ヴァージン・ギャラクティックのマイク・モーゼス社長が語る、成長を続ける同社の次なる展開

先にVirgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック)初となる無料乗客が創業者兼CEOのRichard Branson(リチャード・ブランソン)氏とともに宇宙へと飛び立った。打ち上げの後、筆者は同社社長のMike Moses(マイク・モーゼス)氏に話を聞く機会を得た。同氏は今回のオペレーションについて、またテスト飛行から商業飛行への移行計画についてまで細部にわたって精通している人物である。

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不運なことに筆者のレコーダーが故障してしまったのだが、モーゼス氏は週明けに電話での対談を快く引き受けてくれ、次世代のスペースプレーンや同社が投資すべき分野などについて、再び話をしてくれた。以下にその内容をご紹介したい(このインタビューはわかりやすくするために編集されている)。

TC:まず初めに、テストフライト段階で今後まだ何を検証すべきなのか、そしていつ頃テストフライト段階が完了する予定かについて教えていただけますか?

モーゼス氏:現在私たちが行っている一連のテストフライトは、リチャードが乗ったフライトがその第一回となりましたが、空力特性や軌道、ハンドリングの質の調査などの従来の安全運航範囲テストから、機内での体験やトレーニング手順、後部座席の人々のためのハードウェアや彼らの体験を検証するという、より運用面を重視した点検へとシフトされたものです。

そのため製品の主要なマイルストーンや機能を実証するとともに、機内での体験を繰り返し向上させて最適化するため、具体的には3回のフライトを予定しています。ただし当然、これはあくまでも概念的な予定であり、スケジュールや数字は結果次第で変わります。うまくいけば3回のフライトで済むと思いますが、もしさらに調整が必要なら、学びに基づき必要に応じて追加していくことになるでしょう。

リチャードとクルーが前回のフライトから戻ってきた後に得られた結果によると、課題はいくつかあることがわかったものの、すべてはほぼ満足のいくものでした。

2021年の夏から夏の終わりにかけてこの一連のフライトを行う予定です。その後、前回の決算説明会で発表したように「改造段階」に移行して母船とスペースシップのアップグレードを行い、商用サービスに備えていく予定です。ここでの主な目的は、飛行頻度を向上させるための検証を行うことです。現時点のテストではすべてにおいて慎重になっているため、かなりゆっくりとしたペースで飛行しています [ここでいうペースとは速度ではなく、頻度のことである]。今後はそれを解消していきたいと考えており、そのためにはいくつかの変更が必要になります。改善点も把握しているものの、テストフライトを正式に終了する時期については、具体的には決めていません。

TC:スペースポートでお話しした際、クルーからはまだ正式な体験報告を受けていないとおっしゃいました。今ならリチャードやシリハ、そして実際に行った全員からのコメントについてもう少し情報があるのではないかと期待しているのですが、何か具体的なフィードバックはあったのでしょうか?

モーゼス氏:現在、まさにフィードバックや報告を受けている最中です。ご想像の通り、確認しなければならないデータが山積みです。そういったデータの中には機内に設置した16台のビデオカメラを同期させて、どこで何が起こっているかを確認し、ライブノートやフィードバック、それにともなうオーディオトラックと組み合わせるといった簡単なものもあります。確実に情報を集めていますが、現時点で公開できるようなリストはありません。みなさんには随時お知らせしていきたいと思います。

着陸後の同日も後日も、大まかな感想は「すべては最高だった」でしたね。これは科学的な答えではないですし、科学的な答えが必要なので、報告作業を進めさせるつもりです。

画像クレジット:Virgin Galactic

TC:「改造段階」について触れられていましたが、Unityはいわばプロダクションプロトタイプですね。最初の製品ラインとして、何か特別な維持管理があるのかどうか教えてください。

モーゼス氏:デザインや構造上、特別な手入れが必要な部分はありません。しかしテスト機体として、また我々にとっての最初の製品としてこの機体には特別な注意を払っています。定期的な点検はもちろんのこと、問題が見つかった場合にはテストを行い、寒さや負荷、ストレスの中でシステムがどのように機能するかなど、未知の部分がないということを本当に把握できているかどうかを確認するため、常に目を光らせています。

一連の測定を行い、設計範囲に基づいて機体がどのように動作したかを確認します。そして、設計範囲の限界に近づいたらモデルや予測が正しいかどうかを検証するために追加の検査を行います。この点では、新しい航空機の開発で最初の試作品を作るときに、保守点検プログラムを構築するのとよく似ています。つまり極めて保守的なものです。そして使っていくうちに、ポジティブなフィードバックに基づいて、その保守性を引き出していくのです。

しかし全体的に見ると、たしかにUnityには特別な注意を払っています。そして次の機体には、その一部が反映されていることでしょう。「次の機体では、毎回じゃなくて5回に1度くらいしか見なくてもいいようにこれを変更しよう」というように、私たちはすでにたくさんのことを学んでいます。

TC:以前お話を伺ったときに、少なくとも論理的にはUnityには数百回のフライト数を期待しているとおっしゃっていたと思います。

モーゼス氏:そうですね、何百回かはフライトが可能だと思います。ある程度の寿命を想定して設計し、それに合わせてテストを行ってその後はいつでも延命措置を取ることができます。4万回ではなく1万回のサイクルを行い、1万回の寿命に近づいたら、また戻ってきて他のサイクルを行うというようなこともできます。そしてさらに追加する、という具合です。「崖から転げ落ちる」ような寿命を持つ部品はあまりありません。

