5年間の太陽系の旅を終え、Junoがついに最終目的地までたどり着いた。Junoは現在、時速約25万キロの速度で木星の軌道上を飛行中だ。
11億3000万ドルもの資金が投じられたこのプロジェクトにおいて、最も過酷ともいえるミッションが本日の東部標準時23時18分(日本時間で7月5日12時18分)に開始した。Junoが木星の軌道に突入する瞬間だ。Junoの機体を木星の軌道にのせるために(そして、惑星を通過してしまう、あるいは惑星に衝突してしまうことを避けるために)、メインエンジンを35分間逆噴射する必要があった。
現在、Junoは無事にそのミッションを成功させ、木星の軌道上を37周するという新しいミッションを開始したばかりだ。
軌道を周回するあいだ、Junoは何度も木星の放射線帯に突入することになり、木星とJunoとの最短距離は3000マイル(約4830キロメートル)まで縮まる。Junoに搭載された最新設備が計測するデータによって、私たちの木星に対する理解がより深まることだろう。
「Junoによる木星の調査によって太陽系の歴史に対する理解をより深めることができ、銀河において惑星系がどのように形作られ、そして発達していくのかを知るための新しい手がかりとなるでしょう。」 – NASA ジェット推進研究所
ローマ神話に登場する神ユーピテル(ジュピター)の妻の名をとって命名された惑星探査機Junoは、木星の地表まで観測することができる。これは史上初めての試みだ。
Junoがここまで注目されている理由は、目的地である木星に到達するのが非常に困難だとされていたからだ。太陽系に存在が確認されている8つの惑星の中で、木星の磁場の強さと放射線量は最も高いとされている。木星という未知の惑星に関するデータを調査するためには、そのような過酷な環境下でのミッションにも耐えうることができる機体を開発する必要があったのだ。
その環境の過酷さを知るために、ある数字を比べてみよう。地球上における環境放射線量は0.39RADとされている。それに比べて、Junoが今回の調査によって浴びる放射線量は2000万RADだ。
それこそが、Junoのミッションに参加する科学者たちの間で木星が冷酷なモンスターと呼ばれている理由なのだ。
「木星が回転するスピードはとても速く、その巨大な重力によって周りにある岩、粉塵、電子、そして彗星までもが鉄砲玉のように吸い込まれていきます。木星に近づくすべてのものが、その武器と化してしまうのです」- NASA Juno Science Team
この過酷な環境下にも耐えうる宇宙船を開発する必要があったNASAが出した答えこそ、Junoだったのだ。総重量約3630キロの巨大な機体には全長9メートルのソーラーパネルが3つ搭載されている。
木星の軌道に突入する際、Junoには1232キロの燃料が搭載されていた。35分間の逆噴射のあと、その機体に残された燃料は447キロだけだ。Junoはその残りの燃料を使って木星の軌道上を37周し、最後は木星の大気圏に突入する予定となっている。
上に掲載した映像は、Junoが木星の軌道に突入する際に撮影された映像だ。6月29日にJunoCamで撮影されたこの映像では、木星と4つの衛星を確認することができる(カリスト、ガニメデ、エウロパ、イオ)。6月30日、JunoCamを含むすべての設備はシャットダウンされ、軌道突入という過酷なミッションに備えることとなった。
「Junoのミッションにおいて一番恐ろしいのは、未知の部分が多すぎることです。Junoがさらされることになる環境のほとんどが明らかになっていません。何が起こるのか、まったく予測することができないのです」– NASA Juno Science Team
過酷な道のりはまだ始まったばかりだ。しかし、すべてが計画通り進めば、ミッションが完了してJunoが木星に衝突するのは2018年の予定となっている。