Najette Fellache(ナジェット・フィラージ)氏が、数年前にフランスのナントからベイエリアに移動したのは、彼女が創業した会社Speach(スピーチ)を成長させるための手段だった。その時点ですでにGE、Tesla(テスラ)、Amazon(アマゾン)、Medtronics(メドトロニクス)などの米国大手企業を顧客として迎え始めていた。
6年前に創業されたSpeachが販売しているのは、基本的には企業の従業員たちが自身で作成した動画(多くの場合は文書による指示を補強することを目的とするもの)を使って、同僚間で知識を共有できる製品だ。このアイデアは、学習効率を最大化するためのものだが、投資家たちはそのアイデアを十分に気に入って、すでに1400万ドル(約15億1000万円)の資金をSpeachに提供している。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によってシャットダウンされた世界では、その技術はますます重要なものになる一方だったが、フィラージ氏の子供たちが、突然自宅からリモート学習をするようになってからは、社内のあるプロジェクトが彼女の興味を引き始めた。彼女によれば、彼女の気づきの瞬間は、末っ子の息子が描いた絵を見たときに得られたのだという。息子はなぜ自分の母親のビデオ会議が、自分より優先され続けるのかを理解できずに苦しんでいたのだ。
この1年というもの、仕事と家庭の両立を模索していた多くの親たちと同じように、フィラージ氏は会社を経営しながら24時間体制で子育てをする方法を簡単には見つけられずにいた。ただ多くの親たちと異なり、彼女には、重要な情報をすばやく伝えたり、受け手の都合に合わせて閲覧したり、将来の参照用に保存したりできる短いビデオ作成を可能にする技術を開発できるエンジニアやSpeachの他のチームメンバーが身近にいたのだ。
実際、社内プロジェクトでは時々起こることだが、この技術はSpeachにとって非常にうまく機能したために、改めて独立した道を歩むことになった。Speachから少しの資金調達を行い(Speachに出資しているのは、Pinault家の投資会社であるArtémisが共同で運営するファンドのAlven and Red River Westだ)、今週フィラージ氏と10人の従業員で構成されるチームは、非同期ビデオスタートアップのWeet(ウィート)を立ち上げた。
同社が参入するのは現在混み合っている分野だ。電話やリアルタイムのミーティング、さらには雰囲気が失われやすく内容も誤解されやすい電子メールでのミーティングに代わる、魅力的な選択肢としての非同期ミーティングの威力を認めているのはフィラージ氏だけではない。例えばユーザーが自分で作成したショートビデオクリップを送信できる創業6年の企業向けコラボレーションビデオメッセージングサービスのLoomは、Sequoia Capital、Kleiner Perkins、Coatueなどの投資家たちからすでに少なくとも7300万ドル(約78億8000万円)の資金を調達している。
別の新規参入者であるSuperNormal(スーパーノーマル)は、スウェーデンのストックホルムを拠点として1年前に設立されたワークコミュニケーションプラットフォームで、同社が支援するのは動画と画面録画ツールを使用して、チームが日常的に非同期のビデオアップデートを作成して送信することだ。同社は2020年12月にEQT Venturesが主導するシードラウンドで200万ドル(約2億2000万円)を調達した。
それでも、もし将来もリモートワークに重点が置かれるものと信じるならば、ここにあるチャンスが大きいことは明らかだ。さらにWeetは、ブラウザーの拡張機能を使って無料でアクセスすることが可能で、Slack(スラック)やMicrosoft Teams(マイクロソフト・チームズ)との統合も2021年4月に予定されているので、すでに市場に出回っているいくつかの製品よりも優れた製品になりつつある、とフィラージ氏はいう。
Weetにはすでにインスタント録画、画面共有、仮想背景、ビデオフィルター、絵文字リアクション、コメントオプション、自動文字起こしなどの機能がすでに備わっている。開発中の有料プレミアム版では、ユーザー向けにディスカッションを整理しやすくする機能も開発しているという。例えば、営業担当者が見込み客についてのやりとりをを探していて、1通のメールにまとめられた自動文字起こしのメモを必要としているところを想像して欲しい。
プライバシーに関しては、Airbus(エアバス)やColgate-Palmolive(コルゲート・パルモリーブ)のようなプライバシーを気にするクライアントと仕事をする中で、データ管理の専門知識をSpeachが培ってきたことをフィラージ氏は指摘する。フィラージ氏によれば、Colgate-Palmolive社内ですでに使われているWeetには、同じレベルの基準と実装が達成されているという。
Weetはマーケティングの面でも違うアプローチをしているように見える。フィラージ氏によれば、ライバルの中には一度に1つの動画を公開できるものもあるが、Weetはより会話的なツールであり、チームメイトや連絡相手が同じ動画の一部をやり取りのために指定したり、動画のフィードバックや音声のフィードバックを送信したり、画面を共有したり、顔文字で反応したりすることができるのだという。
別の言い方をすれば、Weetは、より重要な情報の交換を可能にするだけでなく、より広く交流を促し、その過程でおそらくチームの関係を強化することができる。
「これは記録ではなくて議論なのです」フィラージ氏は語り、それが重要なのだという。彼女が身をもって感じたように、チームが世界中に徐々に分散しつつあるこの世界では、オープンなコミュニケーションが企業の成功、そして従業員の成功にとって、これまで以上に大切になるのだ。
カテゴリー:ネットサービス
タグ:Weet、ビデオ会議、ショートビデオ
画像クレジット:Najette Fellache
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(文:Connie Loizos、翻訳:sako)