アマゾンが約1兆円でMGMの買収を完了、「007」「ロッキー」「ロボコップ」などがプライム・ビデオで配信予定

Amazon(アマゾン)は85億ドル(約1兆円)でのMGM(メトロ・ゴールドウィン・メイヤー)の買収を完了したと、米国時間3月17日に発表した。この買収完了により、4000本以上の映画と1万7000本以上のテレビ番組が、Amazonのストリーミングサービスであるプライム・ビデオの一部となる予定だ。

このリストには「007」や「ロッキー」シリーズ「ファーゴ」「ロボコップ」「羊たちの沈黙」などの名作が含まれている。これらの新タイトルは、Netflix(ネットフリックス)、Hulu(フールー)、HBO Maxなどのライバルに対して、プライム・ビデオを優位に立たせることになる。

2021年5月に初めて発表されたこの取引は、2日前に欧州連合の反トラスト規制当局から認可を受けた。規制当局は、AmazonとMGMの重複が限定的なため、この取引が競争を著しく低下させることはないだろうと判断した。Amazonは、米連邦取引委員会が合併に異議を唱える3月中旬の期限が切れた後、取引を進めている。

「MGMは、100年近くにわたって優れたエンターテインメントを生み出してきた歴史があり、私たちは、世界中の視聴者に幅広いオリジナル映画やテレビ番組を提供するという彼らの取り組みを共有しています」と、プライム・ビデオおよびAmazon Studioの上級副社長Mike Hopkins(マイク・ホプキンス)氏は声明で述べた。「我々はMGMの社員、クリエイター、タレントをプライム・ビデオとAmazon Studiosに歓迎します。我々のお客様に質の高いストーリーテリングを届けるより多くの機会を創出するためにともに働くことを楽しみにしています」。

Disney(ディズニー)+のようなスタジオストリーミングプラットフォームの立ち上げに見られるように、この契約により、既存の契約が終了すれば、競合するサービスからコンテンツが引き抜かれる可能性もある。

「MGMとその象徴的なブランド、伝説的な映画やテレビシリーズ、そして我々のすばらしいチームとクリエイティブパートナーがプライム・ビデオファミリーに加わることに興奮しています」と、MGMの最高執行責任者であるChris Brearton(クリス・ブレアトン)氏は声明で述べた。「MGMは、過去 100年間で最も有名で高い評価を得た映画やテレビシリーズの制作を担ってきました。私たちは、この伝統を引き継ぎ、次の章に向かい、プライム・ビデオとAmazon Studiosのすばらしいチームと協力して、今後何年にもわたって視聴者に最高のエンターテインメントを提供していきたいと考えています」。

Amazonはここ数年、大きな成功を収めているが、MGMはそれ以上の困難を経験している。2010年、同スタジオは、何度も手を変え品を変え、連邦破産法第11章の適用を申請した。スタジオは再建され、債権者が経営権を握った。

Amazonは、100年近い歴史を持つこのスタジオが、プライム・ビデオとAmazon Studiosのコンテンツを補完し、両者が協力することで、加入者により質の高いエンターテインメントの選択肢を提供するとしている。

さらに、Amazonは自社の制作スタジオや配給を通じて、オリジナルコンテンツへの積極的な取り組みを進めている。映画分野では、アカデミー賞脚本賞を受賞した「マンチェスター・バイ・ザ・シー」など注目作を制作している。また、9月2日に公開予定の「ロード・オブ・ザ・リング」を題材にしたシリーズ「ロード・オブ・ザ・リング 力の指輪」にも着手している。このシリーズは、プライム・ビデオが現在提供している「マーベラス・ミセス・メイゼル」「フリーバッグ」「ザ・ボーイズ」「ジャック・ライアン」などの人気テレビ番組と合流する予定。

画像クレジット:Amazon

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(文:Aisha Malik、翻訳:Yuta Kaminishi)

