フィル・リビン、Evernoteの危機一髪を語る:2008年の金融危機には3週間分の現金しか残っていなかった

今やEvernoteはユーザー数7500万人を越え、時価総額10億ドル以上と報じられているが、会社は数多くの危機一髪に直面してきた。実際、2008年の金融危機には投資家がドタン場で逃げだし、わずか3週間分の現金しか残っていなかった、とCEO Phil Libinが今日(米国時間10/20)、カリフォルニア州クパチーノで行われたY Combinatorスタートアップスクールで語った。

その投資家はLibinに電話をよこし、リーマンショックで株式市場が崩壊し、資金の60%が消えたと言った。

投資家はLibinに「出資はできない」と告げた。

「われわれはうろたえた。それから一週間、あらゆる知人に半狂乱で電話をかけた」とLibinは言った。

彼は、これらの融資交渉で「独占」契約を結んでいたため、他の投資家と交渉を進める権利を失っていた。

そして彼は窮地に追い込まれた。資金調達に残された期間が2週間になった時、LibinはEvernoteを畳み、全員を解雇するという痛恨の決断を下した(彼いわく、手持ち現金を全部使うわけにはいかない、なぜなら会社を畳むための法的費用を残す必要があるから)。

「午前3時、大人になるのはこういうことかと1人考えたことを思いだす」と彼は言った。「これが、大人の決断を下すこというものなのか。最悪だ」。

しかし、その時奇跡に近いことが起きた。

スウェーデンのある熱狂的Evernoteユーザーから電話がかかってきた。彼はこの製品を使って2ヵ月になる、とLibinに告げた。そして、Evernoteは自分の人生を変えた ― より幸せになり、考えがまとまるようになった ― と彼は言った。

Libinはこう回想する。「すばらしい。いい気分だ。たぶん、もしスウェーデンの誰か一人を変えることができるなら、それで十分だろう」

今も匿名を希望するそのユーザーは、やがて何がしかの投資を申し出た。20分後、2人はSkypeで話し、その約1週間、投資家はEvernoteに50万ドル送金した。

その資金は、若き会社が牽引力を証明し、それまで投資家を遠ざけてきた複雑な法的構造を修正するために十分な準備期間を与えた。

まず、日本のDoCoMo Capitalからの出資と、Sequoia Capitalのリードによる何回かの調達ラウンドを確保した。

自らの危機一髪について話し終えた後、Libinは若きファウンダーたちにいくつかの重要なアドバイスを与えた。

1. 共同ファウンダー候補と友達になれ。「若い時に出来るいちばん重要なことは、、輝ける、エネルギッシュな、無償奉仕をいとわない、人生最大の友を見つけることだと私は思う」

彼は、以前立ちあげたEngine Fiveなどの会社から、今も多くの重要人物がEvernoteに残っていることを話した。

「会社を作れないような人とは友達にならない方がいいと言ってもいい。そうだろう? 作れる友達の数には限りがあるんだから」と彼はジョークを飛ばした。

2. 法制度に関して小利口になるな。Evernoteは元々2つの会社が合併して出来た ― Libinのスタートアップと、同じアイデアを持っていたシリコンバレーの会社だ。

「われわれは法制度に長けすぎていた。 おかげで数年間資金調達不能に陥った」とLibinは言った。

「あれは完全な間違いだった。2つのチームの個性は最高だった。すごい製品を作ることもできた。しかし、一人前になる前に、やり直して修正する必要があった。われわれの小利口さ ― この異例なしくみを維持しようとした ― が、恐らく18ヵ月を無駄にした。

3. 自分自身のための製品を作れ。Evertoneは、彼が一生情熱をかけてもよいと思った初めての会社だった、と彼は言った(以前の会社は企業や政府機関との契約に依存していた)。

Evernoteでは、違うことに挑戦した。「こう思ったんだ ― ずっとそこにいたい会社を作ろう。出口戦略がないことを明言しよう。われわれ自身の仕事にとって最高だといえる何かを作ろう、と」。

Libinは、今その効果が出ている、なぜなら会社が大きくなればなるほど、仕事は難しくなるからだと言う。

「物事は良くなっていく。しかし、易しくはならない」と彼は言った。「もし、物事を易しくすることに力を入れようとするなら、それは正しくない。物事は常に難しくなり続ける。毎日毎日が楽しいわけではない。毎月毎月は、本当に満足している。ものすごく満足している。しかし、これがうまく唯一の理由は、われわれが、やるに値する壮大な何かを見つけたからだ。」

「5年前、自分自身のために何かを作れとアドバイスすることは愚かだったかもしれない。しかし今は、もし自分が大好きなものを作り、それが十分に壮大であると信じているなら、世界にはあと数十億人これを大好きになる人がいるかもしれない ― 君がよほど変人でなければ」

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi)


投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。