Snapchat(スナップチャット)が開拓し、Instagram(インスタグラム)がクローンを作った「ストーリーズ」機能は、Google検索からPinterest(ピンタレスト)、その他のストリーミングアプリなども含む、現代のモバイルアプリの定番となっている。この機能が万人向けではないとしても(たとえばLinkedIn[リンクトイン]やTwitter[ツイッター]は最近ストーリーズ機能を停止した)、それでもStoryteller(ストーリーテラー)という企業が「サービスとしてのストーリーズ」(stories as a service)を収益事業としてなんとか立ち上げようとするだけの需要が市場には存在している。
同社のサービスを利用すれば、誰でも自分のアプリやウェブサイトにストーリーズ機能を追加することができるが、その際にコーディングや設定はほとんど必要ない。そうした難しい作業を行う代わりに、Storytellerの顧客はSDKを取り込んで自分のアプリにストーリーズを追加することができる。そして、コンテンツ管理システム(CMS)を利用してストーリーズをオーサリングして公開し、そのパフォーマンスを追跡することも可能になる。
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Storytellerのアイデアは、スコットランドのエジンバラにあるエンターテインメント専門の代理店、Storm Ideas(ストーム・アイディア)からスピンアウトしたものだ。なおStorm Ideasは、Bob Thomson(ボブ・トムソン)氏が設立したメディア企業にさまざまなソーシャルプロダクトを提供している企業だ。トムソン氏が初期の開発に関わり急速に成功した、オンラインのプロフィール画像をカスタマイズするためのツールTwibbon(トゥイボン)が、誕生して程なく2009年にStorm Ideasは設立された。過去10年ほどの間に、Storm Ideasは70人規模の会社に成長し、現在ではスポーツやエンターテインメント業界のクライアントに戦略、デザイン、開発、コンテンツを提供している。
その過程で、Storm Ideasは、顧客のニーズに基づいて他のコンセプトも考え出してきた。例えばタレントにソーシャルアセットを配布するプラットフォームであるHailTo(ヘイルトゥー)は、同社の顧客基盤の拡大に貢献した。
その中で生まれたのがStorytellerだ。トムソン氏によれば、複数の企業、特に米国のメディア企業たちが、ストーリーズ機能を追加するアイデアを思いついても、実際の実装には苦労しているという。
「そのためのユーザーインターフェイスを開発し、それをAndroid、iOS、ウェブ用に再構築する必要があるからです。もちろんそれらすべてとやりとりを行うことのできるバックエンドも開発しなければなりません。それで終わりではなく、忘れがちですが、それらを管理するためのツールも必要なのです」とトムソン氏は説明する。「私たちは、そのようなことをしてくれる製品の追求にはチャンスがあると感じたのです」。
Storytellerの目標は、Brazeのような企業がプッシュ通知を実現してくれたように、ストーリーズを実現することだ。つまり、各企業が自社で製品を一から作るのではなく、自社のアプリにストーリーズを追加するためにSDKを利用するという選択ができるのだ。
Storytellerの最初の顧客は、Storm Ideasとすでに関係を持っていたHallmark(ホールマーク)だった。Hallmarkは、ユーザーが観た映画を記録できる「Hallmark Movie Checklist」(ホールマーク・ムービー・チェックリスト)アプリを運営している。同社は、毎月数十万人のユーザーに、ニューリリースや注目のセレクションなどのタイムリーな情報を配信する方法を探していた。Storytellerは、2019年にHallmark Movie Checklistとともに開始され、その後数カ月で他の顧客にも同様のツールセットの提供を進めていった。
現在は独立したビジネスとしてスピンアウトしたStorytellerは、スポーツやエンターテインメント分野の数多くのアプリで数百万人のユーザーにサービスを提供しているが、その企業顧客の名前を公表することは許されていない。
トムソン氏は「大規模なエンタープライズタイプの導入については、2倍になっています」と語っている。
「これは出発のためのすばらしい基盤です。私たちは、もっとも難しい課題から取り組んできました。大企業と一緒に統合作業を進め、大勢のステークホルダーやたくさんの社内政治にも遭遇しました」と彼はいう。「それはときに莫大な労力を必要とする仕事でした。……しかし、当然ながら、私たちはこの先より多くの中規模のお客様にもこのサービスを提供したいと考えています。つまり、もう少し自分で作業をしたいと考えているお客様や、もっと手間のかからないアプローチが欲しいと考えているお客様たちです」。
現在は、ユーザー生成コンテンツを消費者向け製品を追加しようとしている企業ではなく、Storm Ideas がすでにサービスを提供している市場であるスポーツやメディア分野のクライアントに焦点を当てている。
顧客はStorytellerを通じて、バックエンドにアクセスし、画像やビデオ、投票をアップロードしたり、プレビューしたりしてストーリーを作成することができる。顧客はコンテンツを分類し、公開スケジュールを設定し、SDKにデータを投入して、分析結果を追跡することができる。また、Photoshop(フォトショップ)やAfter Effects(アフターエフェクト)などのツールを使ってプロフェッショナルにコンテンツを制作するチームを社内に持っていない小規模な企業向けに、使いやすいコンテンツ制作ツールを提供するスタジオコンポーネントの開発も新たに行っている。
年内にリリースが予定されているこの機能では、顧客がテンプレートを選択し、自身のコンテンツでカスタマイズすることができる。これはまた、企業ユーザー以外の顧客にとってもStorytellerをより魅力的なものにしてくれる可能性がある。
現在同社は、こうした小規模な顧客に向けて、月間アクティブユーザー数が2万5000人以下のアプリ向けの無料プランから、月間ユーザー数が100万人以下の大規模アプリ向けの最大月額849ドル(約9万4300円)のプランまで、幅広い提供を行っている。さらにそれを超えた場合には、企業向け価格設定がある。
これまでのところ、Storytellerは、代理店の利益、トムソン氏自身の資金、そして初期の顧客からの収入で、資金を調達してきた。
Storytellerのチームには、これまでもプロジェクトに専念して来たStorm Ideasから参加した約30人のコアグループも含まれている。引き続き、個別の採用を続ける予定だ。また、Storytellerを顧客に販売する際に、もしコンテンツ制作面でのサポートが必要とされる場合には、このサービスを提供している親会社のStorm Ideasを紹介している。