良くも悪くも、インターネットは情報収集のデフォルトプラットフォームになった。そして米国時間2月19日、オンライン教育プラットフォームを展開する企業の1つが、次の成長へ向け資金調達を発表した。
ビジネス分析からウクレレのレッスンに至るまで、15万件ものオンラインコースを提供するマーケットプレイスを展開しているUdemy(ユーデミー)は、ベネッセホールディングスから5000万ドル(約56億円)を調達した。ベネッセは日本でのUdemyのパートナーだ。今回の資金調達で、Udemyのバリュエーションはポストマネーで20億ドル(約2225億円)になったと明らかにした。
PitchBookデータによると、Udemyは2016年に6000万ドル(約67億円)を調達してバリュエーションは7億1000万ドル(約790億円)だった。それからすると大きな飛躍だ。そのラウンドでUdemyはStripes、Naspers (現Prosus)、Learn Capital、Insight Partners、Norwest Venture Partners、その他多くの投資家から1億3000万ドル(約145億円)を集めた。
今回調達した資金はUdemyのあらゆる事業の拡大に使われる。1つには、消費者向けにアラカルト方式で購入できる数多くのコースを提供する。コースはこれまでに5000万人ものユーザーに利用されてきた。また近年は企業向けサービスにも進出し、UdemyはAdidasやGeneral Mills、トヨタ、Wipro、Pinterest、Lyftなど全部で5000社とサブスク型の職業訓練コースの開発・管理に取り組んでいる。Udemy会長のDarren Shimkus(ダレン・シムクス)氏はこれを「Netflixスタイル」と形容する。ユーザーのダッシュボードにオンデマンド利用できるあらゆるコースのリストが表示される。
Udemyはまた、5万7000人を超えるインストラクターのネットワークが提供するコースの改善にも力を入れると同時に、さらに深く展開できる新たな分野も検討する。描いているのは、シムクス氏が言うところのUdemyにとってだけでなくグローバルの労働力全体にとっての難題の解決に向けた投資だ。
「学習する人にとって最大の課題はどんなスキルが生まれつつあるのか、グローバルマーケットで優勢に立つために何ができるのかを理解することだ」とシムクス氏は語った。「我々は物事がかなりのスピードで変わる時代に生きていて、3、4年前に重宝されたスキルはもはや使えない。人々は困惑し、何を学ぶべきかをわかっていない」。これは事業者にとっても課題となっている、ともシムクス氏は付け加えた。「3〜5年の人的資本ロードマップ」と彼が形容するものを解決しようとしている。
Udemyはまた国際事業の拡大も計画している。まずは日本で始め、ブラジルやインドなどこれまでに力強い成長がみられたマーケットにも注力する。
「我々はここ数年、ベネッセと緊密に連携してきた。今回の投資は我々の提携の強さと今後広がるチャンスを示すものだ」とUdemyのCEOであるGregg Coccari(グレッグ・コカリ)氏は声明文で述べた。「Udemyは学習を通じて生活を改善するというミッションを持っていて、ベネッセも同様だ。2020年は、我々がさらに数百万もの新規のユーザーにサービスを提供し、何千もの企業や政府が従業員のスキルを向上させることができる記念すべき年になる。こうした成長は、事業を構築するあらゆる段階で提携する専門インストラクターなしには成し得ない」。
ベネッセの事業は、子供向けの教材や、大人向けのオンラインあるいはトレーニングセンターでのコースなどだ。同社が所有するものでよく知られているブランドが英会話のBerlitz(ベルリッツ)で、ヴァーチャルコースと外国語学習スクールのネットワークの両方を展開している。Udemyは、一般消費者と企業の両方をターゲットに、日本語と英語の両方でベネッセとコンテンツを開発してきた、とシムクス氏は話した。
「日本を含め、世界中どこででも最新職場スキルへのアクセスは成功するために必須だ。Udemyは専門性を一変させることができる世界最大のマーケットプレイスだ。この提携により、我々はより多くの人が人生を通して継続的に学習できる世界を思い描いている」とベネッセホールディングス社長の安達保氏は声明文で述べた。「Udemyとベネッセは驚くほど相乗効果のある企業だ。今回の投資は我々の提携を次の段階へと進化させ、共に達成できることに対する自信を示している」。
オンライン教育全体が成長を続ける中で、Udemyも拡大している。少なくとも部分的に競合するCourseraは昨年、バリュエーション10億ドル(約1110億円)での1億300万ドル(約115億円)の資金調達を発表した。また、プログラミングやコンピューターサイエンス教育の拡大を目的とする初の買収も行った。アジアでは、インドのByjuが大規模な成長ラウンドを成功させ、今やバリュエーションは80億ドル(約8900億円)だ。2016年に密かにバリュエーションを10億ドル(約1110億円)に増やしたAge of Learningもまた次の資金調達に動いているという。
だが、すべてがバラ色ではない。オンライン学習の別の大手であるUdacity(Udemyと間違えないように)は大規模なリストラにより従業員の20%を解雇した。さらには、オンライン学習とDIYハードウェアキットの組み合わせを展開しているKanoもまたここ数カ月でレイオフとリストラを実施している。一方で、別の競合相手となりそうなLinkedIn Learningについては最近耳にしない。LinkedIn LearningはSNSのLinkedInが買収後にLynda.comの名称を変えたものだ(LinkedInそのものはMicrosoftが所有している)。
Courseraや、高等教育をディスラプトすることを目的に学位を授ける他のサービスと異なり、Udemyは短いコースを専門とする。学ぶ人の好奇心に応えるものや、組織が発行する認証のためのものなどだ。例えば、Cisco向けのネットワーキンギ認証、Microsoft向けのソフトウェアパッケージ、PMI向けのプロジェクト管理に関係するコースなどだ。
そうしたコースはUdemyの二面性のあるマーケットプレイスの半分を構成する個人が提供している。この10年間で、Udemyはコース開発のために5万7000人ものインストラクターと協業し、マーケットプレイスモデルでそうしたインストラクターはこれまでに3億5000万ドル(約390億円)の純益を上げた、とシムクス氏はTechCrunchに語った。なお、彼はUdemyの取り分についてや、同社が利益を上げているのかについては明らかにしなかった。
今度チャンスが見込まれるUdemyが取り組むべき分野はたくさんある。例えば、企業と多くの消費者利用の両方に取り組むことで、何が使われたのか、何が人気なのか、結果を改善するためにそうしたモデルにフィットさせるより良い方法でいかにコースをつくるかなど、データ分析を進める余地がある。
また語学学習のように、特定のテーマでUdemyが深く入り込める分野があるかもしれない。語学学習ではいくつかのコースが提供されていて、ベネッセがBerlitzと提供している学習に関して、成長させる余地は多分にある。これまでUdemyは他社買収の実績はないが、今後はあり得るとシムクス氏は話した。
画像クレジット:DrAfter123 / Getty Images
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(翻訳:Mizoguchi)