ボーカリスト、音楽プロデューサーとして有名なライアン・レスリー(Ryan Leslie)がなんと、ファンに電話番号を公開した。 (915) 600-6978だ。何百万という馬鹿げた着信を集めようとしているわけではない。音楽界で他の誰よりも密接にファンと交流しながら、しかも収益源になる新たなビジネス・モデルの実験だ。
それがシリコンバレーを代表するベンチャーキャピタル、Andreessen Horowitzのベン・ホロウィッツやBetawork他の投資家が150万ドルのシード資金をレスリーのスタートアップ、Disruptive Multimediaに投じた理由だ。 簡単にいえばSuperphone はSMSベースのeコマースと顧客管理のシステムで、レスリーは自らこのサービスをコーディングした。セレブであれクリエーターであれ、ファン向けに販売したいアイテムを持っている人間は誰でもこのプラットフォームを利用できる。
私の取材に対してレスリーは「われわれはアーティスト自身が自分のファンと交流し、関係を築ける方法を作っている。実は今のソーシャル・ネットワークは少しもソーシャルではないと分かった」と語った。
レスリーはR&Bやヒップホップで成功した後、Snoop Dogg、Cassie、Usherといったミュージシャンをプロデュースしたことで広く知られるようになった。
FacebookやTwitterのようなプラットフォームはアーティストがファンと交流するためには確実性に欠ける。しかし生まれたときからモバイル環境にいる世代はメールを使おうとしない。Superphone開発の動機はそういう点にある。なんといっても個人にコンタククトするのに1番確実な情報は電話番号だ。
現在Superphoneは非公開ベータ版で、2700人がプラットフォームをビジネスに利用しているという。ベータ・ユーザーにはリル・ウェイン、ケビン・ジョーンズ、ボニン・ボウといった著名人がいる。利用料金は受信メッセージ数とeコマース支払額の5%で、ユーザーは誰がいつ、何に対していくら支払ったかなどの情報を最大漏らさず保存できる。また個人宛てにカスタム・メッセージを送ってアイテムのプロモーションをすることも可能だ。
「Superphoneにちょっと電話くれ」
Superphoneの仕組みはこうだ。セレブその他のクライアントはまず自分のSuperphone用の電話番号を用意してファンに公開する。ファンがその番号に電話するなり、テキスト・メッセージを送るなり、あるいはオンライン・ストアで何か購入するなりすると、セレブ・ユーザーはSuperphoneを通してファンに個人的なサンキュー・メッセージを送る。このメッセージはファンの発信場所や経歴情報などを利用してセグメントすることができる。
Superphoneはeコマースのプロモーション・ツールであると同時に未来的な電話帳であり、顧客管理データベースの役割も果たす。現在Superphoneはブラウザ・ベースだが、開発チーム数週間後にはモバイル・デバイス向けのネイティブ・アプリをリリースできるとしている。Superphoneのダッシュボードにはグラフ化機能もあり、誰が何を買っているかなどの情報を視覚的に把握できる。
対話を購入に誘導する
レスリー自身のSuperphoneには4万人のファンがいる。今年、ウィーンの古城でニューイヤー・コンサートを開いたとき、レスリーはSuperphoneの顧客管理機能を利用してもっとも高額の支払いをしたファンをヨーロッパに招待した。また1700ドルという高額なチケット200枚を48時間で売り切ることができた。同時に、レスリーは「ライフタイム・アルバム」と呼ばれる音楽サービスを持っており、新曲をリリースするたび1ドルから100ドルの任意の金額を投ずる(プレッジする)ことでファンは誰よりも早く曲を聞くことができる。
このサービスを開発するためにレスリーはCodeacademyのチュートリアルを見ながら2年かかったというが、ミュージシャンとしては大したものだ。スタートアップBevelのファウンダーであり、Andreessen
Horowitzのメンバーでもあるアフリカ系アメリカ人のTristan Walkerの強い推薦があってベン・ホロウィッツの支援を受けることができるようになった。ちなみにホロウィッツは生涯変わらぬ熱烈なヒップホップのファンでもある。投資家の長いリストは以下のとおり。
[MOOR & MOOR AB, Betaworks, Anxa Holding, Donald Katz, Keith Smith, Linda Bernard, Anthony G. Aguila, Base LV Tech, Judge Ventures, Kofi Kankam, Nnemdi Kamanu Elias, Robert T. Melvin, Ryan Babel, Shanti Kandasamy, BPG Fund, Jennifer Byrne, Radiary Creations, LLC, Taj Clayton, RPM, Sherrese Clark-Soares, Mychal Kendricks, Williams Anderson Investments, Monami Entertainment, Galvanize Ventures, and Transmedia Ventures.]
次のステップとしてレスリーは新たにエンジニアを採用して開発チームを編成することを考えている。「人工知能と機械学習を取り入れるのが長期的なビジョンだ。サービスに知能レイヤーを加えることが絶対に必要だ。なんといってもこういうサービスには自然な対話性がいちばん重要な要素だと思う」とレスリーは見ている。
インターネット・スタートアップといえば誰もが広告を収入源と考える中で、ファンにリーチするためのまったく異なるニッチを発見したことは非常にスマートだ。Superphoneを使えばクリエーターは友達に電話する気軽さでファンと交流し、アイテムをプロモーションできる。
LinkedInによればRyan Leslieはハーバード大学で政治学、政府政策(Government)のB.A.を取得している。発音は「ライアン・レズリー」が近い。ここではLeslieのカナ表記として一般的な「レスリー」を採用している。
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)