KnativeがCNCFのプロジェクトになった

Cloud Native Computing Foundation(CNCF)は、今日の最も重要なオープンソースプロジェクトのホームであり、Kubernetesもその1つだ。米国時間3月2日、CNCFの技術監督委員会(Technical Oversight Committee)が、KnativeをCNCFのインキュベーションプロジェクトとして受け入れたことを発表した。

CNCFのCTOであるChris Aniszczyk(クリス・アニシュチェク)氏は「Knativeはクラウドネイティブのエコシステムに良質に統合された強力な技術であり、サーバーレスのコンテナを容易に動かせるようにしてくれる。このプロジェクトは当財団のオープンガバナンスモデルの下でさらに成長し、新たなコントリビューターやエンドユーザーに到達するだろう。Knativeのコミュニティと一緒に仕事をすることが楽しみであり、チームのコントリビューションを歓迎する」と述べている。

Knativeは「ケイネイティヴ」と読み、2018年にGoogleが開発したが、その後IBMやRed Hat、VMware、TriggerMesh、SAPなど業界の重鎮たちも貢献した。このプロジェクトの基本的な考え方は、Kubernetes上でサーバーレスおよびイベントドリブンのアプリケーションを容易に構築、デプロイ、そして管理できるようにすることだ。今は多くのエンタープライズがデジタルトランスフォーメーションの一環として新しいアプリケーションを開発したり、既存のアプリケーションをモダナイズするとき、まさにその方向に進んでいる。そしてKnativeは今なお極めて若いプロジェクトだが、すでにBloombergやAlibaba Cloud、IBM、VMwarenなどはプロダクションでそれを使っており、またGoogleはKnativeを使ってGoogle Cloudのサーバーレスコンピューティングプラットフォームを運用している。

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このプロジェクトは2021年11月にバージョン1.0の節目に達し、その直後にGoogleが、プロジェクトをCNCFに検討のために付託したと発表した。現在、その段階が完了したためGoogleはKnativeの商標とIPとコードをCNCFに寄贈することになる。

Knative推進委員会とDOCS-UXのリードであるCarlos Santana(カルロス・サンタナ)氏は次のように述べている。「Knative 1.0で安定に達したこのプロジェクトを、特定のベンダーに偏らないホームへ寄贈することは、プロジェクトの今後の成長とコミュニティの自己統治を可能にする次のステップです。私たちの信ずるところによれば、CNCFこそがそのベンダー不偏の団体であり、そこがKnativeを受け入れたことで今後多くの企業が採用する気になり、プロジェクトの寄与貢献や宣伝もしてくれるでしょう。また、Knativeのコミュニティが、自身が利用しているすべてのプロジェクトに限らず、このエコシステム内のその他のクラウドネイティブプロジェクトにも接近して、フィードバックと機能の善循環を確立するでしょう」。

画像クレジット:bugphai/Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

リストラから2年経ったDockerが4倍増の年間経常収益を達成してコンテナ化市場にカムバック

2013年に創業したオープンソースのコンテナ企業Dockerにとって、至近の2年は確かに波乱の年だったが、それでもやっと正常な財務基盤を再び見つけたようだ。米国時間2月1日、同社は、最前の年間経常収益(ARR)が前年比で4倍増し、5000万ドル(約57億4000万円)を超えたと発表した。

2019年以降、混迷していた同社にとってそれは見事なカムバックだ。同年、CEOのSteve Singh(スティーブ・シン)氏はその座を去り、短い期間、Rob Bearden(ロブ・ビアーデン)氏に代わった。そのすぐ後に同社は、主な収益源だったエンタープライズ事業を手放し、長い間、役員だったScott Johnston(スコット・ジョンストン)氏はCEOに昇格した。

当時、同社は新たに資金を調達して、出直しすることになっていた。実際のところ同社は、シリーズAの企業としてその投資を受け取った。同時に同社は、開発者を主軸とする新しい戦略を実装し、400名いた社員をわずか60名に減らした。その数カ月後に、パンデミックの第一波が襲った。不安定な時期を乗り切らなければならなかったジョンストン氏にとってそれは、容易な時間ではなかった。

