製薬といえば、一日に何百万錠ものアスピリンやイブプロフェンをこね上げ成形している大工場を連想するが、近年では、よく使う薬をユーザーの近くで少量だけ作ることも、重要な課題として検討/研究されている。オランダの研究者たちはそのために、植物が自分自身のリソースを作るために使っているのとよく似た方法を着想した。
人工葉(artificial leaves)は、かなり前からある。それらは光を、さまざまな目的のためのエネルギーに変換するパッシブなデバイスだ。もちろん植物は光合成によって自分自身の重要な化学物質を作っており、それはこれまで人間が作った最良の人工光合成システムよりも巧みで効率的だ。しかしアイントホーフェン工科大学のTimothy Noëlのチームは、薬の分子を組み立てるときのような化学反応を光の力で起こす方法を見つけた。
彼らは発光型集光器(luminescent solar concentrator, LSC)と呼ばれる新しい素材ないしデバイスを使って入力光の波長を最適化し、それを人工葉のあるエッジへ導く(もちろん形は本物の葉っぱに似ていなくてもよい)。そこには細い脈路が掘られていて、そこへ薬のための化合物〔複数形〕を汲み上げる。そこに導かれている光(の波長)を正しく同調(tune)してやると、化学反応が始まる。
LSCを使ったことによって効率が大幅にアップし、複雑で高エネルギーなプロセスも可能になった。曇りの日でもよい。
“個人や小集団でも気軽に入手/利用できるこの強力なツールによって、薬などの貴重な化学物質を、持続可能な太陽光方式により作れるようになった”、とNoëlが大学のニュースリリースに書いている。“このような反応器があれば、どこででも薬を作れる。ジャングルでマラリアの薬を作ったり、火星で鎮痛解熱剤パラセタモールを作ることもできる。必要なものは、太陽光と、このミニ工場だけだ”。
今後の短期的な改良としては、錠剤を成形して瓶につめる、などが考えられるが、もっと長期的には、地球上のリソースの乏しい地域が、高度な医薬品を入手/服用できるようになるだろう。研究者たちの論文は、今日(米国時間12/21)発行されたAngewandte Chemieに載っている。