ラズパイより簡単なIoT開発ボード「obnize」が機器の遠隔監視に活用へ

独自の開発ボードを軸として、インターネット経由で簡単に様々な機器をIoT化できるプラットフォーム「obnize(オブナイズ)」。昨年“ラズベリーパイよりも簡単にIoTプログラミングに挑戦できるサービス”として紹介したこのプロダクトが、事業用途でも注目を集め始めているようだ。

開発元のCambrianRobotics(カンブリアンロボティクス)は3月12日、ティッセンクルップ・アクセス・ジャパンと協働で、obnizeを活用した在宅介護用階段昇降機(家庭用いす式リフト)の遠隔監視システムの実証実験をスタートしたことを明らかにした。

ティッセンクルップ・アクセス・ジャパンは階段昇降機の世界的メーカーであるドイツのティッセンクルップ・アクセス社の日本法人。同社が開発する介護用の機器にobnizeを導入し、運転状況やバッテリーの寿命、機器のトラブルなどをリアルタイムで遠隔から検知しようというのが今回の試みだ。

保守管理に人手をかけられない機器のIoT化を加速

在宅介護が増える中、家庭用のいす式階段昇降機は日本国内だけでも10万台以上が利用されているそう。オフィスビルのエレベーターなどに使われている遠隔監視や臨時対応システムは一般的に導入されておらず、安全性向上や人的コスト削減の観点で改良の余地があったという。

「最初に言われたのが、バッテリーの劣化を遠隔でモニタリングする仕組みが欲しいということ。劣化すると機器が突然止まってしまう可能性もあり、高齢者が実際に利用している間に止まると危ない。(obnizeを組み込むことで(『どうもあと3ヶ月くらいで寿命を迎えそうだ』といったことを遠隔から把握できるようになる」(CambrianRobotics代表取締役CEOの佐藤雄紀氏)

前回も紹介した通り、obnizeの特徴は機器をIoT化する際の“ハードルの低さ”だ。

obnizeを使えばインターネット経由でさまざまなプログラム言語から機器の制御が可能。従来IoTプロダクトを開発する際に障壁となっていた「組み込みデバイスにおけるファームウェアの作成(ハードウェアを制御するソフトウェア)」も必要ない。

幅広い用途で活用できることに加え、個人ユーザーが多いこともわかるようにコストの観点からも導入しやすいのもウリ。複数台をクラウドにつなぎ、リアルタイムで一元管理することも容易だ。

今回の実証実験ではWeb上からobnizeを搭載した機器の電圧を遠隔からリアルタイムで確認できるほか、発生したエラーを日付順で把握する機能や、ボタンを押すことで再起動する機能を提供する。

「遠隔から『何時にどんなエラーが起きたのか』がわかれば、現地に行かずとも状況を把握しサポートできる。中には一度再起動すると正常に動くようなケースも多く、(遠隔管理できるようにすることで)サポートレベルの向上はもちろん、保守・修理を担当するエンジニアの負担を減らすことにも繋がるのではないかと考えている」(佐藤氏)

両社では今回の実証実験を通じてIoTによる機器管理の精度を高め、将来的には全国のティッセンクルップ・アクセスの家庭用昇降機を遠隔で一元管理することを目指す計画。またCambrianRobiticsとしては「保守管理に人手をかけられない機器のIoT化」をひとつの軸に、様々な企業とobnizeを活用した取り組みを進めていく方針だという。

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TechCrunch Japan

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