レーザー測距技術のLiDARで発見された長さ1km以上の古代マヤの遺跡

LiDAR(レーザー測距技術)は、考古学の世界でも、最も効果的なツールのひとつとして、急速に認められつつある。それ以前なら、ジャングルを切り開いて人手で計測するなど、数カ月にも及ぶ作業の末にようやく発見できたかもしれないものを、わずか数時間で明らかにすることができる。最近も、3000年も前のマヤ文明の建造物が発見されたばかりだ。大きさは1辺の長さが1km以上もあり、おそらく天体の観測に使われたのではないかと考えられている。

画像クレジット:Inomata et al

この巨大な人造の台地について、ネイチャー誌に掲載された論文の筆頭著者は、アリゾナ大学の猪俣健氏だ。この前例のない構造物は、このようなタイプとしてこれまでで最大かつ最古のもの。2年前にグアテマラで発見された「マヤのメガロポリス」にも匹敵するものだろう。

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このような巨大な構造物、列をなす基礎、その他の人造的なものは、見ればすぐにそれとわかるだろうと思われるかもしれない。しかし地上にいる限り、それらは想像するほど明らかではない。通常、木々に覆われ厚く草が生えているからだ。

「私はフィールドワークに何千時間も費やしてきました。森を一直線にナタで切り進む地元の人の後ろをついて歩きました」と、人類学者のPatricia McAnany(パトリシア・マカニー)氏も書いている。彼女は、今回の研究には参加していないが、ネイチャー誌にコメントを寄せている。「この時間のかかる工程では、グアテマラのTikal(ティカル)や、ベリーズのCaracol(カラコル)など、古代マヤの都市の地図を作るのに、何年も、場合によっては何十年ものフィールドワークが必要だったのです」。

下に示したのは、この場所を上空から見た映像だ。そこに何かがあることを知らなければ、なんとなく幾何学的に見える丘があること以外、何にも気づかないだろう。

LiDARは対象物によって反射するレーザー光線から、その物、あるいは地面までの距離を測定する。強力な計算技法を用いることで、森林を透過して、その下にある地面の高さを知ることができる。それにより、地面の詳細な標高マップを作成できる。

今回研究者は、グアテマラとの国境に近いメキシコのタバスコ州の広い領域を選んだ。そのあたりは、初期マヤ文明があったことで知られている地域だ。まずその領域全体を、低解像度のLiDARでスキャンして、先行調査した。それに基づいて絞り込んだ領域を、より高い解像度でスキャンすることで、以下に示すような画像が得られた。

そこに出現したのは、Aguada Fénix(アグアダ・フェニックス)と呼ばれることになった巨大な儀式場だった。その中でも重要なのは、高さは10メートルを超え、長さが1.4キロメートルある人工の台地だ。こうした巨大な台地は、季節の移り変わりを通して太陽の動きを追跡し、さまざまな儀式を行うために使用されたという説が提示されている。中でも、アグアダ・フェニックスが最古、かつ最大のものだ。

高解像度のLiDARによるマップは、他の発見にも寄与している。例えば、当時の指導者を敬うような彫像や彫刻がないことで、アグアダ・フェニックスを建造したコミュニティは「おそらく、それほど不平等なものではなかった」と考えられる。これは、炭素年代測定からわかる紀元前1000〜800年ころの他の社会と同様だ。そのような巨大なプロジェクトは、財力を持った中央政府の支援と指示がなければ完成し得なかっただろう。そう考えると、マヤ文化の発展に関する通説を覆す可能性もある。というのも、当時のマヤのコミュティは小さく、安定したものではなかったと考えられてきたからだ。

こうしたレーザースキャン技術の進化も、ほとんどの人は自動運転車が歩行者を避けるための手段としか考えていないだろう。アグアダ・フェニックスについてさらに詳しく知りたければ、Nature誌や、このナショナル・ジオグラフィックの記事で読むことができる。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

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TechCrunch Japan

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