下げたい場合は、全エピソードを保存しておいて後で聞くこともできる。

これらのクリップは自動的に作成され、インブルース氏によると「Podzプラットフォームの鼓動している心臓部」は、「ポッドキャストの最も興味をそそる部分を識別する」機械学習モデルだという。このモデルは、ジャーナリストやオーディオ編集者と相談し、10万時間以上のオーディオを使って訓練された。

ここでたとえばTC Original Contentポッドキャストの最新の3つのエピソードから選ばれたクリップを見て(聞いて)みよう。「Soul」「The White Tiger」そして「Bridgerton」に対する我々のレビューだ。各クリップはまあまあ自己完結しているように思え、(より雄弁な共同ホストではなく)すべて私に焦点が当たっていたことには少し落胆したが、Podzの広報担当者は、アプリが「最高密度のスピーカーに焦点を当てるためだ」と説明してくれた。

Podzのニュースフィードは、ユーザーの興味に合わせてパーソナライズされている(そして、そう選択した場合、ユーザーがApple Podcastsでフォローしているポッドキャストや、Twitterでフォローしているアカウントを参考にすることもできる)。インブルース氏は、リスナーの行動を観察しながら、時間の経過とともに賢くなっていくはずだと述べている。

同社のチームは時間の経過とともに、ポッドキャスターのためのより多くの創造的なツールやマネタイズツールを導入していきたいと考えていると彼はつけ加えた。「作成されるオーディオの量を10倍に増やし、オーディオの収益化を100倍にすることができると実際に期待しています」とも。

インブルース氏に加えて、Podzの設立チームには、CTOのSeye Ojumu(セイエ・オジューム)氏、デザイン責任者のRasmus Zwickson(ラスマス・ズウィックソン)氏、iOSリーダーのGreg Page(グレッグ・ページ)氏がいる。同社はM13、Canaan Partners、Charge Ventures、Humbitionの他、前出のクーリック氏、ヒルトン氏(自身のポッドキャストを立ち上げる予定)、ABCのThe Trend ReporterのジャーナリストであるMara Schiavocampo(マーラ・スキアヴォカンポ)氏など、著名なエンジェル投資家からプレシード資金として250万ドル(約2億6000万円)を調達している。

「私たちはオーディオの黄金時代を生きていますが、5000人以上の聴衆に到達しているポッドキャストはわずか1%です」とM13のゼネラルパートナーであるLatif Peracha(ラティフ・ペラチャ)氏はメールで筆者に話してくれた。「Podzは既存のオーディオの視聴者を増やすことを計画していますが、本当の焦点は、クリエイターツールを活用して新しいオーディオを増やすことにあるでしょう。すでに、平均的なポッドキャストリスナーは7つのポッドキャストを購読していますが、Podzでは30近くのポッドキャストをフォローしています。初期の段階では、同社のチームはこのカテゴリで変革的な製品を構築できると楽観視しています」。

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タグ:Podzポッドキャスト資金調達

画像クレジット:Podz

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(文:Anthony Ha、翻訳:Aya Nakazato)