動画制作のために既存の楽曲を映像に合わせて自在に調整する「Dynascore」をYext共同創業者の新スタートアップが発表

Yext(イエクスト)の共同創業者でCEOを務めるHoward Lerman(ハワード・ラーマン)氏は、Wonder Inventions(ワンダー・インベンションズ)という新しいスタートアップを起ち上げ、米国時間4月8日にその最初のプロダクト「Dynascore(ダイナスコア)」を正式に発表した。

まずはDynascoreに注目してみよう。ラーマン氏によると、彼と彼のチームは、ますます需要の増えているビデオコンテンツが、しばしばストックミュージックに依存しているという問題を解決するために、このプロダクトを作り上げたという。ストックミュージックは、その性質上、特定のビデオや長さに合わせて作られていないため、映像にうまくフィットしなかったり、プロデューサーが音楽に合わせてビデオを編集しなければならなくなることがある。「曲を3秒だけ切り詰めて映像と組み合わせることなんてできない」からだ。

しかし、Dynascoreは、既存の音楽をどんな長さの映像にも対応させることが可能だ。また、音楽を調整して、トランジション、ポーズ、エンディングを好きな場所に配置することもできる。

ラーマン氏と彼のチームは、フィットネスのCMにさまざまな音楽を合わせ、CMの長さやトランジションの位置を調整して、その効果を実証してみせた。その度にDynascoreは、CMに適した新しいバージョンの楽曲を生成していく(ただし、映像に適していない楽曲を選んでしまった場合は、いくら調整しても無駄になってしまうという印象を受けた)。

そのために、Dynascoreはまず、曲を吟味して「音楽的に意味のある最小単位」にまで分解する。この単位は「morphone(モーフォン)」と呼ばれる。そして仕様に応じて、同社が「musicoherence(ミュージコヒーレンス:音楽的整合性)」と呼ぶものが最大化するように、これらのモーフォンを組み立てる。つまり、基本的に1つの実際の曲として聞こえるようにするのだ。

画像クレジット:Dynascore

ラーマン氏は、Dynascoreの技術はゼロから音楽を作ろうとするものではないと強調する。代わりにDynascoreは、人間が作曲した曲を用いる。そのために、パブリックドメインの名曲を集めたMasterworks(マスターワークス)と、約1000曲のオリジナル曲が用意されている。

「世の中には、AIを使って作曲する会社がたくさんあります」と、ラーマン氏は語る。「彼らはバッハやモーツァルト、ベートーヴェンの曲を使ってAIに学習させますが、そこから出てくる曲はゴミみたいなものです【略】。私たちが気づいた決定的なブレークスルーは、AIが映画の脚本や物語を書けないのと同じように、コンピューターは音楽を書けないということです。しかし、AIは、人間の耳が反応するように音楽を再構築することはできます」。

Dynascoreの価格は、無料トライアルの後、月額19ドル(約2080円)からとなっている。MacおよびWindows用のデスクトップアプリの他、映像編集ソフト「Adobe Premiere Pro(アドビ・プレミアプロ)」の機能拡張としても提供されている。Developer APIも構築されており、ビデオビルダーのBiteable(バイタブル)やマーケティング制作ツールのRocketium(ロケッティアム)など、他のアプリケーションとの統合も進められている。

Dynascoreは、Wonder Inventionsの最初の製品に過ぎず、同社では今後もさまざまな製品を開発していくと、ラーマン氏は語っている。

画像クレジット:Dynascore

「私たちは、たった1つのアイデアのためにWonder Inventionsを始めたわけではありません」と、ラーマン氏はいう。「Wonder Inventionsは、私たちがこれまでに出会った中でも最もクリエイティブで優秀な20人の熟練した発明家であり、彼らが相乗効果を発揮して多くの製品を開発していくことになるでしょう」。

ラーマン氏自身は、YextのCEOを続けながらWonder Inventionsの会長を務めており、これをフルタイムの仕事と表現している。クールなものを作るというその先に、会社としての統一されたビジョンがあるのかという質問には「30年前に人々がビジネスを始めるといえば、それは会社のことでした。今は会社を始めるといえば、それは製品のことです」と答え、ベンチャーキャピタルが単一のスケーラブルなアイデアを重視する傾向にあることを指摘した。

「Dynascoreに出資するベンチャーキャピタルはいないと思います。あまりにも風変わりなものですし、TAM(獲得可能な最大市場規模)を見て、『これが数十億ドル(数千億円)規模のカテゴリーになるとは思えない』という人もいるでしょう」と、ラーマン氏は続けた。彼自身はこの評価に必ずしも異論があるわけではないとしつつ「最初の製品としてはすばらしいものになるでしょうし、さらにヒットする製品が出てくるでしょう」と付け加えた。

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(文:Anthony Ha、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

構造化されていないデータを処理しより多くの答えを出すYextのサイト内検索サービス

Yext Answersは、企業が自社のウェブサイトでより良い検索体験を提供するためのサービスだ。そして名前からも想像できるように、本当のゴールは消費者が求めている答え(answers)を見つけることだ。

「検索クエリに対して、リンクを返したら負けだと思っています」と最高戦略責任者のMarc Ferrentino(マーク・フェレンティーノ)氏はいう。

2021年3月17日に「Orion」という検索アルゴリズムのアップデートを公開した後、Yextはもっといい仕事をするようになる、とフェレンティーノ氏は述べた。

それは何かというと、Yextは企業ウェブサイトの構造化されていないページから、直接、答えを抽出できるようになるというものだ。重要なのは、Yextがキーワードを探すだけではなく、ウェブページやブログ記事やヘルプ文書のような構造化されていない文書から「構造化された情報を抽出」できることだと彼はいった。そして、単にリンクや「テキストの塊」を表示するのではなく、質問に本当に答える「内容ある抜粋」をYextは提供する。

画像クレジット:Yext

Googleの検索を知っているだろうか。検索結果に質問と答えのついたウィジェットが出てくるあれだ。フェレンティーノ氏はそれとの比較を歓迎し、おかげでYextユーザーはGoogleの検索体験との「ギャップ」を感じないですむ、と語った。

そのテクノロジーを紹介するためにフェレンティーノ氏は、Yext Answersが大統領の歴史に関するページをクローリングして「2回弾劾された唯一の米国大統領は誰か?」という質問に正しい答えを返すところを見せた。

あるいは、もっとビジネス寄りの(ただし少しメタな)事例として、Yextのテクノロジーについての質問に答えるところを私に見せた。もう1つ別の例で、銀行のウェブサイトを探して、確定拠出年金401(k)と従来型個人退職年金のIRAの違いに関する質問に答えることができるとYextはいう。

また、この変更は企業とその顧客にとっての改善だけでなく、Yextの非営利顧客も恩恵を受けることは知っておくべきだろう。たとえば世界保健機構(WHO)はパンデミック関連の質問にオンラインで解答するためにYextを使っている

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(文:Anthony Ha、翻訳:Nob Takahashi / facebook