ビル・ゲイツ氏が米国が気候変動対策のリーダーになるための案を公表し3630億円規模の予算を提言

Microsoft(マイクロソフト)の共同創設者で世界有数の富豪であり、世界有数の貢献を果たした慈善事業家であるBill Gates(ビル・ゲイツ)氏は、自身のブログで気候変動との戦いで米国がリーダーシップを取るための広範な新提案を公表した

「私たちは世界の物理経済を変革しなければならず、それが、他のさまざまな物事と相まって、創意工夫、資金、連邦政府の関心を強力に呼び込みます。必要な研究を推進できる資源を持つ国は、この国以外にはありません」とゲイツ氏は書いている。

Joe Biden(ジョー・バイデン)新政権が政府を引き継ごうというこの時期は、ゲイツ氏が提言を行うには絶好のタイミングだった。引退間際のDonald Trump(ドナルド・トランプ)政権は、ことさら気候変動対策に抵抗して規制を緩和し、気候変動対策を目的とした国際協定からも脱退(未訳記事)し、人為的な気候変動の脅威を認めれば多くのものを失う産業界のまことしやかな論拠に傾倒し、科学を一蹴してしまった。

ゲイツ氏は、クリーンエネルギー研究のための支出を25億ドル(約2600億円)と大幅に増やして、政府の医療向け支出と並ぶ35億ドル(約3630億円)に引き上げるよう訴えている。それによりクリーンエネルギー化計画を進めつつ、37万件以上の雇用を創出(Breakthrough Energy記事)できるとゲイツ氏は指摘する。

ゲイツ氏によれば、米国人は政府が気候変動関連の研究に充てている予算よりも多くの金額を、わずか1カ月で消費しているという。

単に研究予算を増やせというだけでなく、マイクロソフトで身を立てたこの大富豪は、「エネルギー改革のための国立研究所」のネットワーク構築も呼びかけた。

「気候変動解消のためのイノベーションを導く上で米国が世界に貢献できることの中で、これがもっとも重要」だとゲイツ氏は書いている。

世界のバイオ医療研究に最も多く出資しているゲイツ氏は、米国立衛生研究所をモデルにした特定分野の個別の研究所をとりまとめるエネルギーイノベーション研究所の設立を提言した。1つは輸送の脱酸素化研究所が想定されるが、その他にも、エネルギー貯蔵、再生可能エネルギー、二酸化炭素の回収と管理などが考えられるとゲイツ氏。

さらに同氏は、各団体は研究所から生まれたイノベーションの商品化を推進すべきだと話す。「研究所の中で電気の新しい貯蔵方法を開発するだけでは不十分です。何らかのインパクトをもたらすためには、現実社会で実用性のある手に入れやすいものでなければなりません。それを確かなものにする最良の方法は、研究者たちに、エンドユーザーを念頭に置いて研究を開始するように促すことです」。

そして、こうした研究所を国中に作るようゲイツ氏は求めている。それはちょうど、米エネルギー省やNASAが、米国各地に研究施設を分散させているのと同じだ。

研究施設の設立と予算の倍増に加え、ゲイツ氏は税制優遇措置と、より多くのクリーンエネルギーのためのツールの市場を創設できるエネルギー基準作りも提案している。

現在すでに、Clean Energy Innovation and Jobs Act(クリーンエネルギー改革および雇用法、Breakthrough Energy記事)やAmerican Energy Innovation Act(アメリカエネルギーイノベーション法)(Breakthrough Energy記事)が米国議会で成立されようとしている。これらは米国連邦政府を、より集中的な対策へ迅速に向かわせる助けとなるとゲイツ氏は考えている。しかし、この2つの法案はどちらも膠着状態にある。

ゲイツ氏の気候変動対策の提言書には、米国の大手企業40社も署名し、より強力に気候変動対策をとるよう訴える次期バイデン政権への公開書簡も添えられている(Breakthrough Energy記事)。

「私たちのコミュニティも、私たちの経済も、破壊的なパンデミックのみならず気候変動によるコスト上昇を耐え忍んでいます」と署名した企業は訴える。「前代未聞の山火事、洪水、ハリケーンなどの異常気象は、命と生活に深刻な影響を与えています。今行動しなければ、未来の世代は、環境、経済、健康の面でさらに大きな損害を被るこになると科学が証明しています」。

米国時間12月3日、医学雑誌The Lancet(ザ・ランセット)は、環境激変、公害、気候変動に関連する健康被害の大規模調査の報告書を公開した。

熱波、大気汚染、異常気象は人間の健康被害を増大させていると報告書は伝えている。National Public Radio(npr記事)も伝えていたが、同報告書では死亡、疾病、化石燃料の燃焼との間に明確な因果関係があることを示している。

「炭素を排出する活動や政策は大気汚染、食品の品質低下、住宅の質の低下を招き、それが恵まれない人々に特に過大な健康被害を与えている」とThe Lancetの報告書の著者は分析している。

分断された政府であっても、米国の温室効果ガス排出量削減に向けてバイデン政権にできることは多い。

TechCrunchでもお伝えした(未訳記事)が、インフラ関連の刺激策には、そのすべてにおいて、気候変動緩和関連テクノロジー導入のための予算を大きく取ることが可能だ。

「短期的に発生が予想される大量の深刻な気候関連の問題に【略】実際には再生可能エネルギーは影響しません」と、次期大統領のアドバイザーは話している。

だが、2021年1月、ジョージア州の決選投票の結果、現在は共和党優位の上院で、民主党が与党の座を奪取できたなら、強力な気候変動対策(ゲイツ氏の提言も含まれる可能性がある)が議題にのぼることが期待される。

カテゴリー:EnviroTech
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画像クレジット:Mark Lennihan / AP

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(翻訳:金井哲夫)

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TechCrunch Japan

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