大型のメディア統合が続いている。Amazon(アマゾン)によるMGM買収の噂が駆け巡った翌米国時間5月26日、オンライン小売大手Amazonは100年近い歴史を持つ映画製作会社を84億5000万ドル(約9210億円)で買収すると発表した。
買収はAmazonがストリーミング分野における競争を勝ち抜くための、映画4000本をともなう新たな策となる。MGMの作品リストには「James Bond(ジェームズ・ボンド)」や「Rocky(ロッキー)」シリーズ、そして「Fargo(ファーゴ)」「Robocop(ロボコップ)」から「Silence of the Lambs(羊たちの沈黙)」に至るまでのクラシック作品などがある。また1万7000超のテレビ番組も含まれる。取引が完了すれば、すぐさまAmazonのプライムビデオプラットフォームはそうした作品へのアクセスが自由になり、これによりAmazonはNetflixやHulu、HBO Maxといったライバルに対抗できる。
Disney+のような映画製作会社のストリーミングプラットフォームの立ち上げで目にしたように、買収取引は既存の契約が終了し次第、競合サービスからコンテンツが消えるという結果になりそうだ。「取引の真の資産価値は膨大なカタログにあるIPの宝の箱です。当社はこれをMGMの才能あるチームと一緒に再考し、開発する計画です」と Amazon Studios/Prime VideoのシニアバイスプレジデントであるMike Hopkins(マイク・ホプキンス)氏はリリースで述べた。「非常にエキサイティングで、高品質のストーリーテリングの多くの機会を提供します」。
Amazonはまた、古い映画を保存する取り組みも行うと話す。発表資料には、高齢の人と若い人の結婚で聞くような一般的な文言が並んでいる。MGMの取締役会会長Kevin Ulrich(ケビン・ウルリヒ)氏は次のように述べた。「ハリウッドの黄金時代を生み出してきたMGMのライオンが名高い歴史を継続させ、United Artistsの創設で生まれたアイデアが才能ある人と彼らのビジョンによって創業者が当初意図した方法で生き続けることをとても誇りに思います。MGMの名高い歴史をAmazonに合流させるというのは刺激的な組み合わせです」。
もちろんAmazonは、自前の製作会社と配給会社を通じてオリジナルコンテンツをすでに積極的に展開している。映画に関していうと、同社はアカデミー脚本賞を獲得した有名作品「Manchester By the Sea(マンチェスター・バイ・ザ・シー)」を制作し、その他の作品には「Transparent(トランスペアレント)」がある。Amazonは「Lord of Rings(ロード・オブ・ザ・リング)」を元にした大規模(そしてかなり費用がかかる)シリーズにも乗り出している。
Amazonが潤沢な資金で成長してきた一方で、MGMにとって21世紀はかなり厳しいものだった。MGMは何度か所有が変わったのちに米連邦破産法11条の適用を申請した。同社は再建され、債権者が主導権を握った。
AmazonによるMGM買収は、DisneyとFox、ViacomとCBS、AT&TとTime Warnerなどを含む相次ぐメディア統合の最新事例だ。これらの巨大な取引と同様、MGM買収も当局の審査次第となる。
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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Amazon、買収、MGM、映画
画像クレジット:MGM / MGM
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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi)