女性起業家を支援するために女性が設立したVictress Capitalが2つ目のファンドを組成

米国における起業の40%は女性によって行われているが、彼女たちが受け取っているベンチャー資金はわずか3%に過ぎない。このような極端な資金のギャップが、チャンスに悪影響をもたらす可能性があることを理解するためには数学の才覚は不要だが、もし自分が数学に関心があって、長年投資家を続けてきていて、しかもたまたま女性で、他の男性たちよりも特定の商品や提案をよく理解しているなら、役立つ場面もある。

これが2016年にボストン郊外でVictress Capital(ビクトレス・キャピタル)を創設した2人の女性、Lori Cashman(ロリ・キャッシュマン)氏とSuzanne Norris(スザンヌ・ノリス)氏はそう考えていた。Victress Capitalは消費者に目を向けたシードならびにアーリーステージファームで、その2つ目のファンドを2200万ドル(約23億7000万円)で組成したばかりだ。ファンドの目的は性別に多様性のあるチーム(すなわち創業者チームに少なくとも1名の女性がいるチーム)を支援することだ。

キャッシュマン氏はデューク大学の卒業生で、投資家としてのキャリアを重ねてきた。以前はオーナービジネス専門に投資を行うプライベートエクイティ会社のLinear Capital(リニア・キャピタル)を共同創業したこともある。一方、ハーバード大学から2つの学位を取得したノリス氏は、投資銀行アナリストや経営コンサルタントを務め、Kate Spade(ケイト・スペード)では、ほぼ4年に渡って副社長としてeコマースに注力した。

親しい知人だった2人が、自分たちの「認知の多様性」を高めるたちに協力したのが始まりだったとキャッシュマン氏は語る。2人は実績を打ち立てるために、友人や家族から200万ドル(約2億1500万円)をかき集めた。

最終的に彼女たちはそのお金を、10万ドル(約1100万円)から15万ドル(約1600万円)の資金として14のスタートアップに提供した。それらのいくつかは既に買収されている。無音で装着可能な搾乳器を販売するMoxxly(モクスリー)は、2017年に大手搾乳器メーカーであるMedela(メデラ)に買収された。2019年夏にその製品は終了してしまった(Crunchbase記事)が、キャッシュマン氏とノリス氏は、Randi Zuckerberg(ランディ・ザッカーバーグ)氏もその1人である投資家たちがお金を取り戻すことができて、当時非常に強力な戦略的パートナーのように思われていた会社に買収されたことは嬉しかったと述べている。2番目のポートフォリオ企業であるWerk(ワーク)は、シカゴを拠点とするスタートアップであるThe Mom Project(ザ・マム・プロジェクト)に非公開の条件で最近売却された(AmericanInno記事)。

その他の投資先には、これまでに投資家から4300万ドル(約46億円)を調達した消費者直送の有機食品デリバリービジネスのDaily Harvest(デイリー・ハーベスト)、これまでに400万ドル(4億3000万円)を調達したより暗い肌の色合いの女性に対応する化粧品会社であるMented Cosmetics(メンテッド・コスメティクス)、そしてこれまでに300万ドル(約3億2000万円)を調達したLAを拠点としたオーガニックベトナムコーヒーを製造する若いスタートアップのCopper Cow Coffee(コパ・カウ・コーヒー)がある(調達額はいずれもCrunchbaseによる)。

こうした経緯を経て、より大きなファンドの組成のアイデアが生まれた。Victressの若いポートフォリオが成熟するにつれ、若い革新的なスタートアップたちに投資するのはもちろん、ブレイクした成功企業たちに、より多くの投資をできるようにするためだ。実際、その目的に向けて、Victressはそのチームにここ数年資金を積み上げていたのだ(その最新の資金の大部分は家族から得たもだった)。そして2020年2月に、VictressにKate Castle(ケイト・キャッスル)氏が加わった。長年Flybridge Capital Partners(フライブリッジ・キャピタル・パートナーズ)のマーケティングパートナーを務め、後にXFactor Ventures(エクスファクター・ベンチャーズ)をパートナーとして共同創業した人物だ。2018年には以前Victressのインターンで、現在は副社長に就任しているハーバード・ビジネス・スクール(HBS)卒業生のMadeline Keulen(マデリーン・キューレン)氏も採用した(ノリス氏の経歴とネットワークにより、Victressはハーバード大学ならびにHBSとの間にある種の契約を結んでおり、普段HBSの学生をインターンとして受け入れている)。

チームや新しい資金を集めるのは簡単ではなかった。ノリス氏は冗談めかして、その2000万ドル(約21億5000万円)を、機関投資家の視点から「無人の土地」だと呼ぶ。ファンドの組成は終わったばかりだが、そのための資金集めは2018年の後半から始まっていて、新しい投資資本の25%に相当する資金が既に7つのスタートアップに投資されている。

そして、彼女たちは長期的な取り組みをしており、その過程で行った関係構築は将来報われると考えている。この2つ目のファンドをフォローしている機関投資家たちや、これまでに共同投資を行った国内のVCたちの両方から、多様性のある創業者チームを抱えるスタートアップを検討する際に、Victressに声がかかるようになったのだ。

もちろん、投資先の大成功も役立つはずだ。それが実現するかどうかを今知ることは不可能だが、現在チームはミネアポリスを拠点とする、あるスタートアップに対して特に関心を向けているようだ、Rae(レイ)という名のスタートアップは、精力増強ビーガンビタミンのマーケティングを行っているが、製品は消費者への直販を行うだけでなく、パンデミックの最中も営業を続けた大手小売のTarget(ターゲット)でも販売スペースを確保している

それは非常に貴重なスペースだが、Raeがその確保に成功したのは共同創業者でCEOであるAngie Tebbe(アンジー・テベ)氏が、過去12年にわたってTargetチェーンのビューティ&ウェルネス部門のプライベートラベル製品を監督する、マーチャンダイジングシニアディレクターとして勤めていたからだ。

Raeの製品は価格も手頃で、同社のビタミンは30日分で14ドル(約1500円)だが、これは多くの類似製品の約半分以下の価格だ。

これが、Victessがこのスタートアップにこれほど熱心な理由の一部だ。Victressは、テクノロジーを活用した消費者サービス、マーケットプレイス、デジタルネイティブブランドに焦点を当てている。しかし、最後発のスタートアップが注目を集めたいのならば、「本物で、大多数の米国人にとって手頃な価格帯」も備えたほうが良いだろうとキャッシュマンは語る。「それが私たちにとって重要なのです」。

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(翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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