巨大なSPACが現われるかもしれない

多くの人が2020年は特別買収目的会社(special purpose acquisition company)の略であるSPACの年だったと見ているが、2021年から振り返れば2020年が懐かしく感じられるかもしれない。

次の質問は時期尚早ではないはずだ。SPACの買収対象として大きすぎる会社というものは存在するだろうか。

ちょうど今日(米国時間1月22日)、SPACとの合併によって株式を公開した会社としてはこれまでで最も価値の大きい会社の取引が始まった。創業35年、ミシガン州ポンティアックを拠点とするUnited Wholesale Mortgage(UWM)は、米国最大の住宅ローン会社の1つだ。

取引終了までに株価は少し下落し、取引開始時の11.54ドル(約1200円)から下げて11.35ドル(約1180円)で取引を終えたが、関係者が今夜カクテルを前に泣いているかどうかは疑わしい。今週初め、UWMが「白紙小切手」会社であるGores Holdings IVとの合併を承認されたとき、なんと160億ドル(約1兆6600億円)で評価された。

なぜこれが興味深いのか。まずUWMの規模にもかかわらず、公開まで1年もかからなかった点だ。Gores Holdings IVは2020年1月下旬にIPOを完了し、約4億2500万ドル(約440億円)の現金を調達した。

プライベートエクイティ会社Gores Groupの創業者であり億万長者のAlec Gores(アレック・ゴア)氏が取引をリードした。合併の予定は9月に発表され、最終的にはさらに5億ドル(約520億円)の私募増資も行われた(対象会社が特定され、提案された合併の条件に同意したら、取引に進むのが一般的だ。ほとんどの対象会社は合併相手である白紙小切手会社よりも何倍も大きい)。

また、UWMは成熟した企業であり、2020年の第3四半期だけで13億ドル(約1350億円)の収益を計上した。同社は1986年、CEOの父親が創業した。CEOは2020年秋、「非常に収益性が高い」と述べた。

SPACのプロセスを通じて最近公開したほとんどの会社とは異なるストーリーだ。Opendoor、Luminar Technologies、Virgin Galacticを思い出してほしい。いずれも資本を必要とするビジネスの開発途中であり、未公開市場の投資家から多くの資金を調達できなかったものと思われる。

Space XのディレクターであるSteve Jurvetson(スティーブ・ジュベッソン)氏は先週、この点をかなり率直に強調した。たとえばVirgin Galacticは公開後の「事業開発に良いところはありませんでした」と述べている。「同社は極超音速機を開発すると発表しました。しかし、それは彼らが立ち上げようとしている現在のビジネス、つまり顧客にとってまだ実現していない弾道宇宙飛行との相乗効果はありません」。

より収益性が高く、成熟しており、将来の収益への道が非常に明確な多くの企業(UMWのような多くの企業)が従来のIPOよりもSPACを選択し始めれば、SPACの候補は他に行き場がない企業という一般的な認識を変える可能性がある。

この方法での公開が適している企業とはどれほどのサイズなのか、ということについてまで考えを広げることもできるし、はるかに大きな取引につながるのかもしれない。

より確実にいえるのは、UWMが「史上最大のSPAC取引」という記録を長く保持する可能性は低いということだ。SPACに対し相変わらず熱狂的な関心が寄せられているからだけでなく、あるビークルが実際にそのタイトルを奪取する準備ができているように見えるからだ。それは億万長者投資家のWilliam Ackman(ウイリアム・アックマン)氏のSPACだ。この白紙小切手会社が2020年夏に40億ドル(約4160億円)を調達したのだ。

おそらく、取引は風変りなものになると思われる。伝えられるところによると、アックマン氏はかつてSPACでAirbnbを公開しようとした。Airbnbが提案された合併を可決したとき、同氏は非公開のメディアコングロマリットであるブルームバーグに連絡したと伝えられている(ブルームバーグはそれは真実ではないと述べている)。

SPACは通常2年以内に未公開企業との合併を完了することから、アックマン氏の計画に関して憶測が広まっている。ヘッジファンドからさらに10億ドル(約1040億円)の現金を調達する予定のアックマン氏が、調達した資金をどのピースと組み合わせるのだろうか。

ところで、過去22日間だけで67件の新しいSPACの公開があった。これは2019年の合計と同じ数だ。調達合計は192億ドル(約2兆円)。だが資金調達は終わらないようだ。

ちょうど今週、ロサンゼルスに本拠を置く創業4年のプロップテック(不動産テック)のベンチャー企業であるFifth Wall Venturesが、新しい白紙小切手会社による2億5000万ドル(約260億円)の調達計画を登録した。

以前に医療機器の巨人であるMedtronicを経営していたインテルのOmar Ishrak(オマー・イシュラック)会長は、医療技術セクターの取引を対象とした白紙小切手会社のために7億5000万~10億ドル(約780~1040億円)を調達する計画を立てていると報じられた。

Gores Groupは1月20日に、最新の白紙小切手会社のIPOで4億ドル(約420億円)を調達する計画を登録した。これは、グループとして7番目のSPACになる。

カテゴリー:その他
タグ:SPAC

画像クレジット:Lawrence Anareta / Getty Images

原文へ

(翻訳:Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。