ジョンストン氏は「2019年11月はリスクと不確実の時期だったが、私たちは市場の追い風を信じ、また弊社プロダクトへの開発者の愛を信じて、チーム一丸となってデベロッパーにフォーカスし、優れたプロダクトをお届けするとともに、まっとうなビジネスを築いていった」と述べている。

Dockerはその不確実な中にあって、いくつかの利点を抱えていた。1つは、開発者間における広範なブランド認知であり、アプリケーションのコンテナ化といえばDockerという定評があった。それはソフトウェアを、1つの一枚岩的なアプリケーションではなく、クラウド上の個々のサービスの集まりとしてパッケージし配布する方式だ。

さらに同社には大量のオープンソースのコードがあり、それは営業の糸口にもなりうるものだった。そのため同社の無料のプロダクトのユーザーを有料の顧客に変えていく可能性もあった。ARRの急増から見ると、2021年はまさにその変化が増加傾向で起きたようだ。

初期の構造改革の目標は、ブランドに対するデベロッパーの愛着や信頼を軸として、彼らに無料のオープンソースのプロダクトを提供し、彼らの何割かを時間をかけて有料のプロダクトのユーザーに変えていくというものだった。それは、Docker Enterpriseを主に企業のITに売っていた頃に比べるとまったく違うアプローチであり、デベロッパーとその管理者を顧客の中心に据えるものだった。

この、プロダクトが引っ張る形の成長は商業的にも成功し、管理者たちが関連の商用ツールを買い始めた。「デベロッパーが無料のプロダクトで良い経験をし、チーム全体としてもツールを使うようになると、そこには管理者の機能もあるから、彼らは金を払ってでも使おうという気になる」とジョンストン氏は述べる。

彼はさらに「ブログにも書いている私たちのパフォーマンスの向上は、大きな企業がそんな生産性上の利点を理解しているからこそのものだ。彼らは管理レベルのセキュリティツールを有料で利用し、その全社的な採用を可能にしています」という。

Dockerは2013年に創業し2019年にリストラしたが、そのとき、そのエンタープライズ事業をMirantisに売り、Benchmark CapitalとInsight PartnersがリードするシリーズAで3500万ドル(約40億2000万円)を調達した。そして2021年3月には、2300万ドル(約26億4000万円)のシリーズBを手中に収めた

リストラのとき、私は次のように書いた。「このやり方が有効かまだわからないが、ジョンストン氏はこれを前に進むための道だと見ている。この戦略の有効性は、時間が教えてくれるだろう」。

ARRは5000万ドルを超えたが、陪審員たちはまだ審議中かもしれない。でも確実にいえるのは、同社が正しい方向に向かっているということであり、多くの投資家たちも満足だろう。この勢いを、失わないようにして欲しい。

画像クレジット:Ron Miller/TechCrunch

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

コンテナ化されたアプリをオンプレミスまたはクラウドで実行できるようにする新しいAWS Marketplaceオプション

コンテナが急増するにつれ、開発者はコンテナを使用してソフトウェアを配布するようになっている。だがオンプレミスかクラウドかの環境によって、ユーザーにはコンテナのインストールに関わる一連の課題が残される可能性がある。この問題を解決するために、AWSは米国時間11月30日、ラスベガスで開催中のAWS re:Inventで、AWS Marketplace for Containers Anywhere(AWSマーケットプレイス・フォー・コンテナズ・エニウェア)を発表した。

製品の名前はあまりクリエイティブではないかもしれないが、それは何をするものかを正確に説明している。開発側がコンテナをAWSのマーケットプレイスで提供すれば、ユーザーはそれをどこにでもデプロイできるのだ。ここでの狙いは、AWS Marketplace上で、コンテナ化されたアプリケーションを検索する手段を提供し、それらをサブスクライブして、任意の環境のKubernetes(クバネティス)クラスターに簡単にデプロイする方法を提供することだ。

