昨年10月にFair(フェア)が従業員の40%を解雇したとき、CEOのScott Painter(スコット・ペインター)氏はオンデマンド車両へのリースサービスはやめないと約束した。しかしその1週間後、ペインター氏はCEO職を解かれ、Fairに投資しているソフトバンクのAdam Hieber(アダム・ヒーバー)氏がCEOに就任した。そして2月6日、2つの情報筋によると、Fairは全員会議をアナウンスした。そこではUberのドライバーが短期間(週単位で)車を借りられるFair Goプログラムを終了させ、収益性を追求することが発表される見込みだ。Fair Goプログラムは4月に終了する。UberはTechCrunchにこの情報を認め、Fairもまた同様に認めた。
Fairのライドシェアドライバー向けの価格を大幅に上げることが余儀なくされる予期せぬ保険料増額のため、数カ月内に週単位のサービスを終了させる、と広報は語った。数週間以内に顧客にサブスクの状況を知らせるなど、混乱を最小限に抑えられるよう取り組む。Uberと緊密に連携をとっており、顧客がシームレスに他のオプションを利用できるよう、またUberへの車両供給を継続できるよう、サードパーティーによる選択肢も検討している。Fairを利用してくれていたライドシェアドライバーに感謝しており、費用対効果が高い方法でこれ以上事業を継続できないことを残念に思っている。
Fairでは、Uberドライバーが1カ月またはそれ以上の期間、車を借りることはまだできる。現在展開されていて今後なくなるプログラムでは、Uberドライバーは車両を週単位で借りることができた。我々が把握している限りでは、ピーク時にこのプログラムはFairのUberとの事業の半分ほどを占めた。
エクイティファイナンスとデットファイナンスでソフトバンクとLightspeedから20億ドル(約2195億円)超を調達し、バリュエーションは12億ドル(約1320億円)だったFairは昨年10月に従業員の40%を解雇した。同社は2018年にUberのXChangeリースプログラムを買い取った。このプログラムは、ドライバーがUber乗車サービスを提供するために車両を借りられるというもので、スタート料金500ドル(約5万5000円)を払えば、ロードアシスタンスや維持費込みで週130ドル(約1万4000円)という低料金だった。
しかしこのリースプログラムは利益が上がらず、損失が膨らんだためにUberはこのプログラムを売却した。Fairは料金をいくらか上げたが、それでも運営はさほど改善しなかった。
「Fair Goは収益を上げていた」と情報筋は語る。サブスクサービスを普通のドライバー向けに一新したのは同社にとって重要な取り組みだった。別の情報筋は、Fairが一時期1日あたりリースを250〜300台増やし、何千台も貸し出していた、と話した。
しかしFair Goは保険料の増額に直面していた。Uberドライバーが普通の車オーナーよりもかなり長距離を走ることを考えると、保険料アップは当然のことだ。
多くのドライバーが資金不足で、そうしたドライバーに保険料をそのまま回すのではなく、FairはUberドライバーへのリースを終了させると従業員に伝えた。トータルコストがいくらになるのかUberドライバーが完全に理解しなければ借金を抱えることになっていたかもしれないことを考えると、Fairの決断は妥当なものだ。
Fairのコメントを得ようと試みたが、事はやや複雑だった。というのも同社の広報チームの多くがすでに会社を辞めていたからだ。代理店の代表が遅くになって上記の声明文を出した。
Uberの広報はTechCrunchに対し、「ドライバーがUberで稼げるよう、車両を利用できるようオプションを提供し続けるのは優先事項だ。我々はFairの協力、そして我々の車両レンタルプログラムへの貢献に感謝している。Uberはレンタルパートナーシップ、そして現在利用できる月単位のサービスに加えて時間単位や週単位といったより柔軟なプログラムの構築に引き続き投資している」と話し、Fair Goサービスを停止することを認めた。
Uberはまだ赤字経営で、レンタルやリースの事業を引き受けようとはしていない。HertzやAvis、ZipCar、Getaroundなどとのパートナーシップを通じてドライバーにレンタルの選択肢を提供しようと試みていて、こうしたパートナーシップはこれまでFairから車を借りていたUberドライバーが利用できるものになるかもしれない、とUberは語った。
「長期リースを望む人には、継続しているUberとのパートナーシップに基づきFairが車両を提供できる」とペインター氏は話した。「収益化につながる持続可能な成長を優先するという証拠として、週単位のレンタルの事業をやめる」と同氏は述べた。「FairはUberとのパートナーシップを継続し、従来の月単位のプロダクトを通じてフレキシブルな選択肢を提供する。月単位のプロダクトはうまくいっていて、事業の大半を占めている」。
Georg Bauer(ジョージ・バウアー)氏やその他何人かと共同でFairを創業したペインター氏は昨年10月末にCEOを辞めたとき、Fair.comの代表取締役会長という役割を引き受けた。一方でヒーバー氏がCEOを暫定的に担う。
昨年10月のレイオフ時にペインター氏は、従業員の解雇はソフトバンクのプレッシャーによるものではない、とした。
「ソフトバンクは大株主で、私がフォーカスしていることをサポートしている。それは今でもそうだ」とペインター氏は当時語った。ソフトバンクがそうした変更を行うようにプレッシャーをかけたのか、という質問に対し、「我々をたたいている、という言葉は適さない」と答えた。「彼らは我々をサポートしている。そこには大きな差がある」と強調した。
1週間後の驚きの社長交代、そしてきょうのFair Goについてのニュースはそれぞれ、ソフトバンクそのものが受けているプレッシャーを示している。
Fairの件は、ソフトバンクのポートフォリオにおいて「WeWork爆発」後に続いている悪いニュースの最新版となる。ソフトバンクの巨大なビジョンファンドが財布の紐を固く締め、他のレイターステージ投資家が持続可能なユニットエコノミクスにフォーカスすることにつながるかもしれない。
バーンレート(資金燃焼率)を慌てて抑制することを余儀なくされた、資金を十分に調達した成熟したスタートアップは、往々にしてレイオフを行い、利益を追求してビジネスモデルをシフトする。
巨額の資金に支えられてバリュエーションが膨らみ、その後良好な関係構築に問題を抱えるかもしれないソフトバンクのポートフォリオは大きな打撃を受けている。今週、TechCrunchはFlexportが全従業員の3%にあたる50人を解雇することを報じた。
そのほかにも、ソフトバンク出資のレイオフを行った企業としては全従業員の80%を解雇したZume Pizza、同じく80%を解雇したWag 、25%を解雇したGetaround、6%を解雇したRappi 、そして5%を解雇したOyoがある。
こうした企業はまだ増えるかもしれない。25億ドル(約2800億円)でソフトバンク株を取得した物言う株主である投資管理会社のElliott Management(エリオット・マネジメント)は、より良い企業ガバナンス、投資にかかるさらなる透明性とマネジメントを含め、さまざまな問題に関してソフトバンクと協議を始めたと報じられている。
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(翻訳:Mizoguchi)