信頼できるデータパイプラインの構築を支援するIterativelyが5.7億円を調達

企業が大量のデータを集めるようになると、データの信頼性を確保することがますます重要になる。データ分析のパイプラインの質は、集めてくるデータの質に依存し、混乱したデータや露骨なバグはそれだけで、下流の問題の原因になる。

シアトルのIterativelyは、企業による信頼できるデータパイプラインの構築を助ける。同社は米国時間2月4日、Google(グーグル)のAIを対象とするファンドGradient Venturesがリードするシードラウンドで540万ドル(約5億7000万円)を調達したことを発表した。Fika VenturesとIterativelyの初期の投資家であるPSL Venturesもこの投資に参加し、Gradient VenturesのパートナーZach Bratun-Glennon(ザック・ブラトン-グレノン)氏が同社取締役会に加わった。

Iterativelyの共同創業者でCEOのPatrick Thompson(パトリック・トンプソン)氏は、ちょうど2年前にIterativelyを立ち上げたが、以前はAtlassianやSyncplicityで後の共同創業者となるOndrej Hrebicek(オンドレイ・ヘレビチェク)氏と出会った。Iterativelyの創業後、チームは6カ月間を顧客探しに費やし、その過程で同社は自分たちが捕捉するデータを信頼していない、という基本テーマにたどり着いた。

「内部的なソリューションを作ってこの問題を解決しようとしている多くの企業にインタビューしました。実は私たちもAtlassianでそのようなものを開発したことがあるため、彼らの悩みを理解することができました。そこで私たち、データの信頼性という問題を解決するプロダクトを作って市場に出そうと決意したのです」とトンプソン氏は語る。

画像クレジット:Iteratively

多くの企業で、データのプロデューサーとデータのコンシューマーは対話をしていない。対話をするとしてもそれは、スプレッドシートやWiki上だ。Iteratively(何度も繰り返す、段階的に進歩する)の狙いは、コラボレーション環境を作って異なるグループを合わせて、すべての利害関係者にとって真で唯一のソースを作ることだ。それに対してトンプソン氏は「通常、JIRAのチケットでも、Confluenceのページやスプレッドシートでも手渡しの工程があり、さまざまな要件をリレー競争のバトンのように渡渡していきますが、一般的にその工程は決して正しく実装されていません。だからこそ、作業の下流へ行くほど厄介な問題になるのです」という。

現在、Iterativelyは、プロダクトとマーケティングの分析のためのイベントのストリーミングデータにフォーカスしている。通常それらは、プロダクト分析のMixpanelやAmplitudeやSegmentなどに流れていくものだ。しかしIteratively自身はデータをその原点、たとえばアプリで捉え、データを検査し、それを企業が利用しているサードパーティのソリューションへ渡す。つまりこのツールは、データの発生箇所で関所を務めるため、データがIterativelyのサーバーから出てこないこともありえる。

画像クレジット:Iteratively

「実際に個々のデータを詳しく見るわけではありません。Iterativelyは、データセットの整形などをするプロセッサーではない。むしろIterativelyはユーザー独自のデータ分析パイプラインやユーザー独自のサードパーティSaaSツールの上に位置するラッパーだ。Iterativelyは、そんなシステムのペイロードがクライアント上で私たちのSDKを通っていくときに検査します」とトンプソン氏は強調する。

しかし今後、Iteratively自身が何らかのデータ処理をすることもあるだろうが、それはメタデータと観察可能性が対象だろう、とトンプソン氏はいう。

現在、Iteratively自身がデータ処理をすることはないため、料金計算はユーザー数がベースとなっている。パイプラインを流れていくイベントの数は問わない。しかし上記のように、一部のデータ処理を行うようになったら、それも変わるかもしれない。

現在、Iterativelyは社員が約10名で、年内に20名にする予定だ。研究開発と営業、マーケティングを中心に雇用していくという。

Gradientのブラトン-グレノン氏に、投資家としての見解を聞いてみると、次のように答えた。「Iterativelyのソフトはユニークなやり方で全社的なコラボレーションを可能にし、データのクオリティを維持する。今後は必ず、インテリジェントなデータ分析とデータドリブンな意思決定が、企業の成功と製品の品質を左右するだろう。Iterativelyのミッションとプロダクトとチームには、彼らの顧客のそれぞれに対して、そのような能力を与える力がある」。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Iteratively資金調達

画像クレジット:chain45154/Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

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TechCrunch Japan

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