ピンク・フロイドのドラマーも出資するDisciple Mediaはクリエーターエコノミーのためのプラットフォームを構築

2020年は「クリエイターエコノミー」の台頭が注目を集めた。新型コロナウイルスの影響で、何百万人もの人々がお金を稼ぐ方法や自分をアピールする方法を求め、オンラインに溢れた。ポッドキャストの世界は爆発的に広がり、Patreon(パトレオン)やClubhouse(クラブハウス)など多数のプラットフォームも登場した。しかし、そこには厄介な問題が残っている。視聴者は本当にクリエイターのものなのか?それともプラットフォームのものなのか?Mighty Networks(マイティ・ネットワークス)やCircle(サークル)、Tribe(トライブ)などの企業は、この問題に対処しようとしており、ソーシャルネットワークよりもクリエーターが視聴者をコントロールできるようにしている。そして今、新たな企業がこの議論に加わった。

Disciple Media(ディサイプル・メディア)は、オンラインクリエーターがコミュニティ主導のビジネスを構築できるようにするためのSaaSプラットフォームを提供している。同社は先日「大規模なエンジェルラウンド」と称する投資ラウンドで、600万ドル(約6億6200万円)の資金を調達した。2018年の起ち上げ以来、同社はすでに200万人のメンバーと500のコミュニティを獲得しているという。投資家には、Pink Floyd(ピンク・フロイド)のドラマーであるNick Mason(ニック・メイソン)氏、Cray Computers(クレイ・コンピューター)のCEOで、Classic FM(クラシック・エフエム)やQuantel(クァンテル)、Cosworth Engineering(コスワース・エンジニアリング)の創業者であるSir Peter Michael(ピーター・マイケル卿)、Jellyfish(ジェリーフィッシュ)の創業者兼CEOであるRob Pierre(ロブ・ピエール)氏、Sabre Insurance(セイバー・インシュアランス)の元会長Keith Morris(キース・モリス)氏などが名を連ねている。また、同社の新たな会長に、オンラインマーケットプレイス、SaaS、出版・メディア業界の専門家であるEirik Svendsen(アイリック・スヴェンセン)氏が就任したことも発表された。

現在までにそのコミュニティには、米国のカントリースターであり、TV番組「American Idol(アメリカン・アイドル)」の審査員も務めるLuke Bryan(ルーク・ブライアン)氏、Rod Stryker(ロッド・ストライカー)氏、Body by Ciara(ボディ・バイ・シアラ)などが参加している。このプラットフォームは、iOSとAndroidに対応し、コミュニティ管理ツール、CRM、マネタイズ用オプションなどを備えている。同社は、クリエイターたちが「毎年数百万ドル(数億円)の収益を上げている」と主張している。

Disciple Mediaの創業者でCEOのBenji Vaughan(ベンジ・ヴォーン)氏は、次のように述べている。「クリエイター・エコノミーの拡大と急成長は驚異的であり、今日その成長を牽引しているのは、YouTube(ユーチューブ)やソーシャルネットワークの外で独立したビジネスを構築しようとする起業家精神にあふれたクリエイターたちです」。

テクノDJでアーティストから起業家に転身したヴォーン氏は、顧客のために同様のコミュニティを構築した後、このアイデアを思いついたという。Discipleコミュニティで作成されたデータは、ネットワークを構築したホストが完全に所有しており「第三者のリスクを排除し、洞察をすぐに行動に移すことができる」と、同氏は述べている。

ヴォーン氏は筆者に次のように語った。「私たちは、実質的な『ソーシャル・ネットワークのためのギグエコノミーワーカー』という立場から、逆にソーシャルネットワークを自分のニーズに合わせて利用するビジネスのオーナーへと移行しつつあります。したがって、これらの人々は、ビジネスを構築するためにソーシャルネットワークを離れ、他の世界の事業者と同じく、マーケティングチャネルとしてソーシャルネットワークを利用し始めています。このような移行が起こり、彼らが主要なプラットフォームとしてのソーシャルネットワークから離れると、データが集まるハブが必要になります。彼らのオーディエンスは、ホストとつながっているのと同様に、それ自体がつながったコミュニティであると、私たちは考えています」。

ヴォーン氏は、クリエイティブエコノミーにおけるSalesforce(セールスフォース)やHubSpot(ハブスポット)に相当するものは、コミュニティプラットフォームであると考えている。「それは、価値あるオーディエンスやコミュニティエンゲージメントに関するすべての情報を集約する場所です。そこで、私たちは、HubSpotのサイトが技術系企業やSaaS企業向けに提供しているものと非常に近いものを、時間をかけて構築していきたいと考えています。それはつまり、ユーザーとのエンゲージメントを管理し、ユーザーベースを拡大し、それを収益につなげるための完全なパッケージ、完全なプラットフォームです」。

Jellyfishの創業者兼CEOのロブ・ピエール氏は、次のように述べている。「デジタルなコミュニティで創作を行い、人々を引き寄せることは、かつてないほど重要になっています。Discipleは、完全に実用的で豊富な機能を備えたプラットフォームであり、わずかな前払いの支出のみで、これら2つのことを行うことができます。また、コミュニティを収益化するためのさまざまなオプションも提供しています」。

関連記事
TumblrがZ世代のクリエイターのためのサブスクサービスPost+を開始
YouTubeが新しい収益化機能「Super Thanks」発表、個別の動画に対してクリエイターに投げ銭可能に
クリエイターの作品発表を支援するnoteと「バーチャルマーケット」のHIKKYが提携、VRクリエイターの創作環境作りを加速

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Disciple Mediaクリエイタークリエイターエコノミー資金調達SNS

画像クレジット:Benj Vaughan, Disciple Media

原文へ

(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。