新たなテックに懐疑的なFTCがアマゾンのMGM買収を審査するとの報道

Amazon(アマゾン)によるMGMの買収は、Amazonに対する批判で有名なLina Khan(リナ・カーン)氏が新たに委員長となったFTC(米連邦取引委員会)の精査を通過しなければならないとThe Wall Street Journalが報じた。84億5000万ドル(約9300億円)の合併は止められそうにないが、今回のような買収で複数の業界を統合する巨大企業に対するアプローチを、FTCがどのように見直すかを示す初期の指標になるかもしれない。

関連記事:アマゾンが老舗映画製作会社MGMを約9210億円で買収、ストリーミング競争にさらなる勢い

この買収案は2021年5月に発表された。MGMの4000本の映画と1万7000本の番組がAmazonのライブラリーに加わることは、プライム・ビデオにとって強力な加勢となりそうだ。プライム・ビデオは、Amazonの店先と同様、顧客がオンデマンドメディアを利用する際のデフォルトの手段となることを目指している。

権利が持ち札を変え、企業が戦術を変えると、ストリーミングを取り巻く状況も刻々と変化する。Netflix(ネットフリックス)がオリジナルコンテンツに注力し(Amazonも負けてはいない)、Disney(ディズニー)が独自の定番作品を持つ中で、他の企業は番組や映画のコレクションをバラバラに入手し始め、それがストリーミング業界における収益性の高いロングテールを形成している。

しかし、規制当局の間では、MGMのようなコンテンツ会社がAmazonのようなプラットフォームに所有されるべきかどうかという正当な疑問がある。映画やテレビの独立したプロデューサーであるMGMは、独自のライセンス契約を結ぶことができ、同種の企業と直接競合することができる。しかし、Amazonの子会社になると、おそらくかなりの部分で小売・ウェブの大手企業の社内制作会社になり、製品の良し悪しによってではなく、複数の業界にまたがる帝国の一部として競争に臨むことになる。

先に任命されたばかりのFTC委員長リナ・カーン氏は、後者のビジネスモデルを先頭に立って批判してきた人物だ。同氏の有名な論文「Amazonの独占禁止の逆説」によると、Amazonは、ウェブホスティングにおけるAWSのようなある業界での優位性を利用して、まだ始まったばかりの配送サービスのようなあまり成功していない他の部門を補強していると主張している。前者の支えがなければ後者が失敗してしまうのであれば、Amazonは市場支配力によって可能となる反競争的行為を行っている可能性がある、というのが(大まかな)主張だ。

そうした市場での力と行為が異なる分野に存在するために、最近の反トラスト法の教義の下では(消費者にとって価格が上昇しない限り)Amazonに言い訳の余地があったが、カーン氏はこの論文でその教義に挑戦することを目指した。そして今、国内で最も強力な規制当局の1つとして、同氏はその形を直接変える機会を与えられている。

このような大規模な取引は常に連邦当局が審査するが、今回はFTCが担当すると言われている。おそらくFTCが別件でAmazonに対する反トラスト調査の役割をすでに担っているからだ。FTCはまた長年にわたって何度も揉めてきたFacebook(フェイスブック)も担当しており、FTCの執行パートナーである司法省はGoogle(グーグル)とApple(アップル)の調査を担当している。FTCはコメントを控え、調査の有無については明らかにしないとしている。

今回のケースでは、AmazonによるMGMの買収が阻止される可能性は低いと思わる。この分野では実際に競争が行われており、MGMは独自の道を歩むことができていないため、売却はほぼ避けられないだろう。しかし、それでも審査は行われ、FTCがこの種の合併に対するアプローチをどのように変えるのかが明らかになると思われる。

今回の取引が軽いタッチで承認されたとしても、新しい教義が適用される機会となることは十分に考えられる。例えば、表向きは無関係な市場におけるAmazonの独占的な地位が、これまでのFTCの監督下においてよりも大きな役割を果たすことになるかもしれない。これは、今後のより包括的で積極的な審査の舞台となるかもしれない。また、カーン委員長が明確な可能性として述べているように、過去に承認された合併をひっくり返すことになるかもしれない。