AWSのChanny Yun(チャニー・ヤン)氏は、新機能を発表したブログ投稿で「このリリースによって、Amazon EKS Anywhereを使ったオンプレミス環境や、Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC 2) やオンプレミス環境上でお客様ご自身で管理されているKubernetesクラスターに対して、サードパーティのKubernetesアプリケーションをデプロイできるようになりますので、最終的にどこにデプロイするかに関係なく、単一のカタログを使用してコンテナイメージを検索することができるようになります」と書いている。

ヤン氏が指摘するように、これにより、柔軟な請求オプション、アプリケーションのセキュリティスキャンが済んでいるという情報、管理の簡素化など、マーケットプレイスを使用する際のすべての利点がユーザーに提供される。なにより大きな利点の1つは、ライセンスを変更するだけでさまざまな環境に展開できる柔軟なライセンス方式だ。

またヤン氏は「この機能を使用してアプリケーションをサブスクライブすれば、独立系ソフトウェアベンダー(ISV)が提供するHelm(ヘルム)チャートを、AWS上のISVのKubernetesクラスタにデプロイすることで、ご自身のKubernetesアプリケーションをAWSに移行できます」とも書いている。

AWSは、AWS Marketplace for Containers Anywhereが、AWS Marketplaceをサポートしているすべてのリージョンで利用できるようになったと発表した。

画像クレジット:Jason Alden/Bloomberg/Getty Images

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(文: Ron Miller、翻訳:sako)

SuborbitalがスケーラブルなサーバーアプリケーションWebAssemblyプラットフォームで1.8億円調達

スケーラブルなサーバーアプリケーションを作るためのオープンソースのWebAssemblyプロジェクト、Atmoを提供しているSuborbitalが、Amplify Partnersがリードする160万ドル(約1億8000万円)のシードラウンドを調達したことを発表した。このラウンドには、GitHubの前CTOであるJason Warner(ジェイソン・ワーナー)氏やAtlassianのCTOであるSri Viswanath(スリ・ヴィスワナート)氏、FastlyのCTOであるTyler McMullen(タイラー・マクマレン)氏、Goliothの創業者Jonathan Beri(ジョナサン・ベリ)氏、RapidAPIのエンジニアリング副社長Vijay Gill(ビジェイ・ギル)氏、およびCommsorの創業者であるMac Reddin(マック・レディン)氏ら、多くのエンジェル投資家が参加した。

同社はまた、Suborbital Computeの公開ベータのローンチを発表した。一見するとこれは、ややおかしなプロダクトと思えるかもしれない。SaaSのサービスがベーシックなドラッグ&ドロップによる統合を超えて、自分のプロダクトに拡張性を持たせようとすると、そういう拡張をデベロッパーがプロダクトの中に書けるためのツールが必要だ。しかしそれらのユーザーファンクションは大量のセキュリティ問題を抱えてしまう。そこでデベロッパーがSuborbital Computeを使うと、SaaSのデベロッパーはエンドユーザーに、自分独自のファンクションを書き、WebAssemblyのサンドボクシングプロパティで自分のプロダクトを拡張する能力を与える。そのプロパティはAtmosや、Suborbitalのその他のオープンソースツールのベースであり、多くのガードレールを提供する。

しかし、それは単なるスタートだ。Suborbitalは、もっと野心的なプロジェクトだ。CEOで創業者のConnor Hicks(コナー・ヒックス)氏によると、同社のミッションは「私たちが1つの産業としてのコンピュートに関して考え、それをデプロイするときの考え方そのものです」。ヒックス氏は以前、1Passwordプラットフォームのチームで仕事をし、1Psswordのコマンドラインインターフェースや、そのエンタープライズプロダクトなどのツールを作っていた。その後は同社のエンタープライズプロダクトのR&Dのトップになったが、そこで彼はサイドプロジェクトとして、最初はDockeをベースとする「分散ファンクション・アズ・ア・サービス」のシステムを作っていた。しかし、Dockerではあまりに遅いため、WebAssemlyに移行した。しかし、それによって彼は、予想以上の複雑性に遭遇した。その大部分は、それが動くためのグルーコードを全部自分で書くことだった。でも、ほぼ2年前にやっと、すべてが順調に動き出した。

「そこで、そのときやってたことをもっと真剣に考えるようになり、時間も割くようになって、そこから出てきたものが、WebAssemblyのファンクションのスケジューラー、今日のReactrプロジェクトだでした」とヒックス氏は説明する。ReactrはGoのライブラリだったが、多くの人は純粋なWebAssemblyのサービスの方に関心を持った。そしてそれが今のAtmoプロジェクトになり、Suborbitalの中核的プロダクトになった。

「Atmoと名づけた大きな実験は、『宣言的に書かれているウェブサーバーのアプリケーションを、ユーザーがボイラープレートをまったく書かずに動かすにはどうするか』というテーマでした。そこで宣言的な記述と大量のファンクションでWebAssemblyをコンパイルして、このウェブサービスをビルドして動かすやり方、そのセキュリティ、自動的な高速化、そしてユーザーの手作業による配管工事の不要化、等々がわかってきました」とヒックス氏の説明する。

AtmoでSuborbitalは、サーバーサイドのWebAssemblyに賭け、デベロッパーはRustやSwiftやWebAssemblyなどの言語でコードを書ける。それらはWebAssemblyにコンパイルされ、Atmoがデプロイし管理して、サンドボックス化された環境で動く。Atmoの核は、WebAssemblyのモジュールを動かすスケジューラーであり、しかもネイティブに近いパフォーマンスを約束している。

ヒックス氏が考える今後の姿は、多くのアプリケーション、中でも特にエッジのアプリケーションのデプロイで、このやり方がコンテナの役割に挑戦することだ。「リソースに制約のあるエッジの小さな環境では、ベアメタル上のWebAssemblyがコンテナの必要性のかなりの部分を置き換えてしまうのではないか、と彼はいう。

しかし、なぜ今どきこんなニッチのプロダクトをローンチするのか?「Atmo Pro」のようなものの方が、もっと妥当ではなかったか?しかしヒックス氏の主張では、それはまだ早いという。考え方そのものがまだとても若いので、マーケットの状況はまだそれに対して熟していない。

「Atmoサービスをホストすればお金になるほど、広く普及してはいません。Atomのホスティングや、有料のプロバージョンで儲けるなんて不可能だと気づいた以来、私は『多くの人がお金を払ってでも購入したいと思うような、実際にビジネスを構築できるものは何か?』と自問しています」とヒックス氏はいう。

ヒックス氏によると、現在、チームは4名だがすでにパートナー探しを始めている。ただし2022年は、インフラストラクチャを大きくして、オペレーションの能力を上げることが先決だという。

画像クレジット:Yuichiro Chino/Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

透明性が高く持続可能なサプライチェーンを作るためにPortcastが約3.5億円調達

Portcastの創業者であるシャ・リンシャオ博士とニディ・グプタ氏(画像クレジット:Portcast)

多くの製造業者や運送業者にとって、物流管理は未だに手作業ばかりのプロセスである。電話やオンライン照会での出荷追跡に、エクセルのスプレッドシートへのデータ入力。自社を「次世代の物流運営システム」と称するPortcast(ポートキャスト)は、無数の情報源からデータを集め、リアルタイムで出荷物を追跡するだけでなく大きな天候の変化、潮流やパンデック関連の問題など何がその進行に影響を与えるか予測することにより、プロセスを効率化する。

同社は2021年9月上旬、Imperial Venture Fund(インペリアル・ベンチャー・ファンド)を通じたNewtown Partners(ニュートン・パートナーズ)率いるプレシリーズA 資金調達で320万ドル(約3億5000万円)を集めたと発表した。参加したのはWavemaker Partners(ウェーブメーカー・パートナーズ)、TMV、Innoport(イノポート)、SGInnovate(SGイノベート)。シンガポールに拠点を置くPortcastは、アジアとヨーロッパの顧客にサービスを提供し、調達資金の一部はさらなる市場への拡大に充てる。

共同創設者のNidhi Gupta(ニディ・グプタ)とLingxiao Xia(シャ・リンシャオ)博士は、シンガポールのEntrepreneur First(アントレプレナー・ファースト)で出会った。Portcastを立ち上げる前、最高経営責任者  のグプタ氏はDHLのアジア全域でリーダー職に就いてきた。その間に、彼女は物流部門の「非効率は実際にはこの分野において何かを作り出す機会である」ことに気づいた。機械学習の博士号を持ち、製品開発とクラウドコンピューティングの背景を有するシャ博士は「すばらしく補完的に合っていた」ことから、現在Portcastの最高技術責任者を務めている。

Portcastは、外洋貨物船を使用した世界の取引額の90%以上、航空貨物の35%を追跡し、3万本の通商路への需要を予測できるという。情報源は船の場所、進行速度と方向、向かっている港、風速、波高を示す衛星データなどの地理空間データなどがある。また、Portcastは経済様式(例えば、Brexit(ブレグジット)の英国中の港への影響、世界中のワクチン接種の開始により航空機や船の定員がどれくらい変わるか)、台風など気象事項、スエズ運河が航路をふさいだ時のような混乱にも目を向ける。

他には大規模な船会社や運送業者を含む顧客の独占的な取引データなどのデータ源がある。

「私達の挑戦は、いかにこのすべてのデータに同じ言語をしゃべらせるかです」。グプタ氏はTechCrunchに話した。「このデータはさまざまな頻度、詳細度で入ってくるため、いかにそれを組み合わせて機械がそれを理解、解釈し始めるようにするか」。

Portcastの主な解決策は、現在リアルタイムで輸送コンテナを追跡するIntelligent Container Visibility(インテリジェント・コンテナ・ビジビリティ)と、予約形態を追跡するForecasting and Demand Management(フォーキャスティング・アンド・デマンド・マネジメント)の2つである。Portcastはコンテナの追跡にIoTを利用しない。1つ1つに装置を取り付けると桁違いの費用がかかるからである。しかしハイブリッドな解決策のためにIoTプロバイダと連携している。例えば、追跡装置を1つのコンテナに設置し、その後そのデータを使用して残りの出荷物の管理に役立てているのである。

このスタートアップ企業の目標は、企業が運営効率を向上させるのに役立つ予測を行い、手作業のプロセスへの依存を減らすことである。「毎週何百個もの貨物が到着する物流業者がいます。そこでは毎日手作業でそれを確認しているのです。情報はエクセルシートに入力され、それに基づいて下流業務の計画を立てます」。と、グプタ氏はいう。

しかし新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックは「緊急のデジタル化ニーズ」を生み出し「それはサプライチェーンを費用関数から時間通りに製品を入手することの中核へと形を変えました。そのため私達はいくつかの大規模な製造業者や運送業者と連携しています」。と、彼女は付け加えた。例えば、ヨーロッパのある食品および飲料会社は台北に輸送したが、通常は輸送に70日かかる。しかし到着まで3カ月以上もかかった。Portcastはさまざまな港や船を渡り歩く積荷を追跡し、顧客が遅延の原因を理解するのを助けた。

「中断が起きそうな時を予測するだけでなく、ピンポイントで、台風や積み替えが発生しそうだからX日遅れると伝えます。そうすればトラックや倉庫チームに何台のコンテナが到着するか知らせられるため力になれるのです」。と、グプタ氏はいう。「これにより港費、コンテナの延滞料金、手作業でさまざまな会社のウェブサイトを確認しサプライチェーンに何が起こったかを見つけ出そうとするのに要する時間を削減することができます」。

Portcastがサプライチェーンの可視性を正したい他の物流テックスタートアップ企業より勝る点は、船が通常複数の港を通り、熱帯暴風雨や台風などの気象事象を頻繁に回避しなければならないアジア太平洋地域で発売したことにある。シンガポールとマレーシア間(例えば)の航海を短くするためにPortcastが開発した技術は、アジアとヨーロッパ、またはアジアと米国などを結ぶ大陸間航路にも適用される。

「当社の技術は世界規模で、この市場の他のプレイヤーとの競争力を持ちます」。とグプタ氏は語った。「他に当社を差別化しているのは、製造業者とだけでなく、船会社、物流会社、貨物航空会社とも提携し、それによりネットワーク効果を作り出している点です。海上運送と航空運送で起きていることは非常に強い相乗効果があり、それを基に私達はその業界の型を理解することができ、当社のプラットフォームに移ってくる他社のためのレバレッジを生んでいる。

Portcastには予測型AIから処方型AIを含むよう移行する計画がある。現在、このプラットフォームは企業に遅延の原因を伝えることができているが、処方型AIは自動提案を行うこともできる。例えば、顧客にどの港が速いか、中断を回避するのに役立つ他の船や輸送方法、どうやって対応量を最適化するかを伝えることができる。

また、同社は年末までにOrder Visiblity(オーダー・ビジビリティ)を発売することも計画している。これは特定の品目を入れたコンテナを追跡する機能である。疲弊したサプライチェーンにより多くのさまざまな製品の消費者価格は上昇している。企業が特定のSKUをリアルタイムで追跡できるようにすることで、Portcastは物がもっと早く届くのを助けるだけでなく、各輸送で排出されるCO2量も可視化させることができる。

「カーボンオフセットやカーボントレードは、自分が実際にいくら支出しているか可視化できる場合にのみ生じます。そこに私達は関与することができます」とグプタ氏はいう。「例えば、早く到着すれば、船会社が船を減速させバンカー重油のような燃料費用を節約する機会となり、膨大な費用節約となるだけでなく、CO2排出量も削減することになります」。

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(文:Catherine Shu、翻訳:Dragonfly)

新型コロナワクチン輸送市場に参入するSkyCellがシリーズCで約39億円調達

医薬品やワクチンの輸送用スマートコンテナを開発するスイスのSkyCell(スカイセル)が、重要な資金調達ラウンドを発表した。2020年完了した6200万ドル(約69億円)のラウンドに続き、今回、新型コロナウイルスワクチンを含む、温度変化に敏感な医薬品輸送の改善に向け、3500万ドル(約39億円)をシリーズCで調達した。

このラウンドは、株式と負債を組み合わせた資金調達で、DisruptAD(アブダビを拠点とする政府系ファンドADQのVC部門)、SHUAA(UAEの大手アセットマネジメント会社・投資銀行)など、中東の投資家が名を連ねた。また、同社によれば「中国を拠点とする」および「チューリッヒを拠点とする」ファミリーオフィスや、スイスの大手民間保険会社であるMobiliarからの投資も含まれている。

今回のラウンドにより、同社の資金調達総額は1億3300万ドル(約149億円)に達した。

SkyCellは主に輸送用コンテナを開発している。同社のコンテナには温度維持と振動制御の機能があり、貨物の状態を継続的に報告するセンサーを備える。そのため、医薬品の劣化につながる温度変化や輸送中に発生するダメージを最小限に抑えることができる。

ワクチン物流の現場でよく言われるのが、2005年に世界保健機関(WHO)が発表した「ワクチンの50%が無駄になっている」という数字だ。これは、温度、物流、運送の問題が原因の一部だ。バイオ医薬品業界では、より楽観的な数字が使われている。SkyCellの共同創業者でCEOのRichard Ettl(リチャード・エトル)氏によると、この業界では通常、世界中に医薬品を出荷する際、先進国市場では約4%、新興市場では約12%の損失率を想定しているという。

