2年の歳月と1700万ドル(約18億3000万円)あまりを投じて、品質管理用のロボットの開発に取り組んでいたロサンゼルスのElementary Roboticsが、ついに商用製品の提供を開始した。
CEOのArye Barnehama(アリエ・バーネハマ)氏によると、同社はすでに自動車産業や消費者向け包装製品、航空宇宙、防衛産業などの分野に、トヨタに代表されるような大企業の初期顧客がいる。現在、バーネハマ氏と彼に協力する労働者たちによるロボット技術は、最初のパイロット段階の6社以外にも、他の企業も幅広く利用できるようになっている。
同社のロボットは、大きな箱に3次元で自由度のあるガントリーシステムを付けたもののようで、縦横方向に動くとともにジンバルにマウントされたカメラが製品を可視化できるようにする。
ロボットはオブジェクトをスキャンすると、同社と協力している企業が提供した物体の分類と比較され、欠陥と良品をを判断する。
バーネハマ氏が強調するのは、Elementaryのロボットが製造工程における人間の介入や評価行為に代わるものではないことだ。「機械学習は人間と組み合わせた方が常にうまくいく。結局のところ、工場を動かしているのは人間だ。夜間に明かりを消して無人で動いている工場ではない」とバーネハマ氏はいう。
今回の商用化を支えたのは、2019年末に同社が調達した1270万ドル(約13億7000万円)の資金だ。
その際のリード投資家はThreshold Venturesで、すでに同社のパートナーであるMo Islam(モー・イスラム)氏がElementary Roboticsの取締役会にいる。そのラウンドは既存の投資家であるFika VenturesやToyota AI Ventures、Ubiquity Venturesなども参加し、資金は主にElementary Robotics社の研究開発に投じられる。
イスラム氏は「ロボティクスの中でも、製造業で使われるものに昔から関心があった」と語る。イスラム氏がElementary Roboticsに見ているものは、Cognexのような上場している大企業と競合できる企業だ。また、複雑性が少なくてデプロイが簡単なElementaryのハードウェアも、重要なセールスポイントとしてイスラム氏らの投資を確信させた要素のひとつだ。
Elementaryによると、設置から本番稼働までわずか数日で行えるため企業のコスト削減に貢献し、リモートワークもできるため労働者の安全も確保できる。ユーザー企業がElementaryを気に入っているのはこれらの要素だ。
「我々が今日の立ち上げを喜んでいるのもその点だ。パーツやデータのサンプルをもらったら、その日のうちに動かせるようになる。システムから得られるデータが増えるに従って、機械学習の性能も向上する。そのことが顧客にわかってもらえるのは、稼働開始から1週間後ぐらいだ」とバーネハマ氏はいう。
画像クレジット:Elementary Robotics