あなたが想像しているよりもずっと早く、野菜はロボットによって収穫されるようになる

近い将来、アメリカ中の食料品店の棚に並ぶ野菜はロボットによって収穫されたものになるだろう。

工場で使われるようになったオートメーション革命は、さらに米国の農業産業への道を開拓し、その最初の展開場所は現在米国内に点在し始めている屋内農場になるだろう。

このロボット革命の先頭に立つのが、Root AIのような企業だ。Root AIは初のロボット収穫と農場最適化技術を市場に登場させるために、230万ドルを調達したばかりである。

Root AIは、現在世界に存在する230万平方フィート(約6万4600坪)の屋内農場に焦点を当てており、屋内農作物を栽培する農家の数の増加に合わせて拡大することを望んでいる。Agrilystのような分析会社の推定によれば、屋内農場は2200万平方フィート(約61万8200坪:主に米国内)程度まで広がる可能性もある。

これはおおよそ505エーカー(約204.4ヘクタール)の広さに過ぎない。現在米国内で耕作が行われている9億エーカー(3億6400万ヘクタール)の土地にくらべれば本当に些細なものである。しかしそれらの室内農場は、従来の農場に比べて、生産量がはるかに高く、リソース使用量ははるかに少なくて済むという大きな利点を持っている。屋内栽培されるトマトや葉物のような作物の単位面積あたりの収穫量は、屋外農場の10倍以上に達する。

Root AIのエグゼクティブチームは、その収穫量をさらに高めることができると考えている。

36歳のJosh Lessingと28歳のRyan Knopfという、ロボット業界の2つの新星によって創業されたRootは、元々は2人が以前働いていたSoft Roboticsで行っていた仕事の延長線上にある。Soft Roboticsはロボット操作に対する新しい技術を開拓していた。

ハーバード大学教授のGeorge Whitesideによって行われていた研究から、スピンオフしたSoft Roboticsのチームは、正式なロボット開発の訓練を受けないまま、数年に渡りロボット開発を続けてきた技術者たちによって、主に構成されていた。Knopfは、ペンシルバニア大学で学んだロボット工学者であり、伝統的なロボット工学の背景をもつ限られた従業員たちの1人だった。

「私たちはSoftでコア技術を開発する最初の2人でした」とLessingは言う。「この技術は現在食品産業で多用されています。柔らかいグリッパーを採用したことで…デリケートなフードグリッパーを展開しやすくなりました。とても扱いやすい機械デザインのおかげで食品の品質を保ち易くなるのです。例えば物を掴むことができる、膨張式の指などです」。

Root AIの共同創業者のJosh LessingとRyan Knopf

同社が取り組んでいた方法は、人間の手の器用さを再現するという非常に厄介な問題に、他のロボット会社がアプローチしていたやり方とは、根本的に異なったものだった。「従来のロボット技術の観点からは、私たちはあらゆる間違いを犯していたために、従来のロボットができることを実行することができませんでした。最終的には私たちは、新しい部品を使って、適応性のあるグリップを作成することができました」とLessingは語る。

Soft Roboticsは革新的な仕事を続けているが、KnopfとLessingの2人は、彼らの知識がとても必要とされている分野にチャンスを見出した ―― それが農業だ。「農業は沢山の複雑な課題に直面していていますし、同時に私たちはもっともっと多くの食料を必要としています」とLessingは語る。「そして農業における近年の多くの課題は、梱包や加工施設ではなく、現場に存在しています。そこでRyanと私は、どのようにAIを生産者の役に立てることができるかについての、新しい取り組みを始めることにしたのです」。

Root AIの最初のプロダクトは、屋内農業施設で稼働するモバイルロボットだ。それはトマトを摘み上げ、作物を見てその健康状態を評価し、ロボットが作物(当初はトマト)を連続的にかつ人間によるものよりも効率的に栽培できるようにするために、剪定や熟成状況の観察と管理を行う。

Root AIのロボットには、カラー画像と3D深度情報の両方を収集するために、複数のカメラが搭載されていいる(ロボット自身のアームに搭載された1つは「道具」の視野として使われ、ロボットの側面には固定画角のカメラが1つ装備されている)。また同社は、関心のあるオブジェクトを検出し、バウンディングボックスでそれらにラベルを付けるための、カスタマイズされた畳み込みニューラルネットワークを開発した。果物の場所以外にも、果物の性質(熟成度、サイズ、品質等級など)を測定するために、Root AIは他の独自視覚処理技術を使用している。こうした処理の全てが、データセンターへの遠隔アクセスに頼ることなく、ロボットの上で行われる。処理はリアルタイムだ。

Rootの創業者たちが指摘するように、このロボットたちのようなツールは徐々に有用さが増してくるだろう。なぜなら米国の屋内そして屋外農業の両者が、徐々に労働力不足に陥っているからだ

その一方で、産業としての農業にのしかかる圧力は、ロボットによって支援される屋内農業を、徐々に生産のためのより現実的な選択肢としている。絶えることのない人口増加と気候変動による耕作地の減少は、単位面積あたり最大20倍の果物と野菜を収穫することが可能で、使用する水の量が最大90%少なくて済む屋内農場を、極めて魅力的なものにしている。

Howling Farms、Mucci Farms、Del Fresco Produce、そしてNaturefreshなどのサプライヤーたちは、すでに消費者のために多くの果物と野菜を生産している、とLessingは語る。「彼らは、より広い社会にとって意味のある方法で、農業生産を調整してきました。それは持続可能な手法であり、農場を都市部に配置することを可能にします。そしてはるかに単純な物流ネットワークを有しています」。

サプライチェーンの複雑さとコストを削減する能力は、Walmart やWhole Foodsなどの小売業者たちにとって有益だ。彼らはより新鮮で、長持ちする農産物を消費者に届けるために競い合っている、とLessingは語った。投資家たちも納得しているようだ。Root AIは、First Round CapitalAccompliceSchematic VenturesLiquid2 Ventures、そしてHalf Court Venturesといったファームからラウンドを通して230万ドルを調達することができた。

「農場にはとても多くの役割があり、私たちはそれらすべての分野を補完しようとしています」とLessing氏は語る。「今、私たちは異なる生産者たちと、多くの技術実験を行っています。例えば成熟度の計測やトマトを掴むグリッパーの能力などについてです。来年にはパイロット生産を開始します」。

地球温暖化が食糧生産への厳しさを強めていく中で、Lessingは彼のテクノロジーに対する需要が高まっているのを感じている。

「個人的には、どれくらいの食料を私たちは必要とするのか、そしてどこでそれを作れば良いのか、という懸念を持っています」とLessingは言う。「屋内農業は、どこでも食料を生産できるようにすることに注力しています。もし環境を制御できるならば、食料を生産する能力を手に入れることができます…人びとの基本的なニーズを満たすことは、私の人生で成し遂げることのできる最も影響あることの1つなのです」。

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(翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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