外部の監査機関によると、SkyCellの温度逸脱率はこれまでのところ、0.1%未満だという。

TechCrunchが前回SkyCellを取り上げた2020年4月の時点では、同社は大手製薬会社8社と提携し、さらに7社と試験を行っていた。広報担当者によれば、同社は現在「上位20社の製薬会社の大半と提携している」とのことだが、それ以上の詳細は明かされていない。

同社は新型コロナ以前、合計で年間約2億5000万本の医薬品バイアル(容器)を輸送した。新型コロナ以降、この技術は1つの大きな進歩を遂げた。mRNAベースの新型コロナワクチンおよびその製造に必要な原材料を輸送できるよう再設計されたのだ。

新たに設計された容器はドライアイスを使う。ファイザー製ワクチンが求めるような摂氏マイナス80〜60度を実現するために必要となる(ただし、もはや常に必要なものではなくなった)。

ワクチンの超低温輸送には、基本的にドライアイスの使用が避けられない(UPS Healthcareは自社でドライアイスを製造しており、新型コロナワクチンの需要に応えるべく生産量を増やしている)。エトル氏によれば、SkyCellの技術は、他社に比べてドライアイスの使用量が圧倒的に少なくて済む。100キログラムのドライアイスで約120時間の使用が可能だが、到着時にドライアイスを追加すれば、ワクチンをさらに長く保管できる。

「競合他社は200キログラム以上のドライアイスを必要とします」と同氏はいう。「だからこそ、技術的にも偉業だったのです」。

同氏によると、同社は現在、新型コロナワクチンのトップメーカー3社の原料またはワクチンを輸送している(どのメーカーかは明らかにしていないが、極低温という条件から推測できるかもしれない)。

「3社のうち2社は、工場から出荷される原料のみを輸送しています」と同氏は話す。

もう1つの大きな前進は、飛行機輸送からトラック輸送への拡大だ。

ワクチンの多くは飛行機で各国に到着するが、医療用の集中倉庫にワクチンを運ぶのは多くの場合トラックだ。マッキンゼーの2021年のレポートによると、冷蔵トラックが理想的だが、常に利用できるとは限らないため、コールドボックスや大型の運搬用トラックも使われる。

トラック輸送への進出は、SkyCellのワクチン流通ネットワークの範囲を大きく広げることになる。同社は、ある大手ワクチンメーカーのヨーロッパでのワクチン流通に関与しているとエトル氏はいう。

「以前はトラック輸送を扱っていませんでした」とエトル氏は話す。「今では、私たちのコンテナは、マイナス80度と非常に低い温度の製品を輸送するためにトラックで使用されています。これは間違いなく大きな変化でした」。

同氏は、新型コロナワクチンの輸送は、同社の将来において重要な役割を果たすだろうと話す。しかし、それは彼らのビジネスの中核ではない。抗がん剤から他のワクチンまで、多くの医薬品がコールドチェーンの取り扱いを必要とするからだ。

国際航空運送協会(IATA)のCenter of Excellence for Independent Validators in Pharmaceutical Logisticsは、コールドチェーンを利用する医薬品および生物製剤の世界売上高が2024年までに4400億ドル(約49兆円)を超えると予想する。これには新型コロナワクチンの支出は含まれていない。

この業界では、3つのマクロトレンドがあるという。コンテナ再利用サービスの増加、リサイクル可能なコンテナの開発、そして電子機器を使ったリアルタイムでの貨物追跡だ。

SkyCellの動きは、こうしたトレンドと重なる部分がある。同社のコンテナが再利用可能であることは、製薬会社との提携を獲得する「大きな原動力」だとエトル氏はいう。また、箱の中にはセンサーが設置されており、出荷ごとにさまざまなデータを収集している。

エトル氏は、SkyCellが業界で起こる変化やコールドチェーン製品の需要増加に対応する態勢を整えていると考えている。これまでのところ、好ましい業績になっているようだ。

「当社の歴史上、製品の販売機会を失ったことは一度もありません」と同氏は話した。

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(文:Emma Betuel、翻訳:Nariko Mizoguchi