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TC:後継機や量産機には改造がいくらか施されるとのことですが、些細なことから大きなことまで、どのような違いがあるのでしょうか?機体の重量がいつ分かるかなど、そういったことを教えてください。

モーゼス氏:すでに機体の重量は決まっており、基本的には工場での大規模な組み立てから地上試験へと移行するロールアウトも完了しています。全システムが設置されたのでこれから地上での統合テストが始まり、コンピュータシステムやフライトコントロールシステムの点検などを行います。まだ地上にいて、飛べる状態ではありませんが、私たちはその統合テストを行っているところです。

ImagineとInspireでは、構造を設計する際、皮膚の下にある骨組みとして考えるとその骨組みを最適化し、スパーにある肋骨を荷重が最もかかる場所に移動させました。UnityはScaled Composites(スケールド・コンポジッツ)の当初の設計意図に基づいて作られていますが、飛行試験の結果、荷重が正確には予想されない場所にかかることがあることがわかりました。その負荷を考慮したため、Unityではかなりの重量増になっています。ImagineとInspireでは構造を最適化し、然るべき場所に配置することができました。

例えばUnityでは、追加作業があったために毎回確認しなければならないジョイントがありますが、Imagineでは最初からあるべき場所に設計されています。それでも確認することはありますが、より簡単にアクセスでき、より短い時間で検査ができるようになりました。

画像クレジット:Virgin Galactic

こういったことにより検査スケジュールが最適化されます。他にも単純なことですが、Unityでは後から追加しなければならなかったアクセスパネルを、初めから必要な場所に設置することができました。そしてクイックリリースファスナーなど、検査時間を短縮するようなものをデザインに追加することもできました。どれも些細なことですが、このようにかなり多くの変更を行い、機体のメンテナンスのし易さに大きな影響を与えています。

そしてデルタクラスの宇宙船の話を以前にもしましたが、次の段階では製造性を高めるための変更を行います。UnityやInspire、Imagineは、いわば一点ものの手作りの宇宙船です。しかし年間400回の飛行を実現するために何十機もの宇宙船を作るとなると、より低価格で、より短い期間で製造できるようにしなければなりません。次の設計では、そのような要素を盛り込むことになるでしょう。

TC:実は私が伺いたかったことの1つなのですが、商業運航に必要な信頼性と定時性をどうやって確保するご予定でしょうか。当然、航空機の数を増やすこともその1つですが、地上でのオペレーションやクルーの数を増やしたり、メンテナンスを充実させたり、そういったことはどうなるのでしょうか。

モーゼス氏:その通りですね。効率性のために複数の機体が必要です。これにより例えば天候などの予期せぬ事態にも対応できるようになるでしょう。さらに労働力です。労働力が増えれば24時間365日体制になり、複数のエキスパートを抱えることができます。1台の機体に注力するクルー、2台目を専門にするクルーという具合に。

我々は少しずつ前進すれば良いと考えています。最初から高い飛行頻度を目指すのではなく、少しずつ多くしていけば良いのです。2022年のUnityの目的は、このような運用スケジュールを検討し、追加の宇宙船ができたときのために、どこに倍率をかけるかを考えることなのです。

このビジネスモデルはすばらしいものなのですが、今後数年はUnityが8便あろうが、10便、12便あろうがあまり変わりません。つまり収益という意味ではそれほど大きな変化がないのです。しかし、オペレーションを学ぶという意味では、これは我々にとって重要なステップであり、その道をどのように進むかについては慎重でありたいと考えています。

 米国モハベ、10月10日(編集使用のみ、テレビ放送のドキュメンタリーや書籍での使用は不可)。2010年10月10日、カリフォルニア州モハベ上空で、初の滑空飛行に成功したヴァージン・ギャラクティック製ビークルSpaceShipTwo。(画像クレジット:Mark Greenberg/Virgin Galactic/Getty Images)

TC:フライトプランをほぼそのままにしておく理由をもう一度教えてください。もしかしたら、後に6人が乗る改訂版では、プロフィールを少し変えなければならない可能性があるのではないでしょうか?

モーゼス氏:それはこのQ&Aの冒頭でお話しした、テスト段階から運用準備段階への移行の話と同様のことです。これに伴いプロフィールも確定しているのです。パイロットが飛行する軌道や使用する技術については、今後も最適化していきますが、大きな修正は行いません。これらはすべて物理学に基づいた結果です。対気速度、角度、到達高度、搭載重量など、すべてが固定された変数であり、この方程式を変えることはできません。

Imagineに搭載される容量が増えることで、明確な軌道の変化はあるでしょうし、それによって若干異なる性能を持つことでしょう。そういった場合はその範囲を検証するということになります。しかしほとんどの場合、簡単に言えば物理学的な方程式によってできることが決まっているので、最初は4人の乗客を運ぶことしかできません。これを変更することもできますし、船内の軽量化も検討する予定ですが、やはり長期的に使用できる機体を建造したいと考えています。

TC:質問はこれですべてです。お時間をいただき本当にありがとうございました。

先に行われたヴァージン・ギャラクティックの打ち上げの様子はここからご覧いただける。

カテゴリー:宇宙
タグ:Virgin Galacticインタビュー民間宇宙飛行

画像クレジット:Virgin Galactic

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

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TechCrunch Japan

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