リストラから2年経ったDockerが4倍増の年間経常収益を達成してコンテナ化市場にカムバック

2013年に創業したオープンソースのコンテナ企業Dockerにとって、至近の2年は確かに波乱の年だったが、それでもやっと正常な財務基盤を再び見つけたようだ。米国時間2月1日、同社は、最前の年間経常収益(ARR)が前年比で4倍増し、5000万ドル(約57億4000万円)を超えたと発表した。

2019年以降、混迷していた同社にとってそれは見事なカムバックだ。同年、CEOのSteve Singh(スティーブ・シン)氏はその座を去り、短い期間、Rob Bearden(ロブ・ビアーデン)氏に代わった。そのすぐ後に同社は、主な収益源だったエンタープライズ事業を手放し、長い間、役員だったScott Johnston(スコット・ジョンストン)氏はCEOに昇格した。

当時、同社は新たに資金を調達して、出直しすることになっていた。実際のところ同社は、シリーズAの企業としてその投資を受け取った。同時に同社は、開発者を主軸とする新しい戦略を実装し、400名いた社員をわずか60名に減らした。その数カ月後に、パンデミックの第一波が襲った。不安定な時期を乗り切らなければならなかったジョンストン氏にとってそれは、容易な時間ではなかった。

ジョンストン氏は「2019年11月はリスクと不確実の時期だったが、私たちは市場の追い風を信じ、また弊社プロダクトへの開発者の愛を信じて、チーム一丸となってデベロッパーにフォーカスし、優れたプロダクトをお届けするとともに、まっとうなビジネスを築いていった」と述べている。

Dockerはその不確実な中にあって、いくつかの利点を抱えていた。1つは、開発者間における広範なブランド認知であり、アプリケーションのコンテナ化といえばDockerという定評があった。それはソフトウェアを、1つの一枚岩的なアプリケーションではなく、クラウド上の個々のサービスの集まりとしてパッケージし配布する方式だ。

さらに同社には大量のオープンソースのコードがあり、それは営業の糸口にもなりうるものだった。そのため同社の無料のプロダクトのユーザーを有料の顧客に変えていく可能性もあった。ARRの急増から見ると、2021年はまさにその変化が増加傾向で起きたようだ。

初期の構造改革の目標は、ブランドに対するデベロッパーの愛着や信頼を軸として、彼らに無料のオープンソースのプロダクトを提供し、彼らの何割かを時間をかけて有料のプロダクトのユーザーに変えていくというものだった。それは、Docker Enterpriseを主に企業のITに売っていた頃に比べるとまったく違うアプローチであり、デベロッパーとその管理者を顧客の中心に据えるものだった。

この、プロダクトが引っ張る形の成長は商業的にも成功し、管理者たちが関連の商用ツールを買い始めた。「デベロッパーが無料のプロダクトで良い経験をし、チーム全体としてもツールを使うようになると、そこには管理者の機能もあるから、彼らは金を払ってでも使おうという気になる」とジョンストン氏は述べる。

彼はさらに「ブログにも書いている私たちのパフォーマンスの向上は、大きな企業がそんな生産性上の利点を理解しているからこそのものだ。彼らは管理レベルのセキュリティツールを有料で利用し、その全社的な採用を可能にしています」という。

Dockerは2013年に創業し2019年にリストラしたが、そのとき、そのエンタープライズ事業をMirantisに売り、Benchmark CapitalとInsight PartnersがリードするシリーズAで3500万ドル(約40億2000万円)を調達した。そして2021年3月には、2300万ドル(約26億4000万円)のシリーズBを手中に収めた

リストラのとき、私は次のように書いた。「このやり方が有効かまだわからないが、ジョンストン氏はこれを前に進むための道だと見ている。この戦略の有効性は、時間が教えてくれるだろう」。

ARRは5000万ドルを超えたが、陪審員たちはまだ審議中かもしれない。でも確実にいえるのは、同社が正しい方向に向かっているということであり、多くの投資家たちも満足だろう。この勢いを、失わないようにして欲しい。

画像クレジット:Ron Miller/TechCrunch

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

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TechCrunch Japan

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