米国空軍の宇宙試験機「X-37B」が780日間の軌道滞在から帰還

米国空軍が運用する試験宇宙機X-37Bが軌道を離れ、NASAのケネディー宇宙センターに無事着陸した。SpaceXのロケットで打ち上げられてから2年以上を経ての帰還となった。

かつてはX-37B Orbital Test Vehicle(軌道試験機)と呼ばれた同機はこれが5回目のミッションだったが、何が行われていたのかはよくわからない。X-37Bの本質はそのミッションのほとんど秘密なので、この軌道小旅行で何が起きていたかの詳細を知ることは今後もないだろう。それでもこれが米国空軍の使用しているテクノロジーを誇示するものであり、中でも「高信頼性、再利用可能、無人宇宙試験プラットフォーム」の開発に役立てようとしていることはわかっている。

空軍の情報から、航空電子工学、誘導システム、熱遮蔽、推進システム、大気圏再突入システムなど一連のテストが行われていることがわかっている。さらに、機体の長さが約9メートルで、スペースシャトルの縮小版とも言えること、空軍から請け負ったボーイング社が作ったこともわかっている。そしてなにしろこれは空軍の話なので、この宇宙飛行機で行われるあらゆる実験が最終的に防衛ないしは軍事に使われることもわかっている。米国にとってそれは、宇宙が急速に新興都市となりつつあり、他の多くの国々が宇宙の防衛と軍事に予算を投入していることを踏まえると当然の行動だ。

X-37Bは、新記録となった780日間の飛行を終えしばらく地上に滞在したあと、2020年のいつか再びケープカナベラル空軍基地から飛び立つ予定だ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

SpaceX、アメリカのX-37B宇宙往還機の打ち上げに成功――ブースターの回収は16回目

イーロン・マスクの宇宙企業、SpaceXは再び成功を収めた。昨日(米国時間9/7)、SpaceXはアメリカ空軍の宇宙往還実験機、X-37Bの打ち上げに成功した。これによりSpaceXはロッキード・マーティンとボーイングの合弁宇宙事業、ULA以外では唯一のX37B打ち上げ企業となった。今回の実績はSpaceXにアメリカの国防予算からの契約をさらに多数もたらすことになるだろう。

SpaceXのFalcon 9ロケットは、現地時間で木曜日の午前10時にフロリダ州ケネディー・スペースセンターのLC-39A発射台から打ち上げられた。Falcon 9はX-37B Orbital Test Vehicle〔衛星軌道テスト機〕をペイロードとして搭載し、第一段目ブースターはケープ・カナベラル空軍基地のSpaceXのLZ-1ランディングパッドに予定どおり無事着地した。フロリダ州には猛烈なハリケーン、イルマが接近しているが、SpaceXはいわばイルマを出し抜く形で打ち上げに成功した。

空軍のミッションであるためX-37Bの詳細は「各種の実験を実施している」という以上には公開されていない。前回の発射でX-37Bは2年間軌道にとどまり、今年5月に帰還している。ボーイングが製作したX-37Bは無人機だが、引退したスペースシャトルのミニ版といっていいデザインだ。帰還の際もスペースシャトルのように水平飛行して通常の滑走路に一般の航空機のように着陸する。

X-37Bはアメリカ最初の経済性の高い無人宇宙往還機で、軌道上から安全にペイロードを持ち帰る実験が行われている。 今回の打ち上げの重要な目的はSpaceXにX37-Bを軌道に投入する能力があることを実証する点にあった。ボーイングによれば、SpaceXが打ち上げ能力を持つことはX-37Bを恒常的に運用する上で決定的に重要だという。

一方、SpaceXにとっては今回がFalcon 9ブースター回収の16回目の成功となった。 次回のミッションでは回収・整備されたブースターを用いたEchoStar 105 SES-11通信衛星の打ち上げとなる。これは来月に実施が予定されていおり、用いられるブースターは前回ISS(国際宇宙ステーション)への補給ミッションで使われたものだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+