関連記事:テック業界に対するリナ・カーン氏の時宜を得た懐疑論はFTCの承認公聴会を新鮮かつ友好的な方向に導くものだ

カテゴリー:ネットサービス
タグ:AmazonMGMFTC買収動画配信

画像クレジット:Dhiraj Singh / Bloomberg / Getty Images

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nariko Mizoguchi

アマゾンが老舗映画製作会社MGMを約9210億円で買収、ストリーミング競争にさらなる勢い

大型のメディア統合が続いている。Amazon(アマゾン)によるMGM買収の噂が駆け巡った翌米国時間5月26日、オンライン小売大手Amazonは100年近い歴史を持つ映画製作会社を84億5000万ドル(約9210億円)で買収すると発表した

買収はAmazonがストリーミング分野における競争を勝ち抜くための、映画4000本をともなう新たな策となる。MGMの作品リストには「James Bond(ジェームズ・ボンド)」や「Rocky(ロッキー)」シリーズ、そして「Fargo(ファーゴ)」「Robocop(ロボコップ)」から「Silence of the Lambs(羊たちの沈黙)」に至るまでのクラシック作品などがある。また1万7000超のテレビ番組も含まれる。取引が完了すれば、すぐさまAmazonのプライムビデオプラットフォームはそうした作品へのアクセスが自由になり、これによりAmazonはNetflixやHulu、HBO Maxといったライバルに対抗できる。

Disney+のような映画製作会社のストリーミングプラットフォームの立ち上げで目にしたように、買収取引は既存の契約が終了し次第、競合サービスからコンテンツが消えるという結果になりそうだ。「取引の真の資産価値は膨大なカタログにあるIPの宝の箱です。当社はこれをMGMの才能あるチームと一緒に再考し、開発する計画です」と Amazon Studios/Prime VideoのシニアバイスプレジデントであるMike Hopkins(マイク・ホプキンス)氏はリリースで述べた。「非常にエキサイティングで、高品質のストーリーテリングの多くの機会を提供します」。

Amazonはまた、古い映画を保存する取り組みも行うと話す。発表資料には、高齢の人と若い人の結婚で聞くような一般的な文言が並んでいる。MGMの取締役会会長Kevin Ulrich(ケビン・ウルリヒ)氏は次のように述べた。「ハリウッドの黄金時代を生み出してきたMGMのライオンが名高い歴史を継続させ、United Artistsの創設で生まれたアイデアが才能ある人と彼らのビジョンによって創業者が当初意図した方法で生き続けることをとても誇りに思います。MGMの名高い歴史をAmazonに合流させるというのは刺激的な組み合わせです」。

もちろんAmazonは、自前の製作会社と配給会社を通じてオリジナルコンテンツをすでに積極的に展開している。映画に関していうと、同社はアカデミー脚本賞を獲得した有名作品「Manchester By the Sea(マンチェスター・バイ・ザ・シー)」を制作し、その他の作品には「Transparent(トランスペアレント)」がある。Amazonは「Lord of Rings(ロード・オブ・ザ・リング)」を元にした大規模(そしてかなり費用がかかる)シリーズにも乗り出している。

Amazonが潤沢な資金で成長してきた一方で、MGMにとって21世紀はかなり厳しいものだった。MGMは何度か所有が変わったのちに米連邦破産法11条の適用を申請した。同社は再建され、債権者が主導権を握った。

AmazonによるMGM買収は、DisneyとFox、ViacomとCBS、AT&TとTime Warnerなどを含む相次ぐメディア統合の最新事例だ。これらの巨大な取引と同様、MGM買収も当局の審査次第となる。

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画像クレジット:MGM / MGM

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi