中国で約1500万ユーザーを抱える育児メディア「Babily」が10.5億円調達、ユニ・チャームからカーブアウト

中国で育児メディア「Babily(ベイビリー、中国名は贝贝粒)」を展開するOnedotは5月28日、経営陣および東京大学協創開発プラットフォーム(東大IPC)など複数の外部投資家を引受先とした第三者割当増資により総額10.5億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

Onedotはもともとユニ・チャームとBCG Digital Venturesの共同プロジェクトとしてスタートし、両社が出資する形で2016年12月に創業されたスタートアップ。2017年より中国でBabilyを展開しているほか、そこで培った知見を活用して日系企業の中国向けマーケティング支援事業などを手がけている。

Onedotが外部投資家から本格的な資金調達をするのは今回が初めてのことだ。代表取締役CEOの鳥巣知得氏によると今後の事業拡大に向けて「他の事業会社との連携やプロダクトへの大きな投資をスピーディーに実施していける体制」を整えるべく、ユニ・チャームとも話し合いを進めた上で同社の持ち株比率を減らすことを決めたそう。今回の増資によりユニ・チャームの連結子会社から外れ(いわゆるカーブアウトの形式)、より独立性の高いスタートアップとしてさらなる成長を目指していくという。

調達した資金については主にBabilyのミニプログラムの開発やプロモーションの強化などへ投資をする。第三者割当増資の割当先は以下の通りで、東大IPCについては本日発表された新ファンドからの出資となる。

  • 経営陣
  • 東京大学協創開発プラットフォーム(オープンイノベーション推進1号投資事業有限責任組合)
  • 日本生命保険
  • 住友商事
  • みずほキャピタル(みずほ成長支援第3号投資事業有限責任組合)
  • The Boston Consulting Group
  • xross
  • PKSHA SPARXアルゴリズム1号

Babilyは子育てや家族生活に関するさまざまなナレッジを扱う分散型の育児動画メディアだ。自作のショートムービーを中国国内のSNSや動画プラットフォーム、そしてWeChatなどのミニアプリ(ミニプログラム)上で展開。1500本以上の動画コンテンツを配信していて、各メディアのフォロワーやファン数は合計で1500万以上に及ぶ。

すでに中国国内では複数の育児専業メディアが存在し、上場している企業もある。Babilyは後発にはなるが、既存メディアとは異なる短尺動画×分散型メディアスタイルを採用することで20〜30代の若い世代を中心にユーザーを獲得。アプリについてもネイティブアプリを作らずミニアプリを軸とすることで、新世代の育児メディアとして一気にユーザーを拡大しようとしているところだ。

「中国ではここ数年で育児の方法のアップデートが加速していて、一世代前と比べてもやり方が大きく変わっている。最新の情報を求める人が増えている状況の中で、その人たちが普段接しているメディア上にキラーコンテンツを提供できたことで成長できた。開始初年度がちょうどWeiboがショートムービーに力を入れた時期と重なり、そこに離乳食のレシピなどのコンテンツがマッチした。翌年には中国内でTikTokが大ヒットするなど、育児トレンドの変化とメディア・コンテンツの変化の波に上手く乗れたのが大きい」(鳥巣氏)

日本国内でも料理レシピの領域においてクックパッドがテキストや画像を軸としたCGMコンテンツで多くのユーザーを獲得していたところに、クラシルやDELISH KITCHENがレシピ動画という新しいアプローチで市場に参入して注目を集めた。同様にスマホやショートムービー、ミニアプリが主流となった中国で、そこに最適化した育児コンテンツを提供することによりユーザーを集めてきたのがBabilyというわけだ。

「既存のプレイヤーは10年以上前から運営しているところも多いため、中にはコンテンツが古くなって最新の情報やフォーマットに対応していないものもある。Babilyの特徴は動画ベースのコンテンツが中心で、ミニプログラムへの対応もいち早く取り組んでいること。20〜30代のユーザーは長文のテキストよりも短い動画での情報収集に慣れていて、その方がストレスがない」

「またアプリをインストールした上で会員登録して使ってもらうという従来の方法も、必ずしも今のユーザーが好む形ではなくなってきている。BabilyはもともとSNSに強く、そこからミニプログラムにもユーザーを呼び込むこめると考え今はその開発にかなり力を入れている」(鳥巣氏)

現在同社には約50名のメンバーが在籍しているが、鳥巣氏を含めそのほとんどが上海在住だ。日本国籍のメンバー自体も数名ほど。日本発のプロジェクトから生まれたスタートアップではあるものの、中国現地に特化する形で事業を成長させてきた。

だからこそ同社の知見に頼る日系企業も多く、現地進出を目指す企業からの問い合わせも増えている。直近では広告やECなどBabily経由の売上に加えて、BtoBのデジタル戦略構築やマーケティングサポート、越境ECの運用支援などの売上が拡大。今回の資金調達はこれらの事業をさらに加速させることが目的だ。

新規の株主としては中国で事業を展開する大手事業会社が複数社含まれていて、それらの企業とは事業面での連携も模索していく計画。当面は中国内でBabilyをより多くのユーザーに使ってもらえることに注力するが、中長期的には他領域でのメディア開発や他国への展開なども検討する方針だ。

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TechCrunch Japan

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