ロサンゼルス消防局がドローン飛行隊の大規模増強を計画

消防活動の近代化を目指すロサンゼルス消防局(LAFD)は、ドローン航空隊を拡大して大規模に展開することを含む、数々の最新テクノロジーの導入を検討している。米国でもニューヨークやシカゴに次ぐ最大級の消防局であるLAFDは、予算規模はおよそ6億9100万ドル(約750億円)、雇用者数3500名以上、2018年には49万2717件の通報に対応している。

LAFDにはすでに11機のドローンからなる航空隊があり、258台の消防車、救急車、ヘリコプターによる車両航空隊を補完している。しかし、無人航空システム計画部門の指揮をとるRichard Fields(リチャード・フィールズ)消防司令長は、さらに大幅に数を増やしたいと願っている。

ロサンゼルスは、中国のドローンメーカーDJIとの合意も手伝い、消防活動へのドローン利用では先駆者的存在だが、この4月に同社との契約を交わしている。その当時、このドローン製造と画像処理技術の開発を行う中国企業DJIは、緊急時対応準備のためのツールとしてドローンをテストし展開すると発表していた。米国の消防局との契約では、最大規模になると同社は話している。

「米国の中でも卓越した治安機関であるLAFDとの提携強化により、同消防局専用に開発したDJIのドローン技術の先進性を役立てることができて、大変にうれしく思ってます」と、DJIの企業パートナーシップ・マネージャーのBill Chen(ビル・チェン)氏は、その契約当時の声明の中で述べていた。「私たちの双方向の協力関係をとおして、米国でも1、2を争う複雑な都市環境における緊急事態にドローンを展開するという難題から、DJIは貴重な経験を学ぶことができます」。

あれからおよそ5カ月が経過した今、フィールズ消防司令長はドローン飛行隊倍増の検討に入り、計画は十分に成功したと思われる。「我々の次なる計画は、ドローンを我々の専門的人材の補助に利用することです」とフィールズ氏は言う。「つまり、消防士やそのサポートクルーによる危険物処理、都市部での捜索と救助活動、海や河川での救助活動の支援だ」とフィールズ氏。

LAFDの河川救出チーム。写真提供:Flickr/ LAFD Mike Horst

消防局が求めるテクノロジーは、ドローン本体に止まらないとフィールズ氏は言う。「ドローンの汎用性を高めるには、多くのテクノロジーが必要になります。【中略】最も貴重なツールはドローンではなく、そのセンサーです」。

現在までで最も有効な利用法は、赤外線技術を用いて目に見えるものと、センサーが検知した熱の特徴とのバランスをとって組み合わせることだった。

LAFDのドローンパイロットになるための訓練は、とくに厳しいとフィールズ氏は言う。通常は、80時間の訓練を受けることになる。フィールズ氏によれば、「私たちの訓練は米国でも最高のものです。民間市場には、これに勝るものはありません」とのことだ。

現在、LAFDのドローン飛行隊はすべてDJIのドローンで構成されているが、それはこの数年間、軍隊や文民が躊躇してきたことだ。

米国の中核的なインフラが中国技術に依存することへの不安感は、ファーウェイなど中国のネットワーク企業の問題からDJIのドローン技術にまで広がっている。

2018年に米国防総省は、サイバーセキュリティー上の脆弱性を理由に、民間企業製のドローンの購入と利用の禁止令を出した。これが発令されたのは、米国土安全保障省の役人と議員団が、特にDJIを名指しして、それを使って中国政府が米国をスパイする恐れがあると指摘してから1年後のことだった。

しかしながら、ボイス・オブ・アメリカ9月号の記事によれば、この規則は絶対的なものではなく、数多くの軍の支部では、今でもDJIのドローンを使っているという。ロサンゼルスでも、この問題を深刻に受け止めているとフィールズ氏は話した。LAFDは、規制当局や米国自由人権協会などの権利擁護団体と密接に協力し合い、LAFDが収集したデータの扱いに関して厳格な指針を打ち立てた。

「私たちは、リアルタイムで状況確認ができるようドローンから情報を得ることを目的に計画を立てています」フィールズ氏。「それにより、指揮本部長は問題に対する視野を広め、的確な判断ができるようになります」。

フィールズ氏によれば、記録・保管されるのはLAFDが被害の評価を行うための局地的な火災現場のデータのみであり、後に地図のレイヤーに変換されて火災頻発地帯の記録として残されることもあるという。

中国にデータが送信される件に関連して、重要インフラの地図データはインターネットとは切り離して処理されるとフィールズ氏は話している。「そのデータはドローンに蓄積されますが、90%はドローンの運用に関する情報です。ドローンがどこにいるか、どのような状態か、それ自身の緯度と経度、ドローンが収集するのはそのようなものです」とフィールズ氏。

同氏は、政府が外国製ドローンを使うことに懸念を示したとしても、解決策はあると考えている。規制すればいいのだと。「基準を満たせばいいのです。米国の国土の上空を飛ばすには、いくつかの許可を取得しなければなりません」と彼は言う。「DJIのドローンは中国製だから悪い。だから捨ててしまえと言うのは、なんの答にもなりません」。

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(翻訳:金井哲夫)

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TechCrunch Japan

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