人事オートメーションサービスのSoraが5.7億円調達

最後に新しい職場で新人研修を受けたときのことを思い出してほしい。たくさんの書類や呼び出しや電話のゴチャゴチャにまみれて、ひどく混乱したのではないだろうか?

その理由は、新人研修がバラバラでつながりのない人事ツールに頼っているからだ。米国時間7月22日に530万ドル(約5億6700万円)の資金調達を発表したスタートアップであるSoraは、コーディング不要のローコードサービスで人事ソフトウェアの世界を一新し、人事作業を自動化するツールを提供する。このスタートアップは、新人研修のようなプロセスを、社員にとっても会社にとっても良いものにできるかもしれない。

ローコード、ノーコード

ローコードやノーコードを非エンジニアリング集団に提供しようとしているスタートアップは、最近のトレンド(未訳記事)だ。TechCrunchも最近、ノーコード・テキスト分析と機械学習のスタートアップ、MonkeyLearn220万ドルの調達ラウンド(未訳記事)を実施したことを報じた。2020年だけで数億ドルの資金がローコード、ノーコードツールのために投入されている。

分析であれビジュアルプログラミングであれ、非エンジニアが開発者の手を借りずに効率よく作業できるためのツールを作ることで、以前なら技術者チームにしかできなかったことを非技術者チームができるようにしている新興企業がいくつか登場してきた。

「Soraは、非開発者がワークフローを作れるサービスを提供してそのトレンドに仲間入りした」と同社の共同創業者でCEOのLaura Del Beccaro(ローラ・デル・ベッカロ)氏は言う。

Soraのワークフローは、テンプレートからつくることが可能で、さまざまなプロセス(メールの送信、他のアプリやサービスからデータを取り出す、などの作業)を開始するトリガーを導入することで、非エンジニアがビジュアルなロジックフローを作れるようにした。Soraシステムは「ノーコードのワークフロー・ビルダーのようなもの」と同氏はインタビューで語った。ユーザーは「誰かになにかをするように伝えなくてはならない作業を登録して、その後の仕事を自動化できる。実際これは、問題解決の最大の救済方法だ。今は多くの人事チームが手動で人々の面倒をみている。「このノートパソコンの設定は終った?」「この3人の新人教育の準備はできた?」などだ。

SoraでCEOを務めるローラ・デル・ベッカロ氏

Soraのワークフローシステムは実用的で使いやすく、1人の社員のためにカスタマイズすることもできる。このソフトウェアを使えば「新人の共同作業者が誰になるのかをマネージャー尋ね、新人が来たことをその社員にメールで伝える」といったことができる。

デル・ベッカロ氏は、Soraで「人事プロセスを民主化」したいと言う。今の人事部門は「社員の分析」をデータアナリストに頼りすぎていると言い、同社のシステムを使って人事データを集約すれば、企業は「自動化をすべて自分たちだけで、IT部門や技術部門に行かずに設定できる」と付け加えた。

また、Soraは必要に応じてサービス・プロバイダーを入れ替えることができるので、成長過程にある企業の「システム変更によるリスク」を軽減し、「どんなプロセスにも対応できる柔軟性を保てるよう」手助けする。よくできたツールだ。

資金

Soraはこれまでに530万ドルの資金を調達しており、これは2018年9月のプレシードラウンドを含めた調達資金の総額だ。直近のラウンドをリードしたのはFirst RoundおよびElad Gilで、これまで獲得した資金の半分以上をこの2社が占めている。

現在従業員は11名で、Soraには約「25名の出資者」がいる、「投資家の多様性はかなり重要である」とデル・ベッカロ氏はTechCrunchに話した。

資金の話に戻ると、初期の顧客としてMixpanelにサービスを提供したあと、今年に入って広く顧客を募集し始めた。契約は1年または2年で、料金は従業員数ごとまたは月額固定のどちらか。新たに獲得したキャッシュのおかげでSoraは約2.5年ぶんの運転資金があると彼女は言った。

First RoundのBill Trenchard(ビル・トレンチャード)氏は、このサービスを構築したSoraのアプローチを気に入っていて、この会社は「スケーリングのためのスケーリングには一切興味がない」と言い、「自分たちの作っているものが人事の真の問題を解決でることことを確認するまで市場に出さない」という同社の方針を「思慮深く意志を持った」製品アプローチの証拠だと語った。

その方法のおかげで「Soraの開業後の勢いは素晴らしい」とトレンチャード氏。これまでで最高額と思われる現金を得た今、どれだけ早く成長するのか注目だ。

参考までに、以下はデル・ベッカロ氏が提供した投資家の全リストだ。完全なリストを入手することは稀なので、ここで紹介しておく。

  • Sarah Adams (Plaid)
  • Shan Aggarwal (Coinbase, Greycroft)
  • Scott Belsky (Adobe)
  • Mathilde Collin (Front)
  • Cooley Investment Fund
  • David Del Beccaro & Arleen Armstrong (Music Choice/Legal)
  • Viviana Faga (Emergence Capital)
  • Avichal Garg (Electric Capital)
  • Elad Gil
  • Kent Goldman (Upside VC)
  • Jonah Greenberger (Bright)
  • Daniel Gross (Pioneer, YC)
  • Charles Hudson (Precursor Ventures)
  • Todd Jackson (First Round Capital)
  • Oliver Jay (Asana)
  • Nimi Katragadda (BoxGroup)
  • Nicky Khurana (Facebook)
  • Brianne Kimmel (Work Life Ventures)
  • David King (Curious Endeavors)
  • Fritz Lanman (ClassPass)
  • Lisa & Mat Lori (Perfect Provenance/New Mountain Capital)
  • Shrav Mehta (SecureFrame)
  • Sean Mendy (Concrete Rose)
  • Jana Messerschmidt (#ANGELS, Lightspeed)
  • Katie Stanton (Katie Stanton, #ANGELS, Moxxie Ventures)
  • Erik Torenberg (Village Global)
  • Bill Trenchard (First Round Capital)
  • Jeannette zu Fürstenberg (La Famiglia VC)

画像クレジット:TechCrunch/Bryce Durbin

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

投稿者:

TechCrunch Japan

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