【編集部注】執筆者のAjay Prakashは、洗濯代行サービスRinseのCEO。同社はモバイルアプリ経由の注文をもとに、利用者の自宅やオフィスを訪れて洗濯物の集荷・返却を行うサービスを提供している。
私ともう一人の共同ファウンダーであるJamesが、2013年にモバイルベースの洗濯代行サービスをはじめた頃、”オンデマンド”企業が世に出始めた。
当時、VCは次のUberをみつけるのに躍起になり、さまざまな企業が考えうる全ての分野でオンデマンドサービスをリリースしようとしていた(これらの企業は「◯◯のUber」という呼び名で知られているかもしれない)。今日の状況を見てみると、中にはオンデマンドモデルで成功を収めた企業も存在する一方で、経営に苦しんでいる企業の数の方が多いようだ。ここ数ヶ月で言えば、潤沢な資金を調達し素晴らしいチームがいるにも関わらず、人員を削減したり、会社をたたんだりする企業の姿も見られる。そんな中、なぜこのようなことが起きているのかという疑問が当然浮かんでくる。
単刀直入に言えば、その答えは”オンデマンド”が顧客のニーズを解決するための万能な手段ではないということだ。
”スマートスケジューリング” VS ”オンデマンド”
Uberは急を要する重要な問題を解決している。タクシーが必要なときというのは、その瞬間にタクシーが必要だということだ。Uberはオンデマンドのサービスを提供することで、この問題を解決し、顧客の差し迫った需要を満たしているのだ。しかし、消費者向けサービスは、習慣的な問題への対策であることがほとんだ。
家の掃除や洗濯、洗車といったタスクは、一般的に予測可能なパターンで繰り返し発生する。そのため、このようなタスクに対するサービスにおいて、オンデマンドモデルは不適当かつ非効率的なのだ。
消費者向けサービスの事業を立ち上げるとき(もしくはこの場合に限ってはどの事業でも)、顧客のニーズにフォーカスし、自社のサービスにとらわれないというのが重要になってくる。最近の問題は、新たに設立されたスタートアップのほとんどが、消費者の問題に対する解決策は全てオンデマンドでなければならないと思い込んでしまっていることだ。しかしほとんどの場合、繰り返し起きる問題には、”スマートスケジューリング”のアプローチをとった方が良い。
最も基本的な意味として、スマートスケジューリングとは、一定の間隔で発生する顧客のニーズに合わせたサービスを構築することを指す。掃除や洗濯の代行サービスであれば、その間隔は1、2週間ほどだろう。
洗車や倉庫への荷物の移動といった他のサービスであれば、ニーズの発生する間隔がもっと開くかもしれないが、発生時期に関わらず、スピードよりも品質を重視することで、ほとんどの場合顧客満足度は向上する。
以下に、”オンデマンド”よりも”スマートスケジューリング”の方が有効だと思われるいくつかの分野について説明している。
ハウスクリーニング
2013年の”オンデマンド”ハウスクリーニング業界では、Handy、Homejoy、Execが幅を利かせていた。投資家やメディアがこの業界にはかなり興味を持っていたと同時に、”オンデマンド”経済における有名なサービス停止の事例もこの分野で発生した。
この業界の顧客についてしっかり観察すると、彼らのニーズが慢性的かつ繰り返し発生していることがわかる。つまりハウスクリーニング業界では、オンデマンドよりもスマートスケジューリングの方が有効なのだ。実際のところ、前述の例の中で唯一現存するHandyを見てみると、彼らのサービスはオンデマンドではないことがわかる。Handyのサービスに登録する際に、顧客は毎週か隔週のプランを選ぶようになっているほか、登録日から数日後にデフォルトのスタート日が設定されている。
貸し倉庫
貸し倉庫も、過去数年の間に投資家の興味をひいていた分野だ。Clutter、Makespace、Omniといった企業が外部から資金を調達し、さまざまな方法で家の中に溢れたものを貸し倉庫に預けるサービスを考案しようとしていた。Omniは、”オンデマンドの保管・デリバリー”サービスというブランディングで、定期的なアプローチをとっていたClutterとは違った角度からサービスを提供していた。
第三者の立場から言えば、家にある荷物をどこかに預けるというのは、問題としては大きいが急を要することは滅多にない。
洗車
オンデマンド洗車サービスは、数年前にCherryがローンチし、資金を調達し、その後すぐにサービスを停止した頃は人気の業界だった。その全てがRinseの設立前に起きたが、それから約4年が経った今でも、オンデマンドで洗車サービスを提供している企業は存在する(Washos、Squeegy、Wypeなど)。
私は彼らのターゲットではない(しばらくの間洗車しなければと思っているが何もしていない)が、洗車でオンデマンドのサービスが必要になるケースはかなり稀のように感じる。さらに、洗車が必要なタイミングは繰り返し発生するもの、購買頻度は限られている。
消費者が抱える大きな問題は他にもある
より広い意味での”オンデマンド”経済で、めんどくさがりな人や富裕層をターゲットとするスタートアップの話を聞くことがある。実際にそういった人をターゲットにする企業は存在するかもしれないが、現実にはもっと大きな問題を抱えている消費者が残っている。
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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter)