有機太陽電池を使ってソーラーサングラスを作る

ここ数年、ソーラー発電サングラスのコンセプトが現われては消えていくのを見てきたが、何かの理由で顔にソーラーパネルをつける夢は未だに捕らえどころがなかった ―― 今日までは。ドイツのカールスルーエ工科大学(KIT)の天才エンジニアたちが、有機太陽電池を使ったサングラスを作ることに成功した。しかも太陽を直接見つめなくても動作する。

このレンズは通常のガラスまたはプラスチックレンズと同じように、市販のフレームに合わせて切ることができる。有機太陽電池の効率は必ずしも高くないが、柔軟で多用途なため、硬質で不透明なソーラーセルが使えない状況でも利用できる。

「私たちが開発したソーラーサングラスは、一般の太陽電池が利用できない場面で有機ソーラーセルを使う実例のひとつだ」とKITの大学院生でプロジェクトに参加したDomink Landererが同大学のニュースリリースで語った。

サングラスの左右の蔓(つる)には電流を変換するためのカスタム基盤が内蔵されていて、今回の装置では温度と明るさを表示するために使用されている。なぜ、明るさを知るための表示が必要なのかわからないが、まあこれは研究プロジェクトなので」。

ソーラーセルが発電した電力は、表示に使用したあとでも200 ミリワットほど余っている。これは携帯電話で使えるほどではないが、歩数計や無線発信機、小型スピーカーなどの低消費電力デバイスを駆動したりささやかに充電したりするのに使える。家や事務所などのほのかな明かりの下でも使える。実験ではバッテリーを組み込んでいない ―― リアルタイムに収集したエネルギーだけを使っている。

テクノロジーと製造技術が進歩すればもっと面白い応用ができると研究者らは期待している。研究成果はEnergy Technology誌に掲載されている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

人工葉が太陽光を捉えて化学反応を起動し、薬を生産する

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製薬といえば、一日に何百万錠ものアスピリンやイブプロフェンをこね上げ成形している大工場を連想するが、近年では、よく使う薬をユーザーの近くで少量だけ作ることも、重要な課題として検討/研究されている。オランダの研究者たちはそのために、植物が自分自身のリソースを作るために使っているのとよく似た方法を着想した。

人工葉(artificial leaves)は、かなり前からある。それらは光を、さまざまな目的のためのエネルギーに変換するパッシブなデバイスだ。もちろん植物は光合成によって自分自身の重要な化学物質を作っており、それはこれまで人間が作った最良の人工光合成システムよりも巧みで効率的だ。しかしアイントホーフェン工科大学のTimothy Noëlのチームは、薬の分子を組み立てるときのような化学反応を光の力で起こす方法を見つけた。

彼らは発光型集光器(luminescent solar concentrator, LSC)と呼ばれる新しい素材ないしデバイスを使って入力光の波長を最適化し、それを人工葉のあるエッジへ導く(もちろん形は本物の葉っぱに似ていなくてもよい)。そこには細い脈路が掘られていて、そこへ薬のための化合物〔複数形〕を汲み上げる。そこに導かれている光(の波長)を正しく同調(tune)してやると、化学反応が始まる。

LSCを使ったことによって効率が大幅にアップし、複雑で高エネルギーなプロセスも可能になった。曇りの日でもよい。

“個人や小集団でも気軽に入手/利用できるこの強力なツールによって、薬などの貴重な化学物質を、持続可能な太陽光方式により作れるようになった”、とNoëlが大学のニュースリリースに書いている。“このような反応器があれば、どこででも薬を作れる。ジャングルでマラリアの薬を作ったり、火星で鎮痛解熱剤パラセタモールを作ることもできる。必要なものは、太陽光と、このミニ工場だけだ”。

今後の短期的な改良としては、錠剤を成形して瓶につめる、などが考えられるが、もっと長期的には、地球上のリソースの乏しい地域が、高度な医薬品を入手/服用できるようになるだろう。研究者たちの論文は、今日(米国時間12/21)発行されたAngewandte Chemieに載っている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

熱として逃げていた太陽光のエネルギーを完全に捉えるナノ素材により太陽電池の発電効率を倍増

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MITの研究者たちが作った、まだ実験段階の太陽電池は、パネルの一定面積あたりの電力生成量を増加し、太陽熱の利用効率を上げる。しかも、それに関する科学者たちの説明が、すごくクールだ: “まだ完全に最適化されていない配列でも、ショックレー-クワイサーの限界(Shockley-Queisser limit)を超えることができた”。

ショックレー-クワイサーの限界はもちろんフィクションではなく、太陽電池のエネルギー効率の理論的最大値だ。それは、いちばん多く使われているシリコンベースの製品で32%程度、とされている。

この限界は、電池を重ねるなどの工夫で克服できるが、今回の研究チームの一員である博士課程の学生David Bierman(上記の説明をした人)によると、もっと良い方法は熱光起電(thermophotovoltaics)だ。太陽光をいったん熱に換えて、それをさらに、電池が吸収しやすい光として再出力する。

えーと、つまりこういうことだ: 太陽電池は特定の波長の光で効率が最高になる。紫外線は短すぎるし、赤外線は長すぎる。だいたい600nm(オレンジ色の可視光線)ぐらいがパーフェクトだ。太陽から来る光は、さまざまな波長の光で構成されていて、600nmはその一部にすぎない。そこで、太陽電池が太陽光から生成できるエネルギーの量には限界がある。それが、ショックレー-クワイサーの限界の論拠のひとつだ。

Biermanらのチームは、太陽と電池のあいだに一工程を加えた。それは、“細心の工程で作られたカーボンナノチューブの構造体”を利用することだ。“カーボンナノチューブは、太陽光の全スペクトルをほぼ完全に吸収できる”、とBiermanはMITのニュースリリースで述べている。“光子のエネルギーのすべてを熱に変換できる”。

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チームの熱光起電電池が仕事中

従来の太陽電池では、熱はエネルギーの浪費にすぎないし、電池の動作の邪魔にもなるので、嫌われていた。でもこのやり方では、熱は浪費を許されない。むしろ、カーボンナノチューブが熱を光に戻すのだ。しかもその波長は正確に、光起電電池にとって最適の波長だ。

結果は、効率の大幅アップだけではない。熱は、光と違って保存や移動が楽にできる。日中の太陽光をすべて熱に変換して保存すれば、それを必要に応じて光に変換できる。たとえば、夜などに。言い換えるとこの技術は、太陽光を後(のち)の利用のために保存する。

実験の結果が理論を確証し、プロトタイプのTPV(熱光起電)電池の性能は期待どおりだった。しかしこの技術が研究室を出るためには、複雑なカーボンナノ素材の量産という、難題の克服が必要だ。だから、来年や再来年にあなたが熱光起電を利用していることは、ありえないだろう。でも、とても大きな将来性のある技術だから、実用化されないまま終わるとは思えない。

この研究は、Nature Energy誌に発表されている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

MIT、太陽電池を強力な光で修複する技術を発見

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時として科学の世界では、答は目と鼻の先にあったということがある。例えば、太陽光技術の限界に関する問題を解決する物は、何あろう、光だった。

過去数年間、太陽電池の材料として、ペロブスカイト化合物の可能性に注目が集まっている ― しかし、本質的は欠点により効率は限られている。しかし、今日(米国時間5/24)MITが発表した新たな研究によると、同化合物の制限に対する答は最も便利な場所にあった:非常に強力な光だ。

有機-無機金属ハロゲン化ペロブスカイトの薄膜に強い光を当てると、物質内の欠陥が修複される効果が働き、太陽電池の受光効率が高まる。この修複方法には、同物質の発光効率を高める効果もあるため、新たなLEDやレーザーの開発にもつながる。

修復方法には解決すべき問題がまだ残っているが、長期にわたって効率を維持する方法は最大の課題であることから、メーカーにとっては大いに価値がある。この研究によって、一年以内には各企業が様々なタイプの材料を市場に提供することが期待できる。

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あなたの家の太陽光発電導入の可否を教えてくれるGoogleのProject Sunroofが対象地域を9つの州の大都市圏に拡大

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GoogleのProject Sunroofは、Googleの技術者チームのチームリーダーCarl Elkinが、同社の20%プロジェクトとして始めたものだが、要するに自分の家の屋根にソーラーパネルを敷いたとき、十分な電力が得られるか得られないかを算定してくれるソフトウェアだ。このプロジェクトをローンチしたのは8月だったが、そのときはボストンと、カリフォルニアの一部しかサポートしていなかった。そして今日(米国時間12/11)Project Sunroofは、いくつかの州の大都市圏もサポートすることになった。

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この際、いくつかの州とは、California, Massachusetts, Arizona, New York, New Jersey, Nevada, Connecticut, Colorado, North Carolinaだ。

そしてGoogleの‘大都市圏(metro area)’の定義はかなり広い。ぼくが試してみた結果では、アリゾナ州ツーソン(Tuscon, Arizona)の家々やラスヴェガス(Las Vegas)のビルはもちろん大丈夫だったけど、昔よく行ったコネチカット州ウィリマンティック(Willimantic, Connecticut)は、よっぽど郷土愛の激しい人しか、大都市圏とは呼ばないだろう。

だから、大都市に住んでいない人でも、今度のSunroofプログラムは試してみる価値がある。住所を入力すると、一日の日照時間と、ソーラーパネルの設置により節約できる電気料金額を教えてくれる。

Googleによると、Sunroofプログラムは専用のデータベースから、家の屋根の方向、近くの木や建物の高さ、その地方の気象の特性などの情報を取り出して、ソーラーパネルの稼働効率を計算する。

そして、ソーラーパネルを設置すると決めたら、このプログラムはあなたのお住まいの地域の業者のリストをくれる。彼らはこのプログラムのスポンサーだから、業者を選ぶときには、ほかの情報源もあたるべきかもしれない。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

あなたの家の屋根はソーラーパネルを敷き詰めるのに向いているか?GoogleのProject Sunroofが教えてくれる

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あなたの家は、ソーラーパネルを設置するのに適しているか? GoogleのCarl Elkinが、同社の“20%プロジェクト”*で作ったProject Sunroofは、Google Mapsと、家のまわりに関するデータから、あなたの家の屋根がどれだけの太陽光エネルギーを作り出せるか、を計測する。そのために利用するデータは、各地の気象や天候、屋根の向き、近くの木や建物からいただいてしまう影の面積などだ。〔*: 20%プロジェクト, 勤務時間の20%は好きなことをしてよい、というルール。〕

残念ながら、今対応しているのはサンフランシスコのベイエリアとフレズノだけだ。Googleは、次はカリフォルニア州中央部と、東部の中心都市ボストンをカバーしたい、と言っている。

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このサービスを利用するためには、住所と、毎月の電気料金を入力する。すると、据え付けるソーラーパネルの推奨サイズと、導入費用を教えてくれる。

実際にソーラーパネルを据え付ける気になったら、Googleがあなたの住んでる地域の業者を教えてくれる。ただしこれはスポンサー付きのサービスなので、実際にそこの会社に問い合わせ等をしたら、Googleに謝礼が行くのだろう。

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Appleがソーラーパネルとタッチディスプレイの一体化で特許を取得

Appleが最近取得したパテントは、モバイルデバイスが太陽光発電を利用する未来に向かうための一歩だ。AppleInsiderによると、この特許は、従来のタッチパネル表示装置とソーラーパネルの配列を一体化する技術だ。すなわち、可撓性のあるディスプレイモジュールと太陽光発電装置が一つになるので、スペースを節約でき、デバイスのさらなる小型化という近未来の要請にも対応できる。

同社は、この前にも類似の技術で特許を取得している。しかしその特許では、タッチを感取する面が表示装置でもある、とはなっていない。ただ、タッチ面とソーラー面の同一を記述しているだけなので、用途が限定される。

今回の特許では、ソーラーセルがタッチセンサの部位兼ディスプレイの部位から顔をのぞかせることになるので、そのための(太陽光を通すための)技術が鍵となる。たとえば表示面にピンホールを並べるとか、光ファイバを使って光を導く、といった方法がありえるだろう。

AppleがiPhoneやiPadのソーラー化を真剣に考えているのなら、この特許はそれらのための喫緊の技術になる。しかし今のソーラーセルの性能と、高品質なディスプレイを備えたモバイルデバイスの電源要件を対比させると、完全にソーラー化されたiOSデバイスの登場はまだまだ先の話、とも思える。ただし、電池寿命を延命させるための補助的技術としてなら、もしかして…。

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AppleはiWatchのために誘導充電とディスプレイのソーラーパネル化をテスト中

Appleの来(きた)るべきスマートウォッチの開発には、誘導充電と太陽光発電電池の探求が含まれている、とThe New York Timesが報じている。同紙は電池技術全般に関する長編の概要記事の中で、Appleがスマートウォッチの無線誘導充電と、ディスプレイにソーラーパネルを組み込んで太陽光や環境光から電力を取り出す方法を試験している、と明かしている。

どちらも、腕に装着するAppleのウェアラブルのために現在テスト段階にある技術、とされている。ということは、Apple iWatchが来年発売されるとするなら、それには間に合わないことを意味しているのかもしれない。たとえば、とりわけ太陽光充電は、NYTのその記事によれば、一般的に実用化は数年後、とされている。

でもそれは、現在のウェアラブルの最大の難点を克服する技術だから、Appleが腕につけるタイプのスマートデバイスの開発でとくに力を入れている、という話は単なる仮定としても大いにありえる説だ。先日9to5Macには、iWatchは健康とフィットネスに注力、という記事が載り本誌も紹介した。そのためにAppleは今、iOS 8に最初からインストールされているアプリとして”Healthbook”を開発しているらしい。また、その後の詳報はないものの、Appleはユーザの体の動きによる充電を検討中、という噂もあった。なにしろ、雰囲気としては、今Appleは新しい充電技術を、あれやこれやとトライしているらしいのだ。

電池寿命はいわば、製品としてのウェアラブルの急所だ。充電が面倒で、しかも、充電を忘れてアプリが動かなくても人生の重大事ではない、と分かれば、装着しない人や、最初から買わない人が増えるだろう。デバイスの充電という面倒な手間が、また一つ増えることを、多くの人が歓迎しない。充電がどうしても必要なら、その間隔をできるだけ長くするのが、開発の重要要件の一つになる。この点に、今Appleは苦労しているようだ。

Appleは、一般消費者や評論家などが、事前に“こんなものが必要だ・欲しい”とは思いもしなかったものを、売ることに何度も成功してきた。iPadは、その最近の成功例の一つだ。スマートウォッチも、そんな彼らの成功作の一つになるのかもしれない。今そのために、新しいより効果的な充電方法をいろいろテストしているという報道が確かなら、Appleのイノベーションのねらいどころは、またまたドンピシャリ正しい、と言わざるをえない。

iWatch画像制作: Todd Hamilton.

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))