超薄型軽量でアンビエントパワーで動作、コンピューターとして能力をすべて備えたプロセッサーのWiliotが約222円調達、技術をライセンス供与

Wiliot。このIoTスタートアップ企業は、超薄型かつ軽量型の、アンビエントパワーで動作する、しかし同時にコンピューターとしてのすべてのパワーを持つ新しいタイプのプロセッサを開発した。Wiliotが、その技術やスケールアップを目した戦略に興味があるとする支援者のバックアップを受け、巨額の成長資金を得た形となる。

今回調達された金額は2億ドル(約222億円)で、これは同社が事業を次のステップに進める上でシリーズCを活用した結果であるとされている。今後数カ月、SaaSモデルに向けて変化があるとされ、これについてWiliotは「software as a service」ではなく「sensing as a service」であるとしている。これはAIを利用することでチップを取り付けた対象のさまざまな信号を読み取り、解読することを表しており、同社ソフトウェアの稼働と販売に力を入れていくと考えられる。チップハードウェアについてライセンスモデルへのシフトがあることと同時に行われ、複数のサードパーティによる生産が行われることにもなる。Wiliotによるとチップのライセンス付与についてはすでに複数の契約が結ばれているとのこと。これによりチップのサイズやフォームファクターに新たなバリエーションが形成されることが期待される。

ソフトバンクのViison Fund 2は前回の支援者による融資を受けており、これからの可能性を雄弁に語る。83North、Amazon Web Services, Inc.(AWS)、Avery Dennison、Grove Ventures、M Ventures、Merck KGaAの企業VD、Maersk Growth、Norwest Venture Partners、NTT DOCOMO Ventures、Qualcomm Ventures LLC、Samsung Venture Investment Corp.、Vintage Investment Partners and Verizon Venturesといった華々しいリストを確認することができます。

Wiliotの評価は公開されていませんが、同スタートアップのSVPであるSteve Statler(スティーブ・スタトラー)氏によれば、そのSaaSへの転換と「一致した」ものであるとされている。また、前回Wiliotの資金調達(2019年の3000万ドルのシリーズB)について私たちが先にお伝えしたとき、情報源によれば、評価額は1億2000万ドル(約133億円)であったとされていた。ただし、当時と現在の間に、シリーズBが7000万ドル(約78億円)に拡大されたことで、クローザーの投資前企業価値も2億ドルとなったことが示唆されます。単純な計算の上では、同社評価額は4億ドル(約445億円)以上になっているのではないかと考えられるが、SaaSへの注力、また同技術のライセンス付与への関心によっては、それ以上の金額となる可能性も考えられる。

現在までのところ、同社はその事業開発を同チップのバージョン1(Wiliotの自社制作のもの)に基づいて行っている(バージョン2は9月に公式発表となると考えられており、サードパーティが制作するチップになると予想される)。Wiliotのチップは、スタトラー氏の言葉を借りるなら、RAMやROM、センサー、Bluetooth、ARM CPU、メモリ、安全な通信能力、そのすべてが空気中のアンビエントパワー(ラジオ波)によって動作する、切手の大きさと薄さの印刷可能なコンピュータであるとされている。RFIDタグのように薄く、非常にパワフルかつ便利なものだ。

スタトラー氏は、Wiliotには30の支払い顧客が存在しており、これまで「数十万」ものこうしたチップが利用されていると述べている。しかし、IoTにおけるそのスケール(および機会)は、数十万という数字を鑑みても、そのすべては、完全にデプロイされているわけではなく、限定的なテストに留まっている。

スタトラー氏によれば、そのような顧客のうちの1人に、ワクチンを作る大手製薬会社(名前非公開)があり、同チップをそのワクチンの瓶の一部に取り付け、温度や使用量、希釈をモニタリングして、将来的なワクチンにシステムの利用が可能であるように計画しているとされています。これは今、新型コロナウイルス(COVID-19)によるパンデミックと戦う上でのワクチンの重要性が認識されたからこそ、特に関連性の高い事例であるといえます。

Wiliotが関連する他の業界には、消費財メーカー、家具メーカー、(RFIDの導入が進んでいる)アパレル業界などがあります。

バージョン2になると、そのアンビエントパワーに関連する部分も拡張される。バージョン1では、同チップはすでに空気中にあるラジオ波からのエネルギーを活用することができ、波をより均等に広げることができるようになる比較的安価なデバイスを活用することもできた。現在、このブースターのレンジは1〜3メートルであるとスタトラー氏は述べており、バージョン2は「大きなブレイクスルー」によってこれがさらに拡張され、ブースターをより興味深いオプションと考えてもらうことができるようになるとしている。WiliotはSigfoxとも提携していることで知られており、同社はアンビエントパワーを活用する上での革新的方法を開発している会社でもあるため、これは注目かもしれない。

CEO兼共同設立者であるTal Tamir(タル・タミール)氏は、2019年に次のように語っています(残念ながら、今回はインタビューの時間が取れなかった)。「これは氷山の一角に過ぎません。ラジオ周波数のエネルギーを活用できるような数多くの先進的デバイスが利用できるようになるでしょう。ここでの問題は、何を活用するかではなくどれくらい必要であるかということです。ナノワットのエネルギーを活用し、電話が3〜5ワットを稼働時に消費するなら、どうすれば良いかはわかりますよね」。

SoftBankのように、投資や所有のポートフォリオにおいて、サービスやハードウェアに複数の投資をしている企業にとっては、資金面での支援だけでなく、戦略的なパートナーとしても大きなチャンスがある。

Softbank Investment Adovisersのマネージング・パートナーであるYanni Pipilis(ヤニ・ピピリス)氏は、声明の中で「AIを使って世界を感知する、初のハイパースケーラブルな自己発電型コンピューターを発明することで、Wiliotはデジタルと現実を結びつける立場にあります」と述べている。「私たちは、IoTとAIによって、人々はより良く、より健康的な生活を送ることができると信じてきました。あらゆる食品や医薬品が、安全に使用できるかどうかを理解する能力を持ち、人々とシームレスにコミュニケーションできるようになるのです。拡大し続けるIoTの応用をグローバルに飛躍的に拡大するWiliotの支援に一役買えることをうれしく思います」。

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)